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共産論(連載第59回)

2019-07-16 | 〆共産論[増訂版]

第10章 世界共同体へ

(2)地球を共産化する

◇世界共同体の創設
 20世紀の東西冷戦時代に地球共産化などと口走れば西側諸国諜報機関の監視対象リストに載ったであろうが、今日ではさすがにそんなこともなくなったであろう(と願う)。
 そこで、今こそ言えることであるが、ドミノ革命によって地球全域を共産化することができるし、そうすることが、この地球そのものを存続させるためにも必要である。特に環境的持続性を保障するためのグローバルな環境規準を達成するには、各領域圏レベルのみならず、地球全域での計画経済が導入されなければならない。
 加えて、公的部門における二酸化炭素排出量にかけてはトップ級の各国常備軍の廃止、それとほとんど同義である戦争の地球規模での放棄―戦争はそれ自体が環境破壊活動でもある―も実現されなけれならない。
 こうしたことを可能にするのが、すでに各所で言及してきた世界共同体の創設であり、これこそが世界連続革命の最終到達点でもある。

◇世界共同体の基本構制
 世界共同体=World Commonwealthは現行の国際連合(国連)=United Nationsと類似する点もあるが、政治的な面で決定的に異なるのは国家主権という観念が―従って、そうした主権を保持する主権国家も―揚棄されることである。
 現行国連はこれに加盟する主権国家の連合体という構制を特色とすると同時に、まさにそこに大きな限界がある。各加盟国には各々自国の利益(国益)のために行動する権利が留保されている以上、国連総会の単なる決議はもちろん、国際法の性質を持つ国連条約にすら批准の義務はなく、その批准は加盟国の国家主権・国益の名の下に選択される。時に批准した条約すら順守しない国家もある。
 これに対して、世界共同体の下では主権国家が揚棄されて、各「国」は世界共同体に包摂された「領域圏」として一定の領域内での自治的な施政権を保持するが、その施政権は世界共同体憲章(世界憲法)及びそ諸条約(世界法律)とに完全に拘束されるのである。
 こうした構制を採ることによって、歴史上戦争原因のナンバーワンを成してきた「領土問題」も消滅する。なぜなら、各領域圏はもはや排他的な「領土」を保有せず、ただ相対的な施政権が及ぶ「領域」を保障されるだけだからである。
 もっとも、その「領域」の範囲をめぐる紛議は存続し、また新たに発生もし得るが、そうした「領域紛争」はすべて世界共同体直轄の紛争調停機関を通じてのみ平和的に解決されるようになるのである。
 ちなみにこのような世界共同体の公式名称は、その統一公用語(暫定)となるエスペラント語でMonda Komunumo(モンダ・コムヌーモ)とするが、その意義については次節で改めて触れる。

◇グローバル計画経済
 さて、世界共同体が現存国際連合と最も決定的に異なるのは、経済的な側面においてである。国連はあくまでも諸国家の政治的な連合体に過ぎないのに対し、世界共同体の本質は地球全体をカバーする統一的な経済主体である。
 すなわち現在は基本的に内政問題として各国の主権に委ねられている経済政策のグローバルな統一が可能となる。具体的には、まさしくグローバルな規模で商品生産と貨幣交換が廃され、共産主義的な計画経済と補完的な経済協調とに置き換わるのである。
 その目的のために世界共同体の直轄専門機関として「世界経済計画機関」が創設され、環境規準を踏まえた世界レベルでの生産計画目標が提示される。
 もう少し立ち入って述べると、世界経済計画機関とは、二酸化炭素その他の有害物質排出規制上特にターゲットとなる環境負荷的な産業分野を中心に各領域圏の生産事業機構を統合化したうえで(例えば世界鉄鋼事業機構体、世界自動車工業機構体等々)、それらの生産事業機構体が共同してグローバルなレベルでの経済計画を策定・実施する機関であって、各領域圏における経済計画会議の世界版と考えればよい。
 こうしたグローバルな経済計画は地球全域での生産活動の大枠(キャップ)を設定する意味を持つ。これによって各領域圏ごとの個別的経済計画の裁量性がゼロになるわけではないが、こうしたキャップ制が確立された暁には、各領域圏の経済計画はこのキャップの枠内での自主的な割り当て(クォータ)として機能するようになるであろう。
 このような世界レベルでの計画経済は同時に、各領域圏が自足できない財・サービスを可能な限り近隣から調達する(例えばアフリカの自動車はアメリカや日本からではなく、より近隣の欧州から調達する)ための地域間経済協調の意義をも担う。
 さらに、一般的経済計画とはなじまない食糧・農業分野の経済協調機関として、現行の「国連食糧農業機関」を継承・発展させた直轄専門機関「世界食糧農業機関」も創設される。これにより、現在「自由貿易」の名の下に国際資本に取り込まれようとしている食糧・農業を奪還することができる。
 このようにして今日世界貿易と呼ばれている国際商取引が消失することは、グローバル資本主義を特徴づける巨大な国際物流輸送を大幅に減少させ、二酸化炭素の排出規制にも寄与するであろう。
 最後に、地球共産化は天然資源の持続可能な管理に関しても画期的な貢献をなし得る。すなわち、共産主義の下で土地とともに無主物化される天然資源をグローバルなレベルで採掘・管理し、公平に供給するために直轄専門機関「世界天然資源機関」が創設される。また生物全般にとって死活的な天然資源である水の保全とその衛生的かつ公平な供給のため「世界水資源機関」を別途創設することも検討に値するだろう。
 この施策によって、地球環境に配慮された集約的な天然資源管理が実現し、資源ナショナリズム/資源資本主義の弊害が克服されるのである。

◇共産主義の普遍性
 ところで、地球共産化などと聞けば、果たして文化的な風土も経済的・社会的な発展の度合いも異なる世界の諸民族を一つの共産主義の傘の下に統合することなどできるのだろうかという疑念が浮かぶかもしれない。
 これに対しては、共産主義とは特定の文化モデルや発展モデルを押し付けるものではなく、生産と労働を軸とする社会運営のシステムの一つにすぎないから、資本主義システムがかなりの普遍性をもってグローバルに広がってきたのと同様に、否、それ以上に共産主義システムも普遍的な広がりを見せることは十二分にあり得ると答えておきたい。
 特に、貨幣支配から解放されることは、おそらく世界のどの民族にとっても朗報となるものと確信する。依然として解決しない地球の南北格差問題、そして近年顕著化してきた南南格差問題に象徴される諸民族間の著しく不均等な発展も、煎じ詰めれば諸民族間の貨幣の持ち高の格差を反映するものにほかならないからである。
 そのような意味で、人類は様々な違いを備えた「諸民族」であり、かつ、それ以前に、共に共産主義を目指す普遍的な「民衆」たり得るのである。


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