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持続可能的計画経済論(連載第19回)

2018-06-20 | 〆持続可能的計画経済論

第4章 計画経済と企業形態

(5)企業の内部構造〈3〉
 前回まで見た企業形態は、いずれも一般的な生産活動に当たる生産組織の例であったが、今回はそれ以外の分野における特殊な企業形態について概観する。
 まず計画経済の適用があり、生産計画Bに基づいて運営される農漁業分野のような第一次産業分野は社会的所有型の生産事業機構(農業生産機構や水産機構)によって担われる。ただ、その内部構造は通常の生産事業機構とは異なる。
 第一次産業は地方性が強いため、地方ごとの分権的な分社構造を採ることが合理的である。どのレベルでの分社構造かは政策的な判断に委ねられるが、集約性を高めるには相当広域的な分社構造とされるだろう。その点で、細胞化された地域協同組合の連合組織として運営されてきた日本の農協・漁協とは根本的に異なる。他方で、ソ連の国営農場ソフホーズのような中央集権構造とも異質である。
 これら各生産事業機構の地方分社はそれぞれが生産事業機構としての構造を備えるが、中央本社にも各分社から選出された委員で構成する経営委員会と労働者代表委員会が置かれる。
 他方、地方ごとの消費計画に基づく消費事業を担うのは、消費事業組合である。これは自主管理型の生産協同組合とは異なり、各地方ごとの住民全員を自動加入組合員とする一種の生活協同組合組織である。
 そのため、その運営は組合員の代表者で構成する組合員総代会をベースに、経営に当たる理事会と組合従業員の代表から成る労働者代表役会が共同決定する二元的な内部構造となる。
 以上とは異なり、福祉・医療・教育などの公益事業に関わる公益事業組織のあり方も問題となる。こうした公益事業組織は、資本主義の下では非営利事業体として特殊な法人格が与えられていることが多いが、共産主義経済ではそもそも営利事業が消失することから、営利と非営利の区別は明瞭には存在しなくなる。
 そこで、こうした公益事業組織も自主管理型の生産協同組合でよいとも考えられるが、単純な生産活動とは異なるため、特別な公益事業組合/法人の組織とし、特に公益確保のため、日常運営に当たる理事会のほかに、外部の識者や市民から成る監督・助言機関として、監事会を常置するべきであろう。 

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