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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第30回)

2024-05-27 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(11)スーダン

(ア)成立経緯
南スーダンが分離した後の主権国家スーダンを継承する連合領域圏。油田の存在をめぐり、南スーダンとの境界紛争が続いていたアビエイ地方は、世界共同体による石油管理体制の導入により南スーダンに包摂することで決着する。凄惨な内戦が続いたダルフール地方北部は世界共同体直轄自治圏に移行する。

(イ)社会経済状況
主権国家時代は内戦や民族紛争が打ち続き、遅れていた社会経済発展も、社会の安定化と持続可能的計画経済の導入により進む。領域の大半を砂漠が占める中、主軸となる農業はナイル河周辺に限定されていたが、持続可能的計画経済の下、耕作地の拡大や工場栽培の試行もなされる。エジプトとともにナイル流域評議会の主要メンバーとして、ナイル河の持続可能的な水利管理に取り組む。

(ウ)政治制度
ダルフール地方の北部を除き、主権国家時代の州を準領域圏とする連合民衆会議による統治となる。主権国家時代にはしばしばクーデターで政治介入し、長い軍事政権の歴史を形成した軍は、常備軍廃止を定める世界共同体憲章に基づき解体され、民衆会議制度による民主主義が定着する。

(エ)特記
アラブ系武装組織による非アラブ系民族浄化が起きていたダルフール地方でも特に非人道的な事態の中核となっていた同地方北部地域を分離して世界共同体直轄自治圏とし、世界共同体平和維持巡視隊が常駐する。

☆別の可能性
ダルフール問題が平和的に解決された場合、世共直轄自治圏は設定されず、ダルフール地方全体がスーダンに残留する可能性がある。

 

(12)環赤道‐中央アフリカ合同

(ア)成立経緯
アフリカ大陸の赤道周辺と内陸中部に位置する5つの領域圏と南大西洋上の離島領域圏サントメ・プリンシペが合同して成立する合同領域圏。ただし、カメルーンから南カメルーンが分立する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の6圏である。いずれも統合領域圏である。

○中央アフリカ
主権国家中央アフリカを継承する領域圏。

○ガボン
旧主権国家ガボンを継承する領域圏。

○サントメ・プリンシペ
旧主権国家サントメ・プリンシペを継承する領域圏。

○赤道ギニア
旧主権国家赤道ギニアを継承する領域圏。

○カメルーン
主権国家カメルーンの仏語圏を継承する領域圏。

○南カメルーン
分離独立を求めていたカメルーンの英語圏地方が分立し成立する領域圏。

(ウ)社会経済状況
内戦による破綻を経験した中央アフリカを除けば、おおむね安定した主権国家時代の社会経済を基盤に、農業を軸とする合同共通の持続可能的計画経済が展開される。ガボンや赤道ギニア、カメルーンの経済基盤であった石油は世界共同体の管理下に移行する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。多言語のため、合同公用語はエスペラント語。

(オ)特記
旧版では、サハラ砂漠周縁のサヘル地方の四領域圏を包摂した合同領域圏を想定していたが、サヘル地方は固有の特色と課題を持つため、サヘル合同領域圏(後述)として分立させた。

☆別の可能性
南カメルーンが分立せず、カメルーン内の準領域圏としてとどまり、カメルーンが複合領域圏となる可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第29回)

2024-05-19 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(8)ソマリ合同

(ア)成立経緯
1990年代より内戦により分裂状態にあった旧主権国家ソマリアから分岐したソマリア、プントランド、ソマリランドの三つの分国がそれぞれ単独の領域圏として成立したうえ、合同して形成される合同領域圏

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の3圏である。いずれも統合領域圏である。

○ソマリア
合同全体の南部に位置する領域圏。

プントランド
ソマリアから事実上分立していた北部プントランドを継承する領域圏。

○ソマリランド
合同全体の最北部に位置するソマリランドを継承する領域圏。合同全体の北部に位置する。

(ウ)社会経済状況
長期内戦で壊滅状態にあった経済が回復される。合同共通経済計画に基づく持続可能的農業畜産業が主軸となる。遠距離通信システムの発達基盤を継承し、アフリカにおける通信産業の中心ともなる。紅海での海賊活動も根絶される。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、各領域圏の政治代表都市で交互に開催される。世界共同体と共同で、武装組織の武装解除・社会復帰の支援プログラムが運用される。

(オ)特記
旧版ではプントランドはソマリアと統一される形で2圏の合同としたが、プントランドの分立化状況に鑑み、別立てとした。

☆別の可能性
プントランドがソマリアと連合領域圏を形成する可能性もある。また、可能性としては極めて低いが、ソマリア全体が連合領域圏として再統一される可能性もなしとしない。

 

(9)エチオピア

(ア)成立経緯
主権国家エチオピアを継承して成立する連合領域圏

(イ)社会経済状況
豊富な水資源を利用しつつ、環境的持続可能性に配慮した計画的農業が成功し、アフリカにおけるモデル例となる。また水素自動車生産事業も軌道に乗り、汎アフリカ‐南大西洋領域圏全体での自動車生産の軸となる。

(ウ)政治制度
主権国家時代の州と自治区を基準とする準領域圏から成る連合領域圏で、連合民衆会議は共通に50人、さらに人口100万人ごとに10人を追加選出する独特の方式で抽選された代議員で構成される。

(エ)特記
1993年までは統一国家だった隣接のエリトリアとは個別に共通経済計画協定を締結し、合同経済計画会議が策定する共通経済計画の下に経済運営を行なう。

☆別の可能性
望ましくない可能性として、北部のティグライ州をはじめ、いくつかの州が分離独立し、連邦が内戦を経て事実上解体される可能性もある。その場合、ソマリと同様、改めて合同領域圏として再生することも想定できる。

(10)エリトリア

(ア)成立経緯
主権国家エリトリアを継承する統合領域圏

(イ)社会経済状況
小さな領域圏のため、自力経済に限界があり、上述のように、エチオピアとの共通経済計画が経済運営の柱となることから、経済的にはエチオピアと一体的となる。

(ウ)政治制度
主権国家時代の独裁政党は解体される。国外避難民を出す要因でもあった賦役的な国民皆兵制度も世界共同体憲章に基づく常備軍廃止に伴い、廃止される。

(エ)特記
南で隣接するジブチとの間で長年境界紛争を抱えてきたが、ジブチが世界共同体直轄圏となることに伴い、係争地域をエリトリアとの共同管轄地域とすることで解決を見る。

☆別の可能性
可能性は低いが、エチオピアと再統一される可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第28回)

2024-05-19 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(5)内陸南部アフリカ合同 

(ア)成立経緯
アフリカ南部の内陸諸国ボツワナ、ザンビア、ジンバブウェ、マラウィが合同して形成される合同領域圏南部アフリカ領域圏が招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の4圏である。いずれも統合領域圏である。

○ザンビア
主権国家ザンビアを継承する領域圏。

○ボツワナ
主権国家ボツワナを継承する領域圏。

○ジンバブウェ
主権国家ジンバブウェを継承する領域圏。

○マラウィ
主権国家マラウィを継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
持続可能的農業を軸とした共通経済計画に基づいて経済協力がなされる。また野生動物保護に関する共通計画が実行される。ジンバブウェにおける白人所有土地の強制収用によって発生した農業危機も共産主義的な土地の無主物化と計画的な農地管理システムにより解消する。また、主権国家時代のジンバブウェにおけるハイパーインフレーションも、貨幣経済の廃止により終息する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ボツワナのハボローネに置かれる。全領域圏が旧英国植民地のため、英語を合同公用語とする。

(オ)特記
招聘領域圏の南部アフリカ領域圏との間では、経済、社会サービス分野での相互協力協定が締結され、密接な関係となる。

☆別の可能性
可能性は高くないが、全体が英語圏のため、合同を超えて連合領域圏にまとまる可能性もなくはない。

 

(6)モザンビーク

(ア)成立経緯
主権国家モザンビークを継承する統合領域圏

(イ)社会経済状況
主産業となっていた鉱業が世界共同体の管理下に移行し、潜在的なポテンシャルを秘めていた持続可能的農業が発展する。課題であった衛生的な水へのアクセスは世界水資源機関との連携による給水システムの確立により実現する。

(ウ)政治制度
統合型領域圏として、民衆会議制度が導入される。独立戦争の中心を担った主権国家時代の支配政党・モザンビーク解放戦線は会議外でなお影響力を持つ。東アフリカ合同領域圏の招聘領域圏ともなる。

(エ)特記
旧版ではモザンビークを東アフリカ合同領域圏に包摂していたが、ポルトガル語圏で独自色も強いモザンビークは単立の領域圏とした。

☆別の可能性
モザンビークが東アフリカ合同領域圏に加入する可能性もなおなくはない。

 

(7)東アフリカ合同

(ア)成立経緯
主権国家自体に東アフリカ共同体を構成していた諸国のうち6か国が合同して成立する合同領域圏。ただし、旧ブルンディと旧ルワンダは統合して、ブルワンディとなる。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の5圏である。

○タンザニア
主権国家タンザニアを継承する連合領域圏。大陸部タンガニーカと島嶼部ザンジバルから成る連合領域圏である。

○ブルワンディ
民族構成が近い主権国家ブルンディとルワンダが統合して成立する連合領域圏

○ウガンダ
主権国家ウガンダを継承する統合領域圏

○南スーダン
主権国家南スーダンを継承する統合領域圏

○ケニア
主権国家ケニアを継承する統合領域圏

(ウ)社会経済状況
資本主義的発展を見せていたケニアと、内戦終結後にIT産業などで成長を見せていた旧ブルンディ(ブルワンディ)を中心に工業化も進展するが、持続可能的農業を軸とした共通経済計画に基づいて経済協力がなされる。野生動物保護に関する共通計画が実行される。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ブルワンディのキガリに置かれる。多言語のため、合同公用語はエスペラント語。

(オ)特記
主権国家時代には激しい内戦や残酷な独裁を経験した領域圏が多いことから、世界共同体平和理事会と連携する合同紛争調停機関を常設し、紛争の未然防止と早期解決を図るほか、合同人権監視機関を常設し、人権侵害への迅速な対応を図る。

☆別の可能性
ブルンディとルワンダが連合せず、それぞれ単立の領域圏となる可能性もある。また、モザンビークが合同に参加する可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第27回)

2024-05-14 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(3)アンゴラ

(ア)成立経緯
主権国家アンゴラを基本的に継承する統合領域圏。ただし、隣接するコンゴに囲まれた旧飛地カビンダは世界共同体の飛地禁止ルールに基づき、後掲のニューコンゴに編入される。

(イ)社会経済状況
20世紀の独立戦争と独立後内戦を経た主権国家時代は石油とダイヤモンドを基盤に経済発展を見せていたが、石油やダイヤモンドは世界共同体の管理下に移されるため、コーヒーを中心とした農業生産が中心となる。環境的持続可能性に配慮した農業生産の多角化も推進される。恒常的なインフレーションによる世界一とされた物価高問題は、貨幣経済の廃止により解消される。

(ウ)政治制度
統合型領域圏として、民衆会議制度が導入される。独立戦争の中心を担った主権国家時代の支配政党・アンゴラ解放人民運動は会議外でなお影響力を持つ。

(エ)特記
独立闘争を支援した歴史のある隣接のナミビアとは緊密な社会経済協力関係を構築する。

☆別の可能性
人口が少ないナミビアと合同領域圏を形成する可能性もある。

 

(4)ニューコンゴ

(ア)成立経緯
隣接する別々の主権国家であったコンゴ民主共和国とコンゴ共和国が統合されて成立する単独の連合領域圏。上述のとおり、アンゴラの飛地カビンダも編入される。

(イ)社会経済状況
旧コンゴ民主共和国領域は有数の資源国であり、このことが長期に及ぶ内戦の元であったが、天然資源の管理が世界共同体に一元化されるため、こうした紛争鉱物経済は終焉する。一方で、旧コンゴ共和国領域では遅れていた鉱物資源の持続可能な開発が世界共同体により進められる。紛争要因の除去と両コンゴの統合により、農業生産力が高まり、アフリカ大陸有数の農業地域としてアフリカの食を支える。石油を主産業としたカビンダの状況もほぼ同様である。

(ウ)政治制度
旧コンゴ民主共和国の州、旧コンゴ共和国の地方とカビンダを準領域圏とする連合領域圏のため、連合民衆会議は各準領域圏から人口に比例した数の代議員で構成される。政治代表都市は旧コンゴ民主共和国首都キンシャサとコンゴ河を隔てた旧コンゴ共和国首都ブラザヴィルが統合されたコンゴ大都市圏。連合公用語はフランス語だが、カビンダのみはポルトガル語。

(エ)特記
旧コンゴ民主共和国領域圏では長年の内戦による武装勢力の乱立が生じていたため、世界共同体の関与のもと、武装解除と少年を含む戦闘員の社会復帰プログラムが進められる。

☆別の可能性
長年の別国状態を考慮し、より緩やかな合同領域圏の形態が選択される可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第26回)

2024-05-11 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

汎アフリカ‐南大西洋域圏は、アフリカ大陸全域と南大西洋上の島嶼を包摂する汎域圏である。アフリカ大陸が東側で面するインド洋上のマダガスカル、コモロ、セーシェル、モーリシャスは主権国家時代はアフリカ連合に所属したが、世界共同体の下では、地政学上の変化に伴い、西方アジア‐インド洋域圏の環インド洋合同領域圏に加入することとなる。汎域圏全体の政治代表都市はナミビア領域圏のウィントフックに置かれる。

包摂領域圏:
南部アフリカ、ナミビア、アンゴラ、統一コンゴ内陸南部アフリカ合同、モザンビーク、東アフリカ合同ソマリ合同、エチオピア、エリトリアスーダン、環赤道‐中央アフリカ合同ナイジェリア合同、西岸アフリカ合同サヘル合同マグレブ合同、エジプト

 

(1)南部アフリカ

(ア)成立経緯
南アフリカ共和国と南アフリカの囲繞内陸国レソト、エスワティニの両王国が統合されたうえ、連合領域圏として成立する。「南部アフリカ」(Southern Africa)の新名称はレソト、エスワティニが連合に包摂されることから、旧南アフリカ(South Africa)と区別するため採用される。英領セントヘレナ・アセンションおよびトリスタンダクーニャを分立・編入した南大西洋諸島自治域を含む。

(イ)社会経済状況
旧南アフリカ領域の豊富な天然資源は世界共同体の管理下に移行したが、旧南アフリカ共和国時代におけるアフリカ随一の工業生産力は維持される。特に自動車生産では、汎アフリカ‐南大西洋圏の中核を担う。農業生産でも、アフリカ随一のトーモロコシを中心に多角的な生産が行なわれる。白人支配人種隔離体制アパルトヘイトの廃止後、長く懸案となっていた白人による農地専有問題は、一元的な農業生産機構農場への転換により解決する。貨幣経済の廃止により、構造的な貧困問題は解消する。また、南ア経済に依存していたレソトとエスワティニは、南部アフリカへの完全な統合により、貧困な小国経済を脱する。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、旧南アフリカ共和国の各州を継承する準領域圏に包摂準領域圏となるレソト、エスワティニ、さらに準領域圏と同等の地域を持つ南大西洋諸島自治域を加えた準領域圏から同数選出された代議員から成る。アパルトヘイト廃止後の南アフリカで圧倒的な与党の座にあったアフリカ民族会議は政党をベースとしない民衆会議制下では支配権を持たないが、会議外での影響力は残る。レソトとエスワティニの王制は廃止されるが、各準領域圏の文化的象徴としての王室は存続する。多言語のため、連合公用語はエスペラント語。

(エ)特記
南部アフリカ最大都市のヨハネスブルグには世界共同体本部が置かれ、南部アフリカは世界共同体の中核的存在となる。

☆別の可能性
小国ながら独自色の強いレソトとエスワティニが南部アフリカに包摂されず、それぞれ単立領域圏として合同を形成する可能性もなくはない。

(2)ナミビア

(ア)成立経緯
主権国家ナミビアを継承する統合領域圏。

(イ)社会経済状況
主軸産業であった鉱業は世界共同体の管轄したに移行するため、牧畜が主産業となる。南部アフリカ経済への依存度が高く、南部アフリカとは経済協力協定を締結する。貨幣経済の廃止に伴い、人種間経済格差は解消される。

(ウ)政治制度
統合領域圏のため、一元的な民衆会議制による統治となる。独立闘争の中心組織で、独立後も優位政党であった南西アフリカ人民機構は政党をベースとしない民衆会議制下では支配権を持たないが、会議外での影響力は残る。なお、ナミビアの政治代表都市ウィントフックは汎アフリカ‐インド洋域圏全体の政治代表都市であると同時に、世界共同体の内部機関である世界天然資源計画と専門機関である世界野生生物保護機関の本部が置かれる。

(エ)特記
旧版では南部アフリカに包摂していたが、白人支配時代の南アフリカによる不法占領状態から闘争により独立した歴史に鑑み、単立の領域圏とした。

☆別の可能性
ナミビアが南部アフリカに包摂される可能性、または政治的な結びつきが強い隣接のアンゴラと合同を形成する可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第25回)

2024-05-07 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(15)チリ

(ア)成立経緯
チリ共和国を継承する統合領域圏。ただし、南太平洋上の離島領イースター島(ラパ・ヌイ)は分立し、遠ポリネシア領域圏に包摂される。アンデス合同領域圏の招聘領域圏でもある。

(イ)社会経済状況
主産業であった銅を中心とする鉱業は世界共同体の管轄下に移される一方、環境的に持続可能的な農業林水産業が発展し、南米における一つのモデルとなる。資本主義的経済成長下で拡大した経済格差は貨幣経済の廃止により解消される。

(ウ)政治制度
統合領域圏であるため、一元的な全土民衆会議による統治体制となる。マプチェ族を中心とした先住民族も先住民自治体を形成し、連合に代表を送る。20世紀に大量人権侵害の猛威を振るった軍事政権を形成した軍は、世界共同体の軍備廃絶規定によって廃止される。

(エ)特記
旧版ではアンデス合同領域圏に包摂していたが、アンデス合同領域圏の基礎でもあるアンデス共同体を脱退したチリは独自性が強く、単立の領域圏とした。

☆別の可能性
可能性としては高くないが、アンデス合同領域圏に加入する可能性もなくはない。

 

(16)ラプラタ

(ア)成立経緯
主権国家時のアルゼンチンとウルグアイが合併する形で結成される連合領域圏。ラプラタの名は、支流を含め、領域圏を貫流する大河であるラプラタ河にちなむ。

(イ)経済社会状況
アルゼンチンの工業力を継承しつつ、持続可能的な農牧業も統合される。社会的にはウルグアイの進歩性が領域全体に浸透する。アルゼンチンがたびたび経験したデフォルト経済破綻や資本主義的経済成長下での貧困問題は、貨幣経済の廃止により解消される。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は元来から連邦制だったアルゼンチンの州と集権制のウルグアイの県が合併整理のうえ再編された準領域圏から同数選出された代議員で構成される。マプチェ族を中心とした先住民族も先住民自治体を形成し、連合に代表を送る。政治代表都市はブエノスアイレス。両国で20世紀に大量人権侵害の猛威を振るった軍事政権を形成した軍は、世界共同体憲章の軍備廃絶規定によって廃止される。

(エ)特記
ブエノスアイレスには世界共同体の人権司法機関である人権審査院が常設され、世界の人権保障の中心となる。

☆別の可能性
ウルグアイが連合せず、単立の領域圏となる可能性もなる。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第24回)

2024-05-03 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(13)パラグアイ

(ア)成立経緯
主権国家パラグアイを継承する統合領域圏

(イ)社会経済状況
南米の貧困国であったが、貨幣経済経済の廃止により貧困問題は解決する。計画経済により、持続可能的な農牧業が導入される。主産物の大豆は、代替肉の普及により、その原材料供給の中心地となる。

(ウ)政治制度
統合領域圏として一元的な民衆会議によって運営されるが、長く圧倒的な優位政党であったコロラド党の影響は民衆会議外で残る。

(エ)特記
旧版では、アルゼンチンやウルグアイとともにラプラタ連合領域圏(後述)に包摂していたが、パラグアイはラプラタ河流域から外れており、民族的にも先住民系グアラニ人の割合が高いなど独自性が強いため、単立の領域圏とした。

☆別の可能性
可能性としては高くないが、隣接するアンデス合同領域圏に加入する可能性もなくはない。

 

(14)アンデス

(ア)成立経緯
アンデス山脈を共有し合う旧アンデス共同体の加盟四か国を継承する形で結成される合同領域圏。ベネズエラとチリも招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の4圏である。いずれも統合領域圏である。

○コロンビア
コロンビア共和国を継承する領域圏。

○エクアドル
エクアドル共和国を継承する領域圏。

○ボリビア
ボリビア多民族国を継承する領域圏。

○ペルー
ペルー共和国を継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
共和国時代の各領域圏に跋扈した強力な麻薬密輸組織は貨幣経済の廃止に伴い、自然消滅する。貧農が依存していたコカ栽培からも脱却し、持続可能的な健全農業が導入される。エクアドルやペルーの鉱業はいずれも世界共同体管理下へ移行する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の評議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議、共通政策を協調して遂行する。招聘領域圏のベネズエラも、オブザーバーを派遣する。合同を形成する4領域圏それぞれの先住民の利益を横断的に代表するアンデス先住民会議が設置され、政策協議会にも代表者を送る。

(オ)特記
旧インカ帝国の勢力圏と重なるため、遺跡保存の共同プログラムが策定され、合同のインカ考古センターが設置される。これにはチリも参加する。

☆別の可能性
かつてアンデス共同体加盟国であったチリが加入する可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第23回)

2024-04-30 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(11)ベネズエラ

(ア)成立経緯
主権国家ベネズエラ共和国を継承する連合領域圏

(イ)社会経済状況
安定した農業生産を軸とする共産主義経済が確立される。経済的主軸であった石油は世界共同体による共同管理体制下に移され、極端な石油依存経済からは脱却する。持続可能な農業が発展し、食糧自給力が回復する。

(ウ)政治制度
共和国時代は集権制の強い名目的な連邦国家であったが、州を準領域圏とする純粋の連合領域圏となる。連合民衆会議は、各準領域圏から人口に比例した定数抽選された代議員で構成される。

(エ)特記
北部はカリブ海に面しているため、環カリブ合同領域圏の招聘領域圏であるとともに、アンデス山脈北部にも位置するため、アンデス合同領域圏(後述)の招聘領域圏ともなる。これに伴い、隣接するガイアナとの領有権争いの対象であったエセキボ地域は、環カリブ合同領域圏との合同管轄域となる。

☆別の可能性
連合領域圏ではなく、より集権的な統合領域圏となる可能性もある。

 

(12)ブラジル

(ア)成立経緯
主権国家ブラジル連邦共和国を継承する連合領域圏

(イ)社会経済状況
南米随一の工業力を維持する。一方、積年の宿弊であった汚職は貨幣経済の廃止に伴い激減し、もう一つの宿弊であった構造的貧困はも解消する。アマゾン地域の自然環境と先住民の生活基盤を脅かしていた森林乱伐は、持続可能的計画経済に基づく森林保護政策の導入により抑止される。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、各準領域圏から同数抽選された代議員で構成される。アマゾン地域の先住民は部族ごとにアマゾン先住民自治体を構成し、連合民衆会議にはアマゾン先住民自治体からも代議員を派遣することができる。

(エ)特記
共産主義革命後、アマゾン地域に残存していた文明非接触部族は順次接触を開始し、文明社会と協調関係を保持する。主権国家時代は開発優先政策ゆえに軽視され、迫害もされたかれらの生活は、自然サイクルと調和した持続可能的生活様式の一つのモデルとして再評価される。

☆別の可能性
アマゾン先住民自治体が統合され、単一の自治体として連合に参加する可能性もある。

コメント

世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第22回)

2024-04-20 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(10)環カリブ合同

(ア)成立経緯
カリブ海を囲む地域の島嶼諸国と中米大陸側のベリーズ、カリブ海に面した南米のギアナ三国に加え、周辺に散らばっていた欧米の海外領土がすべて独立する形で成立する合同領域圏。その範囲は、旧カリブ共同体を形成していた地域にほぼ相当する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の9圏である。

○ジャマイカ
主権国家ジャマイカを継承する統合領域圏

○ケイマン
旧英領から独立する統合領域圏

○ベリーズ
主権国家ベリーズを継承する統合領域圏。合同の中で、唯一中米大陸部に所在するが、英語を公用語とするため、スペイン語圏の中央アメリカ連合には加入しない。

○東カリブ‐アンティル
小アンティル諸島に属する独立小国(トリニダードトバゴは除く)に加え、欧米の海外領土がすべて独立したうえで、改めて成立する連合領域圏。結果、旧独立諸国は連合を構成する準領域圏に移行する。連合公用語はエスペラント語で、各準領域圏は英語、蘭語、仏語のいずれかを公用語とする。

トバゴ
トリニダードトバゴ共和国に属したトバゴ島が分立したうえで、成立する統合領域圏

トリニダード
トリニダードトバゴ共和国の本島に当たるトリニダード島単独で成立する統合領域圏

○ギアナ
南米大陸北東部に所在する独立国のガイアナとスリナム、さらに旧フランス海外領土のギアナが合併して成立する連合領域圏。三つの準領域圏の公用語がそれぞれ英語、蘭語、仏語と分かれているため、連合公用語はエスペラント語を指定。フランスが旧ギアナに設置したギアナ宇宙センターはフランスと世界共同体の共同運営機関に移行する。

○ルカヤン
地理上のルカヤン群島を構成する独立国バハマと、その南東の英領タークス・カイコス諸島が独立したうえ、合併して成立する統合領域圏。共に金融で著名であるが、貨幣経済の廃止に伴い金融は廃絶、自給自足的な島嶼共産主義となる。

○バミューダ 
旧英領から独立して成立する統合領域圏。合同内では最北に位置し、地理的にはカリブを越え出ているが、地政学的な理由から、環カリブ合同領域圏に加入した。ここも英領時代は金融で繁栄したが、ルカヤンと同様の経緯となる。

(ウ)社会経済状況
この地域の島嶼は、主権国家か西欧諸国の領土かを問わず、ほぼ観光と金融に依存する経済構造であったところ、貨幣経済廃止に伴い、回復された自足的な農漁業を基盤としつつ、合同内で持続可能的計画経済を運用する。また、北アメリカ連合領域圏との経済協力を通じて工業製品を調達する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、圏内各領域圏の民衆会議から選出された同数の評議員で構成する政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ジャマイカのキングストンに置かれる。この地域の言語は多種にわたるため、合同全体の公用語はエスペラント語。

(オ)特記
この合同領域圏に属する領域圏は、歴史的にほぼ例外なく旧奴隷貿易の結果、解放黒人奴隷を中心に形成されたことから、政策協議会が所在するキングストンには奴隷貿易記銘館を置き、奴隷貿易の歴史の記録と犠牲者の顕彰を行なう。

☆別の可能性
ベリーズが参加せず、中央アメリカ連合領域圏に加入する可能性がある。また、トバゴが分立せず、高度な自治権を保持する準領域圏として残留し、トリニダードトバゴが複合領域圏となる可能性もある。あるいは、トリニダードトバゴが東カリブ‐アンティル連合領域圏に加わる可能性など、多様なバリエーションが想定できる。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第21回)

2024-04-16 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(7)キューバ

(ア)成立経緯
主権国家キューバ共和国を継承する統合領域圏。20世紀初頭以来の米国租借地だったグアンタナモ米軍基地は、北アメリカ領域圏との協約に基づき、撤去・返還される。環カリブ合同領域圏(後述)の招聘領域圏となる。

(イ)社会経済状況
主権国家時代末期には、共産党一党支配下で市場経済化が進められ、資本主義的な階級格差が広がり始めるが、「共産党に対抗する共産主義革命」によって、貨幣経済に基づかない真の共産主義社会が実現する。旧共産党体制時代の社会主義的な生産体制が脱構築的に継承され、汎アメリカ‐カリブ域圏内でのモデルとなる。

(ウ)政治制度
共産党体制時代の人民権力全国会議は、一院制の全土民衆会議に転換される。「共産党に対抗する共産主義革命」により一党支配は終焉し、旧支配機構であった共産党及びその傘下組織は解体される。

(エ)特記
キューバ革命の歴史的意義が自由に論議されるようになり、その暗黒面の調査研究が進展する。

☆別の可能性
共産党の支配力が強力なため、共産党支配体制が遷延し、世界共同体に包摂されない可能性もある。

 

(8)ハイチ

(ア)成立経緯
主権国家ハイチを継承する統合領域圏。合衆国領有小離島だったナヴァッサ島も編入される。環カリブ合同領域圏の招聘領域圏となる。

(イ)社会経済状況
資本主義時代は、西半球でも最貧レベルにして、ギャング支配などの混乱にも見舞われていたが、貨幣経済のない世界では、経済が再建される。元来主流的であった自給農業が成り立つようになり、環境的に持続可能な農業のモデルともなる。

(ウ)政治制度
主権国家時代は連邦国家ではないにもかかわらず、二院制であったが、革命後は全土民衆会議の一院制に転換する。

(エ)特記
ハイチの社会混乱を防止するため、世界共同体平和維持巡視隊が暫定的に駐留する可能性がある。

☆別の可能性
現状のハイチの政治社会混乱が進行して将来完全に破綻した場合、世界共同体の直轄自治圏として再建される可能性もある。

 

(9)ドミニカ・リコ

(ア)成立経緯
主権国家ドミニカ共和国と、モナ海峡を挟んで隣接するアメリカ合衆国自治連邦区プエルト・リコがアメリカから分立したうえ、合併して成立する統合領域圏。環カリブ合同領域圏の招聘領域圏となる。

(イ)社会経済
資本主義時代にカリブ海域では最大規模に発展していたドミニカ経済と、アメリカ領時代に発達した経済を基盤に統合された持続可能的計画経済が発展する。特に医薬品産業を軸とする。持続可能的農業は主にドミニカ地域が担う。

(ウ)政治制度
主権国家時代のドミニカ共和国と米自治領時代のプエルト・リコはともに二院制であったが、統合領域圏となるため、全土民衆会議の一院制に転換される。

(エ)特記
主権国家時代、ハイチからの密入国を阻止するためにイスパニョーラ島内で隣接するドミニカ共和国が設置していた国境壁は撤去され、ドミニカ・リコ領域圏との境界線は原則的に開放される。

☆別の可能性
プエルト・リコがドミニカと合併せず、単立の領域圏となる可能性、またはドミニカと緩やかな合同領域圏を形成する可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第20回)

2024-04-08 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(5)メキシコ

(ア)成立経緯
 メキシコ合衆国を継承する連合領域圏

(イ)社会経済状況
メキシコ合衆国時代の宿疾であった麻薬組織犯罪とそれに絡む暴力、政治腐敗は共産主義革命による貨幣経済の廃止に伴い、消滅する。また構造的な貧困問題も解消し、かつては貧困最下層を形成した先住民の地位が向上し、連合民衆会議代議員としても進出する。

(ウ)政治制度
北アメリカ連合領域圏に類似し、各準領域圏から抽選された代議員で構成される連合民衆会議が設置されるが、先住民との混血人口が多いため、特に先住民自治体代表制度は設けられない。

(エ)特記
マヤ文明人の末裔民族が多い南東部のチアパス準領域圏には、革命前のチアパス州時代からサパティスタ民族解放軍によって組織された事実上の自治的革命解放区が成立していたが、連合領域圏の成立に際して発展的に解消される。

☆別の可能性
可能性は低いが、アメリカのメキシコ国境四州が分立して、独自の連合領域圏(ボーダーズアメリカ)となるのではなく、メキシコ連合領域圏に編入される可能性もある。

 

(6)中央アメリカ

(ア)成立経緯
南北両大陸の間をつなぐいわゆる中央アメリカに位置するグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマの6つの主権国家が連合し、それぞれを準領域圏とする一つの領域圏に発展する連合領域圏。ただし、この地域で唯一英語を公用語とするベリーズは連合せず、後述の環カリブ合同領域圏に加入する。

(イ)社会経済状況
世界共同体創設前は、先住民層を中心に貧困が構造化し、白人系富裕層が経済的権益を独占する階級構造が支配的で、北米への大量移民送出地域でもあったが、共産主義革命による貨幣経済の廃止により、そうした不平等な構造は解消される。それに伴い、大量移民も過去のものとなる。また麻薬取引の消滅に伴い、南米方面からの麻薬密輸中継地としての役割も過去のものとなる。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は6つの準領域圏から同数ずつ抽選された代議員で構成され、各準領域圏代議員団長が連合代表者会議を構成する。政治代表都市は、コスタリカのサンホセ。なお、かつてはこの地域の各国で白人支配層と結んで政治的な発言力を持ち、しばしばクーデターで軍事独裁政権を樹立しては時に先住民殺戮を伴う凄惨な内戦を主導した軍は、常備軍の廃止を規定する世界共同体憲章に基づきすべて解体される。

(エ)特記
当領域圏の形成に当たっては、かねてより常備軍を廃止し、比較的安定した政情にあったコスタリカが大きな役割を果たす。

☆別の可能性
6つの主権国家がそれぞれ単立の領域圏となったうえで、緩やかな合同領域圏を形成する可能性もある。また、その場合、ベリーズが合同に参加する可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第19回)

2024-03-30 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(3)北アメリカ

(ア)成立経緯
アメリカ合衆国における革命の結果、カナダとの連合協議を経て成立する連合領域圏。その領域は、アメリカ合衆国本土48州のうち、メキシコに接する南西部4州(カリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス)がボーダーズアメリカ(後述)として分立したうえ、アメリカの飛地州だったアラスカ、現デンマーク領グリーンランドとともに極北領域圏として分立するカナダの準州及び単立領域圏として分立するケベック州を除いたカナダの領域を新たに加えて構成される。なお、ハワイ州を含む旧アメリカ合衆国海外領土は、すべて分立する。

(イ)社会経済状況
連合の持続可能的計画経済は、アメリカとカナダの産業基盤をもとに構築される。情報工学や各種学術に関しては、アメリカ及びカナダの先進性を継承し、世界共同体のリーディングな地位を持つ。リベラルなカナダと連合することで、アメリカ合衆国の保守性が緩和され、宿弊であった人種差別問題は解消に向かう。先住民保留地も解体され、先住民の統合も進む。また、カナダと連合することで、旧カナダ領域への人口移動が生じる。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、アメリカ合衆国本土州のうち上掲4州を除いた44州と、ケベックを除いたカナダの9州を継承する準領域圏、さらに準領域圏と同等の地位を付与される先住民族自治体から同数ずつ抽選された代議員で構成される。各準領域圏の代議員団長は連合代表者会議を構成し、連合全体に関わる重要議題の討議及び連合民衆会議が制定した連合共通法の施行を監督する。先住民族自治体を含む準領域圏は、独自の法体系を含む高度の自治権を持つ。連合代表都市はワシントンD.C.とオタワで4年おき交互に入れ替わる。フロリダ準領域圏の政治代表都市マイアミは、汎アメリカ‐カリブ域圏全体の政治代表都市でもある。

(エ)特記
革命前、世界最強を誇ったアメリカ合衆国軍隊は、常備軍の廃止を定める世界共同体憲章に基づき解体される。ただし、北アメリカは世界共同体平和維持巡視隊の主要な部隊を提供し、要員訓練センターも設置される。また、アメリカ合衆国の旧弊であった銃器の個人所有慣習は貨幣経済廃止を軸とする共産主義化に伴う治安の劇的な向上により、自然に消滅する。

☆別の可能性
カナダと連合せず、アメリカ合衆国の本土48州がそのまま連合領域圏に移行する可能性(その場合、カナダも別立ての連合領域園となる)、逆に、より確率は低いが、現行50州がすべて個別の領域圏として分立し、合衆国が完全に解体される可能性もなくはない。

 

(4)ボーダーズアメリカ

(ア)成立経緯
アメリカ合衆国のメキシコに接する南西部4州(カリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス)が分立し、それぞれを準領域圏として成立する連合領域圏

(イ)社会経済状況
ボーダーズアメリカでは中南米にルーツを持つヒスパニック系人口が過半数を占め、準スペイン語圏となる。連合を構成する4つの準領域圏中、最大規模のカリフォルニアを中心に情報産業が集約されるほか、ハリウッドの映画産業も継承される。二番目に大きな準領域圏テキサスの石油産業は共産主義革命後、世界共同体の管理下に移行する一方、環境的に持続可能な集約的農業・牧畜業のモデル地域となる。また、当領域圏は北アメリカとメキシコの両隣接領域圏と経済協力協定を締結し、経済的に両者をつなぐ役割を果たす。

(ウ)政治制度
連合民衆会議の構成は北アメリカ領域圏と類似し、4つの準領域圏及び準領域圏と同等の地位を付与された先住民族自治体から同数ずつ抽選された代議員で構成される。英語とスペイン語の双方を対等な公用語とする。政治代表都市は、4つの準領域圏の主要都市で4年ごとに回り持つ。

(エ)特記
当領域圏のメキシコとの境界線は完全に開放されることはないが、警備は緩和され、原則として往来自由となる。

☆別の可能性
上述のように、4州を含むアメリカ合衆国本土48州がそのまま連合領域圏に移行する可能性もある。一方、より確率は低いが、4州は歴史的にメキシコの旧領土であった経緯から、南で隣接するメキシコと連合して、メキシコ領域圏に包摂される可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第18回)

2024-03-26 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

汎アメリカ‐カリブ域圏は、現在デンマーク領のグリーンランドを含めた北極圏に、今日の南北アメリカ両大陸、さらに中央アメリカ地域、カリブ海域の島嶼を加えた領圏域を包摂する汎域圏。カリブ海域に残存していた西欧諸国領土はすべて独立する。また、メキシコとの国境四州を除いたアメリカ本土と極北地域及びケベック州(ニューブランズウィック州の一部を含む)を除いたカナダが統合されて新たな領域圏を形成する。汎域圏全体の政治代表都市は北アメリカ領域圏のマイアミに置かれる。

包摂領域圏:
極北、ケベック、北アメリカ、ボーダーズアメリカメキシコ、中央アメリカキューバ、ハイチ、ドミニカ・リコ環カリブ合同ベネズエラ、ブラジルパラグアイ、アンデス合同チリ、ラプラタ

 

(1)極北

(ア)成立経緯
カナダ北部のノースウェスト、ユーコン、ヌナブートの各準州が準領域圏となり、現アメリカのアラスカ州、現デンマーク領のグリーンランド(カラーリットヌナート)も加わって形成される連合領域圏

(イ)社会経済状況
イヌイットをはじめとする先住民族が主体となる人口構成で、伝統的な生活様式が維持される。持続可的な漁業が主産業となる。他方、アラスカを含む北米極北地域に豊富であった天然資源の管理は世界共同体に移される。温暖化の指標となる北極圏の氷床及び氷河を常時観測するため、世界共同体地球環境観測センターの北極圏観測所が設置される。

(ウ)政治制度
上掲5つの準領域圏から均等に抽選された代議員から成る連合民衆会議が設置される。それ以外に、各先住民族の代表も代議員に加わり、先住民族が主体性を持った政治制度となる。エスペラント語のほか、英語、デンマーク語が公用語となる。政治代表都市は、ノースウェスト州のイエローナイフ。

(エ)特記
旧版では、北米極北地域も北アメリカ領域圏に包摂していたが、北極圏としての特性に加え、長く迫害されてきた先住民族の主体性を回復する目的からも、北アメリカから分立して、独立の領域圏とした。

☆別の可能性
グリーンランドが分立したうえ、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏の北部ヨーロッパ合同領域圏に参加する可能性もある。

(2)ケベック

(ア)成立経緯
カナダのケベック州時代からのフランス語圏として、総体的に英語圏に属する連邦国家カナダから分立したうえ、隣接するニューブランズウィック州のフランス語圏地域を編入して成立する統合領域圏

(イ)経済社会状況
カナダ領時代から発達したが、独立領域圏となった後も継承される。一方で、メープルシロップに代表される農業も盛んで、ハイテク産業と農業が組み合わさったユニークな複合経済が継続される。隣接する極北領域圏及び北アメリカ領域圏とは経済協力協定を締結し、緊密な経済関係を保持する。

(ウ)政治制度
民衆会議には、先住民自治体も代議員を送る。政治代表都市は、現州都ケベックシティから最大都市モントリオールに移転。なお、北アメリカとの密接な関わりからも、北アメリカ連合民衆会議に議決権を持たないオブザーバーを送る。

(エ)特記
編入される旧ニューブランズウィック州の地域では、少数派となる英語系住民のため、英語も公用語とされる。

☆別の可能性
かねてからのケベック州の独立運動がやや低調化してきているため、分立することなく、上掲北アメリカ領域圏に包摂される可能性、あるいは、カナダがアメリカと統合されない場合にはカナダ領域圏に留まる可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第17回)

2024-03-19 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

二 汎東方アジア‐オセアニア域圏

(15)統一コリア
 
(ア)成立経緯
主権国家の大韓民国及び朝鮮民主主義人民共和国が並立する南北朝鮮分断を止揚して成立する統合領域圏
 
(イ)社会経済状況
主権国家時代に資本主義的発展を遂げた韓国と社会主義的低開発状態にあった朝鮮の経済格差は通常の主権国家統合がほぼ不可能なまでに開いていたが、世界共同体内の領域圏としての統合と持続可能的計画経済の導入により、両者の止揚的統合が可能となる。
 
(ウ)政治制度
集権性の強い統合領域圏として統一されるが、南北ともに主権国家時代の広域行政区分である「道」を地方圏として継承しつつ、地方自治を推進する。旧北朝鮮領域では、民衆会議体制への移行に伴い、支配政党・朝鮮労働党は解散する。政治代表都市は分断時代の旧軍事境界線周辺を開発して造成される板門店特別市に置かれる。
 
(エ)特記
長年にわたる分断状況からの一挙的な統合は社会経済的な混乱を引き起こす恐れがあるため、さしあたりは南北コリアの両領域圏が単立したうえで暫定的な合同領域圏を形成し、準備期間を経て完全統合化するプロセスを辿る。
 
☆別の可能性
朝鮮側では金氏一族支配が強固に継続し、世界共同体に包摂されない可能性もある。さらに、望ましくない可能性ではあるが、朝鮮では民衆と支配体制の対峙が先鋭化し、民衆革命が流血事態となる可能性もなくはない。また、韓国側でも長年の強固な反共政策の影響から、連続革命の波が及ばず、世界共同体に包摂されない可能性がある。一方で、最終的に両者が完全に統合されることなく、上記の合同領域圏を形成するにとどまる可能性もある。
 
 
 
 
(16)極東ユーラシア
 
(ア)成立経緯
主権国家ロシア連邦内の極東連邦管区が分立して成立する連合領域圏。極東連邦管区サハリン州に含まれるクナシリ、エトロフ、シコタン、ハボマイの四島は日本に返還・編入される。
 
(イ)社会経済状況
ウラジオストックを含む沿海州を中心に、漁業に基盤を置く食品加工や造船のほか、自動車産業もあり、旧ロシア時代から継承した産業基盤を中心に、持続可能的計画経済が導入される。旧ロシア時代は辺境地のため、開発から取り残されがちで、人口流出にも悩まされてきたが、独立の領域圏となり、自立的な計画経済運営の可能性が開かれる。
 
(ウ)政治制度
ロシア極東連邦管区時代の連邦構成主体をすべて同格の準領域圏として構成される連合領域圏である。連合民衆会議は、各準領域圏から人口比に応じて配分された定数抽選された代議員で構成される。政治代表都市はウラジオストック。
 
(エ)特記
当領域圏がロシアから分立することで、ロシアは極東領土を放棄し、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏の一員として純化されることになる。一方、旧ソ連→ロシアと日本の間での歴史的な懸案問題となっていたいわゆる北方領土問題は、係争地域がロシアから分立することで、汎東方アジア‐オセアニア域圏内での協商による平和的な解決を見る。
 
☆別の可能性
ロシア側では極東領土の喪失につながる極東連邦管区分立への反対が強く、極東連邦管区がロシアにとどまる可能性もある。また、可能性としてはかなり低いものの、モンゴルが極東ユーラシア領域圏に加入する可能性もなくはない。
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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第16回)

2024-03-14 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

二 汎東方アジア‐オセアニア域圏

(13)沖縄諸島

(ア)成立経緯
日本の沖縄県が分立し、独立を回復して成立する統合領域圏

(イ)社会経済状況
世界共同体憲章の軍備廃止規定に基づき米軍基地が完全撤去されることにより、基地依存経済から脱却し、独自の経済計画に基づく工業が発展する。基地の撤去により農地も拡大され、独自の農業も発展する。日本領域圏とは経済協力協定を締結し、経済的な相互関係が維持される。

(ウ)政治制度
広域自治体である数個の地方圏及び単独で地方圏相当の地位を持つ政治代表都市・那覇市に区分される。南太平洋合同領域圏の招聘領域圏としても、オブザーバを送る。

(エ)特記
旧版では沖縄諸島領域圏をアジア‐太平洋諸島合同領域圏の中に包摂していたが、広汎にすぎるアジア‐太平洋諸島合同領域圏を太平洋諸島合同領域圏に変更したことに伴い、沖縄諸島を単立の領域圏とした。

☆別の可能性
日本領域圏から分立せず、日本領域圏内の地方圏(「道」:下記参照)または高度な自治権を持つ特別地方圏(特別道)にとどまる可能性もある。

 

(14)日本

(ア)成立経緯
主権国家日本国をおおむね継承する統合領域圏。ただし、沖縄が分立する一方、北方四島が返還・編入される。

(イ)社会経済状況
主権国家時代の資本主義経済体制下で確立された工業を基盤に、持続可能的計画経済が構築される。担い手不足から縮退を続けていた農漁業も、計画経済の導入により再興され、食糧自給率が回復する。

(ウ)政治制度
主権国家時代の都道府県を整理統合した広域自治体である10数個の「道」に区分された統合領域圏として再編される。主権国家時代は連邦国家ではないにもかかわらず、二院制であったが、革命後は全土民衆会議の一院制に転換する。なお、天皇は一般公民化され、称号のみの存在となる。北方四島は北海道とは別途、ロシア系住民を含む北方特別行政区として、日本語とロシア語の双方が公用語に指定される。

(エ)特記
地震災害が繰り返される地質条件のため、全土レベルの民衆会議(全日本民衆会議)が置かれる政治代表都市は直下型地震が想定される東京ではなく、津波を含めた災害リスクが相対的に少ない内陸部に設置される。一方、東京都は現行23区部の東京特別市と市町村部に分割され、後者は神奈川県と統合された新たな「道」に編入される。

☆別の可能性
旧制固守的な政治風土ゆえ、日本には連続革命が及ばず、旧来の主権国家体制が残存する可能性もある。その場合、沖縄だけが先行的な革命により分立する可能性がある。一方で革命により日本領域圏が成立しても、沖縄が分立しない可能性は上述した。また、北方四島の返還は後述する極東ユーラシア領域圏のロシアからの分立いかんにかかる可能性が高い。

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