黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』大江健三郎(新潮社)

2007-12-03 | 読了本(小説、エッセイ等)
ノーベル賞も受賞した小説家である“私”は、息子・光のリハビリを兼ねた散歩中、30年ぶりに大学時代の友人・木守有と再会する。
30年前…1975年、映画プロデューサーであった木守は、国際派女優のサクラ・オギ・マガーシャックを伴って私の元を訪れた。そんな彼女を見た私は茫然とする。私は、戦後まもない高校生の頃、松山でポーの“アナベル・リイ”の詩を元にした8ミリ映画を観ていたが、そこに出演していた美少女が彼女だったからだ。
木守は、博労・コールハースの叛乱を描いた小説……クライストの『ミヒャエル・コールハースの運命』を彼女の主演で映画化するという計画を持ち掛け、そのシナリオを私に依頼する。
やがて私の故郷に伝わる一揆の“メイスケ”と“メイスケ母”の話、そしてそれを私の母が演じていたことにサクラさんが興味を抱き、撮影予定の映画の内容はそちらへと傾いてゆく。
しかし、その矢先スタッフのスキャンダルが明るみになり、また、ある理由から彼女も精神的ダメージを受け、計画は頓挫していたのだった。
そして今再びその計画が動き出し……

たまたま見た新聞のインタヴューによると、テーマは『恢復』だとか。
無削除版をサクラさんに見せる決断をした木守。その行為は残酷であるけれど、30年の時を経て、また立ち上がったサクラさんに人間の根源的な強さを感じました。
タイトルは日夏訳の『アナベル・リイ』から。

<07/12/3>



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