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持続可能的計画経済論(連載第17回)

2018-06-18 | 〆持続可能的計画経済論

第4章 計画経済と企業形態

(3)企業の内部構造〈1〉
 前回まで、共産主義的な企業形態として、大きく社会的所有型公企業としての生産事業機構と自主管理型私企業としての生産協同組合の種別を見た。ここからは、これら諸企業の内部構造に立ち入って考察する。
 まず計画経済の主体ともなる社会的所有型の生産事業機構は企業規模に関しては最大であり、それは資本主義経済における一つの「業界」の大手企業すべてを統合するに匹敵するような規模を擁する。 
 こうした大規模企業体を運営していくうえでは、労働者が自ら経営に当たる自主管理型の経営と労働の合一は現実的に無理であるので、株式会社と同様、経営と労働は分離せざるを得ない。
 そこで、経営責任機関として株式会社の取締役会に相当する経営委員会が置かれるが、企業規模が大きいことに加え、民主的な企業統治を保証するためにも、最高経営責任者のような独任制の経営トップは置かず、経営委員長を中心とした合議制型とする。
 ここで経営と労働の分離といっても、資本主義的な労使の指揮命令関係ではなく、経営と労働の共同決定制を確立する必要がある。こうした共同決定制は進歩的な資本主義諸国ではかねて株式会社形態でも導入されてきたが、労使の上下関係からこうした共同決定は事実上形骸化しているのが実情である。
 これに対し、共産主義的な公企業では、共同決定制を実質的なものとするため、労働者の代表から成る労働者代表委員会を常設し、特に労働条件や福利厚生に関わる分野では、経営委員会と労働者代表委員会の共同決議を議案の有効成立要件とする。その他の議案についても、経営委員会は労働者代表委員会に事前開示し、労働条件に関わる限り共同決定事項とするよう要求する機会が保障されなければならない。
 ところで、およそ共産主義的企業には株式会社の総監督機関である株主総会に相当するようなオーナー機関は存在しない。しかし、社会的所有型の生産事業機構の場合、究極のオーナーは民衆であるから、民衆代表機関が究極のオーナー機関となるが、これは多分に政治的・象徴的な意義にとどまり、実際上は職員総会が総監督機関となる。従って、上記経営委員会及び労働者代表委員会の委員はいずれも職員総会で選出され、両機関の活動は職員総会で監督される。
 ただし、職員総会といっても、生産事業機構は大規模であるため、全員参加型の総会開催は技術的に無理があり、総会代議人による代議制的な制度となるだろう。その代議人の選出法は抽選または投票によるが、それぞれの企業ごとに選択できるようにする。
 さて、最後に株式会社の監査役会に相当する監査機関として、業務監査委員会が置かれるが、これは主として法令順守の観点からの監査機関である。
 加えて、持続可能的計画経済下では企業活動に対する環境的持続可能性の観点からの内部監査制度の確立も求められるから、業務監査委員会とは別に、環境監査委員会が常置される。両監査委員会の委員も、職員総会で選出される。

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