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持続可能的計画経済論(連載第15回)

2018-06-11 | 〆持続可能的計画経済論

第4章 計画経済と企業形態

(1)社会的所有企業
 近現代の主要な生産活動は、労働力と物財を集約した企業を拠点に組織的・継続的に行われる。計画経済にあっても、この点は変わらないが、その企業形態は生産活動の様式(生産様式)に応じて定まってくる。
 資本主義的生産様式の下では、民間から広く投資資金を調達しやすい株式会社形態が代表的な企業形態となる。他方、ソ連式の行政主導型計画経済による社会主義的生産様式の下では、国家が直接投資し、運営する国有企業形態が代表的な企業形態となる。
 これに対して、生産企業が主体的に策定した共同経済計画に基づく共産主義的生産様式では、株式会社でも国営企業でもない公企業が代表的な企業形態となる。
 この点に関して、マルクスは共産主義社会を「合理的な共同計画に従って意識的に行動する、自由かつ平等な生産者たちの諸協同組合からなる一社会」と定義づけている。
 この定義によると、マルクスが構想する共産主義社会の生産活動は生産協同組合という企業形態によって行われるであろう。実際、マルクスの計画経済は、こうした協同組合企業の共同計画に基づくことが想定されていた。
 しかし、この定義と構想はいささか理想主義的に過ぎる感がある。現代の基幹的産業分野では大規模かつ集約的な生産活動が要請されるし、環境的持続可能性を組み込んだ計画経済を実行するためにも、計画経済が適用される環境高負荷産業分野については協同組合よりも大規模な企業体を活用することは不可欠と考えられるからである。
 仮にマルクスの構想を生かしつつ、基幹的産業分野の生産活動に照応する生産企業体を設計するとすれば生産協同組合合同のような形態が想定できるが、このような企業合同は統合的なガバナンスの点で問題を生じる恐れがあり、一つのモデル論にとどまるだろう。
 そこで、より現実的な企業形態としての共産主義的公企業は、株式会社のように投資家株主が所有者となるのでも、国有企業のように国家が所有者となるのでもなく、社会的な共有財として社会に帰属するという点で、社会的所有企業と規定することができる。その法律的な名称を、ここでは「生産事業機構」と命名する。
 こうした生産事業機構が生産する分野は、計画経済が適用される環境高負荷分野に限られる。言い換えれば、計画経済の運営主体は公企業である生産事業機構である。

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