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比較:影の警察国家(連載第55回)

2022-03-04 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

2‐2:連邦刑事庁と関税刑事庁

 ドイツの連邦警察は刑事警察機能を持たないため、連邦の刑事警察に相当するのは、連邦刑事庁(Bundeskriminalamt:BKA)である。警察を称さず、共に連邦内務省の管轄下にある連邦警察とは別立ての組織であり、形態や任務としてはアメリカの連邦捜査庁(FBI)と近似している。
 しかし、3万人を超す人員を擁し、全国に支局網をもって展開するFBIに比べ、BKAの要員は7000人程度、その任務も複数の州にまたがる広域事件に対する州警察や州レベルのカウンターパートである州刑事庁との合同捜査が中心で、独自捜査案件はテロリズムやスパイ、複雑な汚職・経済犯罪などに限局されている。
 その他、連邦の要人警護は連邦警察ではなく、BKAが担当しており、その限りでは純粋の刑事警察を超えた警備警察としての機能も限定的に併せ持っている。
 さらに、近年はテロリズムやサイバー犯罪の取締りのセンター的な任務が増しており、BKAの諜報機関化が進んでいる。
 特にイスラーム過激派のインターネット活動の監視目的で設置された統合インターネットセンター(Gemeinsames Internet Zentrum)、イスラーム過激派を除くテロ組織や過激派のインターネット情宣活動の監視目的で新設されたインターネット解析調整本部(Koordinierte Internetauswertung)はそうしたBKAの諜報機関化を促進する新制である。
 こうしたBKAの諜報的活動は機能的公安警察である連邦憲法擁護庁との連携関係も強めており、結果として、刑事警察の政治警察化を促進していくことになるだろう。

 一方、関税刑事庁(Zollkriminalamt:ZKA)は連邦刑事庁の経済版のようなもので、連邦財務省の管轄下にある財務警察機関である。
 1952年設立の前身機関である関税刑事研究所を母体に1992年に設立された比較的後発の機関であるが、その法執行本部組織である関税調査局(Zollfahndungsamt)は全国に支局網を持つ本格的な連邦機関である。
 その任務は、本務である関税法違反にとどまらず、EUの市場規制違反や違法な技術移転、農業分野の補助金詐欺からマネ―ロンダリング、商標法違反に至るまで、国境を超えた経済犯罪の摘発・捜査に広く及ぶ。また連邦警察や州警察との合同で麻薬密輸やマネーロンダリングの捜査にも当たる。
 このようにZKAが総合的な経済警察機関として拡大されるにつれ、如上のBKAの増強とも相まって、従来は制約されてきた連邦の警察機能の強化、ひいては影の警察国家化を促進する動因となっていることが注目される。

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比較:影の警察国家(連載第54回)

2022-02-19 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

2‐1:連邦警察任務の拡大

 現ドイツにおける連邦警察機関の主軸は連邦警察(Bundespolizei)であるが、この機関は元来、旧西ドイツの連邦国境警備隊(Bundesgrenzschutz:BGS)を前身とする。BGSはその名の通り、国境警備に専任する武装組織であった。
 その点、敗戦後の西ドイツではいったん連合国占領下で軍備が廃止された後、軍に代わる武装組織として BGSが創設された。そのため、 BGSは初発においては準軍事組織の性格を持ったが、1955年の再軍備を機に、1960年代の制度改正によって文民武装組織に転換されたため、事実上は「国境警備警察」となった。
 そうした特殊な設立と転換の経緯から、 BGSは準軍事組織ではなく準警察組織として位置づけられるようになったため、時代の進展とともに、実質的な警察組織として発展していくこととなった。
 その過程で、純粋の国境警備に加えて、大統領府や最高裁判所、首相府など連邦主要庁舎の警備任務が追加されるともに、対テロ作戦の中軸ともなった。後者は1972年のミュンヘン五輪でイスラエル選手団がパレスチナ武装集団に襲撃され、多数の死者を出した事件を機に整備されたものである。
 さらに、1990年の東西統一に際しては、両ドイツの鉄道警察がBGSに移管された。このように、主として1970年代以降に BGSの任務が漸次拡大するにつれ、国境警備隊という機関名称が実態に合わなくなったことを受け、2005年に正式に連邦警察に名称変更された。
 しかし、地方分権を指向するドイツ憲法は警察力を州の権限としていることから、憲法違反の可能性も指摘されたが、権限を制約することで憲法論議を抑えた。ちなみに、この改正を主導したのは時のシュレーダー社会民主党政権であったが、こうした「法と秩序」政策は従来「リベラル」政党であった社民党の保守的変質を示す政策と言える。
 このように、連邦警察への名称変更は、旧西ドイツ下で連邦は警察力を正式に保有しないという脱警察国家を目指していた流れを転換し、影の警察国家を進展させる意味を持ったのであるが、その基本は警備警察であって、フランス国家警察のように刑事警察や公安警察にも及ぶ自己完結型の警察組織でない限りにおいては、なお権限が制約されていることも確かである。
 とはいえ、国境警備や対テロ特殊作戦部隊に加え、デモ規制や暴動鎮圧などの集団警備力をも擁する連邦警察の物理的な実力は相当に高度であり、実態としてはフランスの国家治安軍のような軍事的な性格を持った強力な準軍事的警察組織に増強されていることが注目される。

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比較:影の警察国家(連載第53回)

2022-02-18 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

2‐0:連邦警察機関の簡素な体系

 ドイツの連邦警察機関はアメリカのそれのような錯綜した迷宮ではなく、伝統的に簡素に設計されてきた。もっとも、これは東西ドイツ統一前の旧西ドイツの制度を継承したもので、旧東ドイツは強固な中央集権制の警察国家そのものであった。
 第二次大戦後の東西ドイツ分断以前のナチスドイツ時代には、ナチス親衛隊の中央本部組織の一つである国家保安本部(Reichssicherheitshauptamt)に刑事警察や政治警察を含めた全警察機関を統合するという形で、極端なまでの中央集権的警察国家が構築され、人権抑圧の中枢とされたことへの反省から、戦後、旧西ドイツが連邦国家として再生された際には、連邦の警察権力を必要最小限度に制約した経緯があった。
 そうした旧西ドイツの制度が旧東ドイツの制度を全廃したうえ統一ドイツに平行移動的に継承されたことで、現ドイツの連邦警察機関も簡素な体系を維持している。
 すなわち、警備警察である連邦警察(Bundespolizei)と犯罪捜査に特化した連邦刑事庁(Bundeskriminalamt)、政治警察としての機能を持つ連邦憲法擁護庁(Bundesamt fur Verfassungsschutz)、さらに経済警察としての関税刑事庁(Zollkriminalamt)を基本構成要素とする体系である。
 以上の諸機関に加え、本来はアメリカのCIAやイギリスのMI6に対応する対外的な諜報機関である連邦諜報庁(Bundesnachrichtendienst)も、近年国際テロリズムや国際犯罪組織に対する諜報活動に乗り出している限りで、治安に関わる権限を拡張し、警察機能を獲得しつつあることも注目される。
 このようにドイツの連邦警察機関の体系は簡素であるとはいえ、後で個別に見るように、連邦警察の役割の歴史的な拡大傾向、連邦憲法擁護庁の隠密監視活動などは、簡素な体系の外観のもとでの影の警察国家化の要因となっているところである。

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比較:影の警察国家(連載第52回)

2022-01-23 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

1+x:残存都市警察機関

 ドイツの現行警察制度は基本的に連邦と州の二元制に整理されているとみなしてほぼ間違いないが、実際には、いくつかの都市のレベルにも警察機関が置かれている場合がある。
 その点、沿革的には、旧西ドイツ建国当初、少なからぬ都市に独自の警察が設置されていたが、1970年代までに実施された制度改革によって、その多くは州警察に吸収され、姿を消した。他方、旧東ドイツは中央集権性が徹底された公然たる警察国家であり、そもそも都市警察の制度は存在しなかった。
 旧西ドイツ都市警察はドイツ再統一後も全廃されることなく、いくつの都市では、市条例上の犯罪行為の取締りその他の行政警察活動を目的とする小規模な警察として現在も残存している。そのため、多くは非武装要員で構成され、原則として州警察の警察官のような強制権限も持たない。
 とはいえ、都市警察機関の要員は行政警察活動を通じて都市当局の耳目たる監視員の役割を果たすため、小規模ながら情報機関的な要素がなくもないことは、影の警察国家という視座から注目すべき点である。
 これら残存都市警察の機関名称は様々であるが、大別すれば、市警察(Stadtpolizei)と公共秩序局(Ordnungsamt)に分けられる。前者はまさに市の警察であるが、アメリカの自治体警察のように自己完結的ではなく、基本任務は上述したような行政警察任務に限局される。
 一方の公共秩序局は、より一般的な都市警察機関であり、かなりの数の都市に設置されている。機関名称として警察を名乗らないが、実質的な役割は都市警察に準じ、要員は何らかの制服を着用する。
 その点、ヘッセン州内の独立都市であるフランクフルト・アム・マインでは、公共秩序局の執行部門という形で市警察(Stadtpolizei Frankfurt am Main)が、2007年という比較的最近になって新設された。このフランクフルト市警は要員も200人以上とかなり多く、武装もするなど、「本格派」の市警察の陣容を備えている。
 また、バーデン‐ヴュルテンベルク州の公共秩序局職員には逮捕や追跡、捜査の権限まで与えられており、実質においては「市警察」と変わらない。
 こうした残存都市警察機関の武装化と本格化という新装が進めば、ドイツ警察は事実上、連邦と州に州内都市を含めた三元制に拡張される可能性もあり、影の警察国家化が進行する。

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比較:影の警察国家(連載第51回)

2021-12-19 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

1‐2:州刑事庁と州憲法擁護機関

 ドイツの州警察は集権性と統合性が強いため、州レベルの警察機構の圧倒的な中核を成す点で、同じ連邦国家でも、アメリカとは大きな相違が見られるが、刑事警察を補う犯罪捜査専門機関としての州刑事庁と、政治警察としての州憲法擁護庁は例外である。
 州刑事庁(Landeskriminalamt:LKA)は、州警察の刑事部門では対処し切れない麻薬密輸、組織犯罪、ホワイトカラー知能犯罪、テロリズムなどの重大事犯の捜査に専従する専門機関である。LKAはまた、一種の諜報機関として、内外の情報分析と分析結果の州警察への提供も行うほか、州によっては警察特殊部隊である特別出動コマンドを擁する場合もある。
 ちなみに、連邦レベルにも、相似的な形で連邦刑事庁(Bundeskriminalamt:BKA)が設置され、各州刑事庁の支援・調整を行っており、ドイツ的な連邦‐州の二元相似性を象徴する態勢となっている。
 同様の構造は、政治警察である憲法擁護庁についても見られ、各州には州憲法擁護機関(Landesbehörde für Verfassungsschutz)―正式名称や組織構造は州ごとに異なる―が設置され、連邦レベルの連邦憲法擁護庁(Bundesamt für Verfassungsschutz:BfV)の支援・調整のもとに、反憲法的とみなされる組織や個人の監視を行っている。
 これは、後に改めて見るように、「闘う民主主義」という理念に基づき、憲法上の民主主義の護持という名目で種々の監視活動を行う態勢であり、戦後ドイツ流の政治警察の在り方である。近年は「テロとの戦いテーゼ」の下、イスラーム主義者の監視が主要な活動となっている。
 ただし、戦前はナチスのゲシュタポ、戦後は旧東独のシュタージという二つの抑圧的な秘密政治警察による大量人権侵害への反省から、憲法擁護庁は秘密裏の諜報権限のみで身柄拘束等の強制権限を持たないため、事件としての捜査・立件は、州警察や州刑事庁が担当する。
 とはいえ、各州と連邦に政治警察が二元相似的に設置され、日常的に社会を監視する態勢は本連載で扱う他の四か国にも見られない稠密な監視システムであり、権限が法的に制約されている点を考慮しても、ドイツにおける影の警察国家化の中心点と言える。

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比較:影の警察国家(連載第50回)

2021-11-28 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

1‐1:州警察の集権性と統合化

 ドイツの州警察は連邦首都ベルリンに、歴史的な旧ハンザ同盟の一員として自治権を保持してきた二つの自由ハンザ都市ハンブルグ、ブレーメンを加えた三つの州級都市(都市州)を含む計16の州すべてに各一個ずつ設置された警察機関である。
 そのうち西部11州の警察は1990年の東西ドイツ統一前の旧西ドイツ時代の州警察の継続であるが、旧東ドイツ(ドイツ民主共和国)に属していた東部5州の警察は統一後に改めて創設されたものである。
 旧東ドイツは高度な社会主義中央集権国家であり、そもそも自主権を持つ州制度自体が存在しなかったため、警察も一元的な国家警察であったところ、統一後に改めて創設された5州(正確には復活)それぞれに州警察が置かれた経緯がある。
 ちなみに、旧東ドイツの国家警察は正式には人民警察(Deutsche Volkspolizei:DVP)と称されたが、犯罪の少なさから刑事警察は未発達であった分、警備警察部門である準軍隊的な内務省兵舎部隊(人民警察機動隊)が肥大化し、かつ秘密政治警察・国家保安省(シュタージ)と緊密に連携するなど、DVPは「影」でなく、公然たる警察国家の象徴であった。
 統一後、旧東ドイツ人民警察も一部吸収合併しつつ、16個にまとめられた州警察は、自治体警察の補完的な存在であるアメリカの州警察とは異なり、地域警察、刑事警察、警備警察としての主要な警察機能すべてを併せ持つ自己完結型の警察であり、州単位では集権性の強い警察機関となっている。
 その点、旧西ドイツでもかつては主要な都市に独自の自治体警察が置かれていたところ、1970年代の警察制度改革により、州警察に吸収されていき、現在も一部残存している自治体警察の任務は行政法規違反等の軽微事案の取締まりにほぼ特化している。
 ただし、集権警察といっても、政治的な監視と取締りを担う公安部門は州警察内に存在せず、公安は、後に改めて見るように、連邦と州のそれぞれに二重的に設置された憲法擁護庁がこれを中心的に担う役割分担がある点で、公安警察機能にまで及ぶフランスの国家警察や日本の都道府県警察とは異なっている。
 一方、州警察はその警備警察部門である機動隊(Bereitschaftspolizei:BePo)を通じて、一定の統合運用もなされる。すなわち、大規模な騒乱等が発生した場合は、他州の機動隊が応援部隊を迅速に派遣できるよう、機動隊はその編制や装備が全州で規格化されている。
 同時に、機動隊は街頭での戦闘も想定されるその活動任務からして、軍隊に準じた編制を持ち、百から数百人単位の部隊に分かれて駐屯し、即応態勢が採られている。これは、各国で進む警察の軍事化のドイツ的現れでもある。
 また、連邦警察も各地に即応部隊を駐屯させており、大規模な騒乱等に際しては州警察の機動隊と合同で対処する態勢にあるため、その限りでは州警察の統合を超えた連邦警察との統合運用も進んできている。この傾向は、「テロとの戦い」テーゼの浸透により、強まっている。

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比較:影の警察国家(連載第49回)

2021-10-17 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

1‐0:州警察機構の共通要素

 前回概観したとおり、ドイツ警察の構造は連邦‐州‐自治体の三層から成るが、連邦レベルの警察組織は同じく連邦国家であるアメリカに比べても簡素に構制されており、現在でもアメリカのように連邦警察相当機関が複雑に林立するような状況にない。
 そのため、基本的警察業務の大半は各州(及び州級都市[都市州]:以下、都市州を含めて「州」という)の警察機構に委ねられる。こうした広い意味での州警察機構はすべて各州内務大臣の監督下に活動する点で、規格統一されている。
 すなわち、ドイツにおける広義の州警察機構は、州内務省を拠点に、州警察(Landespolizei:LaPo)・州刑事庁(Landeskriminalamt:LKA)・州憲法擁護庁/局(Landesbehörde für Verfassungsschutz)を基本的な共通コンポーネントとして成り立っている。その中核を成すのは、言うまでもなく州警察である。
 州警察の組織構造は各州で異なるが、制服部門として地域警邏を担う保安警察(Schutzpolizei:SchuPo)及び警備活動を担う機動警察(Bereitschaftspolizei:BePo)、私服部門として犯罪捜査を担う刑事警察(Kriminalpolizei:KriPo)を三大基軸としつつ、警察としての全機能を備えた自己完結的な警察組織である点でも、全州共通である。
 これに対し、州刑事庁は、組織犯罪やテロリズム、経済犯罪等の重大犯罪の捜査を担う犯罪捜査特化型機関として、州警察の刑事部(KriPo)を補完する役割を持つ。
 また、州憲法擁護庁/局は基本的に諜報機関であるが、機能的に公安警察の役割を果たす。これは連邦レベルにおける連邦憲法擁護庁に相応する州機関であるが、連邦の出先機関ではなく、独自の憲法を擁する各州の憲法秩序の擁護を担う。

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比較:影の警察国家(連載第48回)

2021-09-26 | 〆比較:影の警察国家

Ⅳ ドイツ―分権型二元警察国家

[概観]

 ドイツ(以下、特に断りない限り、1990年以後の統一ドイツを指す)は、13の州と3つの州級大都市で構成された連邦国家であるため、警察制度も州警察を基本に、連邦は限定的な警察機関を擁する分権型の構制を採る。
 連邦制という点ではアメリカと類似するが、基本的に連邦と州の簡素な二元的分権であり、かつアメリカの連邦警察集合体のように複雑に林立し、かつ肥大化した連邦警察機関網は存在しない。
 ただし、一部の自治体は交通違反その他の軽微な法規違反を取り締まる小規模な自治体警察を擁する場合があり、厳密に見れば、連邦‐州‐自治体の三元的な分権体制とみなすことも可能である。
 総体として、ドイツにおける影の警察国家化は表面上さほど進展していないように見えるが、その背景として、第二次大戦前における旧ナチスドイツのファッショ警察国家体制、さらに戦後の東西分断時代における旧東ドイツの社会主義警察国家体制という二つの代表的な旧警察国家体制に対する反省が根深いことが挙げられるだろう。
 とりわけ連邦全土を管轄する中央集権的な連邦警察を創設することには長年消極的であったが、2005年に至り、連邦国境警備隊が連邦警察(Bundespolizei:BPOL)と改称された。これは、従来の国境警備隊が国境警備にとどまらず、連邦における総合的な警備警察及び海外派遣警察としても機能してきた実態に鑑み、名称変更に踏み切ったもので、任務・権限の増強は伴っていない。
 従って、新連邦警察は刑事警察及び公安警察としての任務・権限は有しておらず、警備警察に純化された警察機関であって、フランスの国家治安軍のように警察としての全権を備えた完結的な集権型警察組織ではない。
 その他、ドイツ警察の特色として、州警察とは別途、各州に重大犯罪捜査に当たる州刑事庁(Landeskriminalamt:LKA)が設置されていることである。言わばアメリカのFBIに相当するような組織であるが、FBIのような連邦機関ではなく、各州ごとに分権化されつつ、連邦に中央調整機関として連邦刑事庁(Bundeskriminalamt:BKA)が置かれる形で、ここでも二元的構制が貫徹されている。
 また、政治警察に相当する機関に関しては、連邦と州に国内保安機関としての憲法擁護庁(Verfassungsschutz)が設置されているが、犯罪捜査権を持たない機能的政治警察であり、政治的な犯罪の捜査は、州警察や上掲BKAの国家保安担当部署が行う。

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比較:影の警察国家(連載第47回)

2021-09-12 | 〆比較:影の警察国家

Ⅲ フランス―中央集権型警察国家

2:市警察と郷土巡視隊

 見てきたように、中央集権性が極めて強いフランスの警察制度であるが、近年は市長が管轄する自治体警察としての市警察(Police Municipale)が増加し、こうした市警察を持つ自治体は3000以上に達し、所属する警察官総数も2万人を超えている状況にある。
 なお、首都パリ市の場合は国家警察の部門としてのパリ警視庁が存在するため、市独自の警察は持ってこなかったが、2021年に、市警察官と同等の権限を持つ保安監視官3000人以上を擁する抑止・保安・警備局(Direction de la Prévention, de la Sécurité et de la Protection:DPSP) が事実上の市警察として創設された。
 こうした市警察は市長の監督下にあるものの、米英の自治体警察のように、完全な権限を備えた自己完結的な警察組織ではなく、国家警察や国家治安軍の管轄権を損なうことなく、防犯や公序良俗、公共安全のために職務を遂行することがその中心任務であり、実際の活動においても、国家警察や国家治安軍と連携することが多く、全体として補完的な警察組織と言える。
 そのため、市警察は非武装警察であり、市警察官は銃器を携行せず、特定の状況下や夜間などに限り、市長の要請に基づき県の許可により武装することが多いが、近年は治安管理の強化策として、日常的に銃器を携行する市警察も増加し、市警察の武装警察化も進んできている。
 一方、農村部では、市長の管轄下に郷土巡視隊(garde champêtre)が組織されている場合もある。この制度の歴史は古く、フランス革命時代の1791年から1958年まで、農村では設置が義務付けられ、言わば農村警察としての役割を果たしてきた。
 その任務は、農村部での治安維持全般であるが、特に農村部特有の森林監督や密猟監視が重要であり、そのため、市警察よりも広範囲な武装が認められた武装警察としての性格を持つ。
 フランスが長く農業国であった時代は郷土巡視隊が実質的な自治体警察として機能してきたが、1960年代以降、都市化の進展により減少していき、要員数も全国で千人未満まで減少している。
 こうした市警察及び郷土巡視隊に関しては、2014年にこれらを新たな地方警察組織に統合・再編する立法提案もなされており、将来的には統廃合される可能性があるが、そうなると、二つの国家警察組織に加え、地方警察という二段構えの警察国家化が進展する可能性もあるだろう。

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比較:影の警察国家(連載第46回)

2021-08-29 | 〆比較:影の警察国家

Ⅲ フランス―中央集権型警察国家

1‐5:関税・間接税総局

 フランスの警察制度は圧倒的に国家警察及び国家治安軍の両組織に集権化されているため、両組織に属しない警察機関は少ないが、経済・財務省に属する関税・間接税総局(Direction générale des douanes et droits indirects:DGDDI)は、約1万7千人の要員を擁する比較的規模の大きな機関である。
 この組織は元来、国家警察の一部局として国境警備を担う国境警察中央指令部から分離する形で、1995年に創設された比較的新しい法執行機関であり、その任務は諸国の税関に相当すると考えてよい。
 国家警察から分離された限りでは純粋の警察組織ではなくなったが、しかし、国家警察から分離された沿革上、なお警察機関としての性格は強く、国境や空港で活動する経済警察機関としての役割を持つ。
 そのため、航空機や巡視船をも擁するうえ、法執行に当たる職員は武装し、広範な権限を与えられているが、警察官と完全に同等ではなく、原則として被疑者の身柄拘束はできない。また、警察官とは異なるものの、職員は類似の階級と制服を持つ。
 一方、DGDDIには数多くの専門部局が設けられており、経済諜報機能を果たす国家情報・税関調査局の他、関税法違反等事案の捜査に当たる国家司法税関局など、国家警察並みの複雑な組織構成を持つ。

1‐6:国家森林局

 国家森林局(Office national des forêts)は、生態遷移省及び農業食糧・漁業省が共管する機関であり、その主任務は名称どおり森林管理にあるが、森林管理に関連して各種環境法の執行を行う環境警察としての機能を持っている。
 1964年に創設されたが、1980年代から人員の削減が続き、士気の低下やストレスから職員の自殺が相次ぐなど、組織の構造的な問題が指摘されている。

1‐7:行刑局看守要員団

 行刑局看守要員団(Corps du personnel de surveillance de l'administration pénitentiaire)は、2006年に創設された司法省系統の法執行隊である。言わば、刑務官の軍団である。従って、その任務は刑務所の看守そのものであるが、こうした形で要員団に集団化されたのもフランス的な集権制の特徴と言える。 
 このように集団化されることによって、刑務官が刑務所内及びその周辺での警備と法執行を担うある種の特別警察官のような立場に純化され、要員団自体が一つの刑務警察機関として機能するようになっている。これは、刑務所の目的の重心が矯正より保安に遷移する警察国家化の一つの表れである。

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比較:影の警察国家(連載第45回)

2021-08-15 | 〆比較:影の警察国家

Ⅲ フランス―中央集権型警察国家

1‐3:国内保安本部

 フランスの政治警察に相当する機関としては、前身機関が1907年の創設に遡る一般情報中央指令部と1940年代の対独レジスタンス時代に設立された国土監視指令部の二系統の国家警察部局が戦後も併存する形で存続していたが、効率性の観点から、2008年の制度改革によって、国内情報中央指令部として統合された。
 しかし、この統合機関は2012年にミディ‐ピレネー地域圏で発生したイスラーム過激主義者による連続銃撃殺傷事件における事前の情報監視の不手際を批判され、オランド社会党政権による2014年のさらなる制度改革により、国家警察から分離された内務省直属の公安機関として、新たに国内保安本部(Direction generale de la Securite interieure:DGSI)が創設された。
 その基本的な任務は前身機関のそれを継承して防諜や対テロ対策を中心とするが、近年はサイバー犯罪対策にも任務が拡大されている。国家警察から分離されたことにより、イギリスのMI5のような諜報機関としての性格が強まり、フランス政府が潜在的な治安上の脅威とみなす広範な集団や個人への秘密裏の監視活動が強化されていると見られ、影の警察国家化を象徴する機関となっている。

1‐4:国外保安本部

 DGSIと対を成す機関として、国外治安本部Direction generale de la securite exterieure:DGSE)がある。こちらは軍務省に属する国防機関の一つという位置づけであるが、文民要員の比率が高く、実質上は軍民混合機関である。
 DGSEの任務は安全保障上の脅威に関する分析や海外での諜報作戦であるが、外国での対仏破壊活動の抑止の観点から、対テロ対策にも及び、機能的な意味での政治警察機関としての役割を併せ持つと言える
 これも、その前身機関は1940年代の対独レジスタンス時代に設立されており、レジスタンス運動の統一的な諜報組織として活動した。その後、改称を経て、1982年に当時のミッテラン社会党政権によって現名称に再改称され、定着した。
 如上DGSIと合わせ、いずれも社会党政権下で整備された姉妹機関であり、これにより、イギリスにおけるMI5とMI6のような対内及び対外のツイン諜報機関に整理されたことになる。フランス政治では自由に重きを置く中道左派と目される社会党が影の警察国家化ではしばしば重要な役割を果たしていることは興味深い。
 例えば、ミッテラン社会党政権時代の1985年、フランスによるムルロア環礁核実験に抗議するためニュージーランドのオークランドに寄港した環境保護団体グリーンピースの帆船レインボー・ウォリア号爆破事件(一名死亡)では、ニュージーランド当局によってDGSEの工作員二名が拘束され、有罪判決を受けている。
 本件で、DGSEは核実験に反対するグリーンピースを対仏破壊活動団体とみなし、その活動を阻止する目的で、通常の監視を越えた爆破工作という攻撃的なテロ手法に出たものと見られ、DGSEの組織ぐるみでの破壊工作が疑われた。
 しかし、フランス政府は当時の首相が破壊工作への政府関与をやむを得ず認めた後も、ニュージーランド政府に圧力をかけて有罪判決を受けた工作員の帰国を強行し、外交摩擦に発展するなど、ミッテラン政権下での汚点の一つとなった。

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比較:影の警察国家(連載第44回)

2021-08-01 | 〆比較:影の警察国家

Ⅲ フランス―中央集権型警察国家

1‐2‐2:国家治安軍の分遣任務

 国家治安軍は陸海空の他軍種や軍務省、外務省等に派遣されて活動する各種分遣任務も持っており、その超域的な活動範囲から見れば、国家警察を越える超権力体と言える。分遣任務は武装警察、地方警察に加えた国家治安軍の三つ目の顔である。
 こうした分遣任務の一つとして、陸海空軍の内部犯罪の取り締まりに当たる憲兵隊としての任務がある。この限りで国家治安軍は諸国の憲兵隊の任務と重なるため、「国家憲兵隊」という定訳もあながち誤りとは言えないのであるが、こうした憲兵隊任務は国家治安軍の多岐にわたる任務の一部でしかない。
 狭義の憲兵隊任務を含めた国家治安軍の分遣任務は数多いため、ここでは対内的な分遣任務と対外的な分遣任務とに大別しつつ、見ていく。
 まず対内的分遣任務の中で要員数も多いのが、海上治安軍(Gendarmerie maritime)である。これは海軍の指揮下で運用され、諸国の沿岸警備隊(日本では海上保安庁)及び水上警察としての任務と海軍憲兵隊としての任務を併せ持つ分遣隊である。
 海上治安軍の類例として、空軍指揮下で運用される航空治安軍(Gendarmerie de l'air)があり、これは空軍憲兵隊としての任務とともに空軍基地の警備任務も担う。
 航空治安軍と区別される類似任務として、航空運輸治安軍(Gendarmerie des transports aériens)がある。航空運輸治安軍は国家治安軍と生態遷移省に属する民間航空総局の共管下に民間空港での警察任務を中心に担う空港警察である。
 また軍事装備治安軍(Gendarmerie de l'Armement)は軍事装備総局の指揮下で、同局関連施設の警備と軍事装備に係る犯罪捜査を担当する。ただし、核兵器に関しては別途、軍務省の指揮下で核兵器の警備を担当する核装備安全治安軍(Gendarmerie de la sécurité des armements nucléaires)が展開する。
 以上の対内的任務に対して、海外派遣任務は海外治安軍司令部(Commandement de la gendarmerie outre-mer)が担当する。これは海外県や海外領土における警察業務や海外派遣部隊の指揮に当たるほか、外務省指揮下で在外公館の警備任務も担当する海外任務専門の司令機関である。

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比較:影の警察国家(連載第43回)

2021-06-27 | 〆比較:影の警察国家

Ⅲ フランス―中央集権型警察国家

1‐2‐1:国家治安軍の二面性

 国家治安軍(Gendarmerie nationale)はフランス及びフランスの影響を受けた諸国において(機関名称は様々ながら)普及している言わば第二の警察であり、フランス式の二重的集権警察を象徴する制度である。
 語源的には「武装した人」を意味するように、本来は軍の一種であるところ、歴史的な変遷により、警察組織化してきたことは以前に述べたとおりであるが、そうした歴史を反映して、国家治安軍は準軍事的な武装警察としての役割と一般警察が存在しない地方における警察としての二面的な役割を担っている。
 前者の武装警察としての任務において最も主要な役割を果たすのは、機動治安軍(Gendarmerie Mobile)である。これはデモ規制や暴動鎮圧を専門とする機動隊組織である。
 これは国家警察側の保安機動隊と並び、フランス警備警察の中核として、まさに武装警察としての性格が前面に出る部門であり、その強力な実力行使によって、フランス警察国家の象徴でもある。
 また、機動治安軍では対処し切れない対テロリズムや人質救出等の特殊作戦に際しては、国家治安軍介入団(Groupe d’intervention de la gendarmerie nationale:GIGN)が出動する。GIGNは海外でも作戦を展開し、国家警察側の相応部隊であるRAIDよりも、出動頻度は高い。
 さらに、大統領を筆頭とする国家要人の警護及び大統領府エリゼ宮をはじめとする首都の主要庁舎警備部門としての共和国警備隊(Garde républicaine)は、権力中枢を護衛する親衛隊組織として、フランス国家権力の物理装置そのものとして機能する。
 他方、地方警察としての任務は、各県単位で組織される県治安軍(Gendarmerie Départementale)がこれを行う。機動治安軍との役割分担を明確にするため、同一機関内ながら、機動治安軍とは異なる階級章を使用する。
 ただし、県単位といえ、あくまでも中央集権組織であるので、県の上位行政単位である地域圏ごとに防衛区が置かれ、防衛区司令官の管轄下に県治安軍が組織されるという軍隊的な集権構造を採る。

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比較:影の警察国家(連載第42回)

2021-06-05 | 〆比較:影の警察国家

Ⅲ フランス―中央集権型警察国家

1‐1‐2:パリ警視庁の特殊性

 パリ警視庁はフランス革命中の1800年に設置された独自の歴史を持つ首都警察機関であり、内務省が設置され、国家警察の中央集権化が図られても独自の地位を維持したが、集権国家を強化した第五共和政期の1966年の制度改正で国家警察の一翼に編入された。
 それにもかかわらず、パリ警視庁は国家警察本部(DGPN)の管理下には属さず、独自の管理機構を擁する内務省の外局的な地位を保持している。その点で、首都の治安維持という点では同様の役割を果たすロンドンの首都警察や東京の警視庁が基本的には地方警察であるのとは異なる構制である。
 パリ警視庁の伝統的な管轄区域はパリ市であるが、2009年からはパリ市の郊外域を形成する三つの県にも拡大されるなど、管轄区域を広げ、グランパリと呼ばれるパリ首都圏を包括する警察としての性格を強めている。
 パリ警視庁は上述の通り、独自の管理機構を備えており、DGPNと並行的に、司法警察や地域警察、警備・交通警察など機能別の指令部(Direction)が置かれている。
 DGPNと異なる点として、パリ警視庁には公安警察部局として、パリ警視庁諜報指令部(Direction du Renseignement de la préfecture de police de Paris:DR-PP)が置かれていることである。対して、DGPNの旧公安警察部局は、他機関との合併により、後に見る国内保安本部に再編されている。
 また、パリ警視庁は、パレスチナ武装組織がミュンヘン五輪選手村を襲撃し、イスラエルの選手多数を殺害した1972年のミュンヘン五輪テロ事件を契機に、独自の対テロ特殊部隊として、奇襲対応団(Brigade anticommando)を導入するなど、早くから武装化を進めてきた。
 今日では、前回見たように、DGPNの国家警察介入隊の下に、DGPNの対テロ特殊部隊RAIDとの統合運用が行われるなど、治安有事に際しての武装警察部隊の運用を通じたDGPNとの統合化が進んでいるところである。

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比較:影の警察国家(連載第41回)

2021-06-04 | 〆比較:影の警察国家

Ⅲ フランス―中央集権型警察国家

1‐1‐1:国家警察の二元構造

 フランスの二重的集権警察制度における一本目の柱となるのは都市域を管轄する文民警察としての国家警察であるが、複雑なことに、内務省が所管するこの国家警察そのものが二元構造を成している。
 すなわち、内務省内の警察管理部局である国家警察本部(Direction générale de la Police national:DGPN)と首都パリを管轄するパリ警視庁(Préfecture de Police de Paris)である。パリ警視庁は 内務省内にありながら、DGPNとは別立てで、独自の管理組織を持つ外局的な位置づけとなる。
 このように、パリを別格として、その他の都市域では原則としてDGPNの各内部部局がそれぞれ地域分局を擁するという縦割り型の極めて官僚的な組織構制を採ることを特徴とする。
 DGPNの内部部局は、刑事警察や地域警察、機動警察、国境警察などの機能別に中央指令部(Direction centrale)が設置される基本構制で多岐に分かれているが、特殊部門として対テロ作戦に従事する重武装の探索・支援・介入・抑止隊(Recherche, Assistance, Intervention, Dissuasion:RAID)も擁する。
 RAIDは21世紀の「テロとの戦い」テーゼが焦点となる以前の1985年に当時のミッテラン社会党政権下で新設されたものであり、文民警察の重武装化の先駆けを成す組織である。
 武装文民警察としてより歴史が古いのは1944年創設の共和国保安機動隊(Compagnie républicaine de sécurité:CRS)であるが、CRSの主要任務は暴動鎮圧や街頭デモの規制であり、しばしばその抑圧的な過剰警備行動が批判されてきた。
 これら内部部局/部隊がそれぞれ地域分局/分駐隊を擁して各地域に展開する構制は非効率にも思えるが、ある意味では、集権警察内部で集権性を緩和する機能別の限定的な分権化がなされているとも言えるところである。
 ところで、DGPNの縦割り構制には例外があり、南仏最大都市マルセイユを含むブーシュ‐デュ‐ローヌ県だけは、統合的なブーシュ‐デュ‐ローヌ警察本部(Préfecture de police des Bouches-du-Rhône)が設置されている。ただし、パリ警視庁とは根本的に異なり、独自の地位を持たず、あくまでもDGPN管轄下の地域分局の位置づけである。
 このブーシュ‐デュ‐ローヌ県警察本部が設置されたのは2012年と比較的新しいが、このようにマルセイユとその周辺域にのみ縦割りを廃した統合警察本部が置かれたのは、麻薬関連事犯の多発など、治安が芳しくないマルセイユとその周辺地域の警察的統制を強めるためとされている。
 現時点で、こうした統合的警察本部は一庁にとどまるが、警察業務の効率性を重視して、同様の統合化が今後なされる可能性はあり、そうなると、上述のとおり機能的に分権化された集権警察の集権性が高まり、影の警察国家を助長する可能性もあるだろう。
 また、近時はテロ等の治安有事に際しては、パリ警視庁の介入部隊とも併せて統合運用する国家警察介入隊(Force d'intervention de la Police nationale)の下に統合されてきており、国家警察の二元構造を緩和し、統一する動きも見られる。

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