黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『随時見学可』大竹昭子(みすず書房)

2009-07-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
予定をたてずにだらだらと過ごすのにうってつけなのは、ハワイ島のナナの家。
そこへ文庫本を2冊持って出かけ、読み終えた後は、いろんな人が置いていった本が並べられた書棚を発掘してみる。そこで谷譲次の本を見かけ……『本棚の奥の放浪者』、
友人・ノエの父が病気の為、家の留守番を引き受けることになった。その家は彼女の叔父が設計した変わった家だが住みにくく、1,2階は事務所で、3階に彼女が住んでいる。愛犬・ジュリの世話をしているところに、ノエからは病状を知らせるメールが届く……『ハウスシッター』、
下の階に住む女性が部屋に乗り込んできた。彼女の部屋が水浸しになり、水を出しっぱなしにしていないかというのだが、そんな心当たりもない。やがて原因は見つかるが……『水のゆくえ』、
手先を使い、生き物相手の仕事ががしたいと、高田馬場のマンション内で、タイ式マッサージヌアボーランで働いている。以前はトリマーをしていたのだが……『タイ式マッサージ』、
突然むしゃくしゃして蔵書を古本屋に売り払ったものの、その時に手放したモロッコのマラケシュの迷路について解説したマニアックな本が、ある企画を出すために入り用になった。古本屋でそれを無事探し出したが、そこには自分が引いた覚えのない鉛筆のラインが引かれ、“3月4日、きつねづか公園で。ルビー”と書かれたメモが挟まれていて……『狐塚公園』、
古い木造アパートの一室を仕事場にしているプログラマー。ちょっとした出来心から、スナネズミを飼いはじめたが、すっかり夢中に。今では、ネズミたちが齧るため、部屋は傷だらけだが、引っ越す気にはなれない。
ある日、アパートの管理を代行している不動産屋の男を話した時に、大家が代わるかも、といっているのを聞いたが……『木造モルタル』、
夫の影響でミステリーを読み始めた妻だったが、やがて夫が病死。本があればそれも乗り切れると思っていたのだが、ひとりになってからというもの、恐怖を覚えなにひとつ読めなくなってしまった。アルバイトの青年を雇い、自分が本を読む間、傍らにいてもらうことに……『ミステリー・ファン』、
<ドクター・サライの毒食らわば皿まで>というサイトを開設し、小説を発表している歯科医師・皿井均。
ある時、友人・橋爪から皿井のサイトが他のサイトで紹介されていたという話を聞く。そのサイトを見に行くと、小説に登場した怪獣コレクターを引き合いに出していた。
そのサイトにはカウンターが設置されており、“10000のキリ番をゲットした人には福袋を用意してます”という言葉が。それを見た皿井は、意地悪な気持ちから何かしかけてやりたくなり……『キリ番ゲット』、
取引先との打ち合わせの帰りに見つけた、ある建物。
築30年は経っていそうなほど古いのに、<入居者希望 随時見学可>と書かれた看板がかかっていた、オリーブグリーンのマンション。気に入って、その足で部屋を契約に行き、妻には内緒の隠れ家に。
会社帰りに立ち寄り、楽しむ日々を送っていたが……『随時見学可』、
ぎりぎり34歳の年に夫と結婚し、気がつけば17年。これまでの出来事を振り返りつつ、町を歩き……『ゴミ入れや浴室マット』の10編収録。

ちょっと不思議な雰囲気の漂う短編集。
それぞれある人物の語りなのに、徹底して“わたし”という言葉が出て来ないところが面白いかも。
物語を構成している空間のディテールが緻密。

<09/7/2>



最新の画像もっと見る

コメントを投稿