黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『荒野』桜庭一樹(文藝春秋)

2008-06-17 | 読了本(小説、エッセイ等)
幼い頃に母を亡くし、北鎌倉の古い家で、絶えず女性の影が付きまとう恋愛小説家の父・正慶と年齢不詳の若い家政婦・奈々子と共に暮らしていた、少女・山野内荒野、12歳。大人、以前。
4月5日…中学の入学式の日に乗った電車で、セーラー服がドアに挟まれ、困っていた荒野を助けてくれたのはひとりの少年だった。そんな彼が読んでいたのは、五木寛之の『青年は荒野をめざす』。声をかけようとした荒野の前から立ち去ってしまったが、その後、新しい中学校で同級生として再会する。しかし彼……神無月悠也は、荒野の名を知った途端、何故か冷たい態度を取るのだった。
美人な田中江里華や、ボーイッシュな湯川麻美という友人たちにも恵まれ、中学校生活にも慣れ始めた荒野は、ある日コンタクトレンズを見に行く為、悠也の祖父が営む眼鏡屋を訪れた。そこには彼の母もいたが、荒野に対して微妙な態度を示す。
そして梅雨が始まり、奈々子が家を去った。代わりにやって来たのは、神無月母子……父と悠也の母・蓉子が再婚することになったのだった……『第一部』、
荒野、13歳~14歳。大人になる、すこし前。
アメリカにひとり留学してしまった悠也と、手紙を通じて近況を報告し合う荒野。
一方、学校では目立つ存在である2人の友人たちとは、相変わらず仲が良いが、どうやら江里華には密かにファンクラブができているらしい。
やがて男子と話すことが苦手な荒野にも、気軽に話せるクラスメイトができた。クラスで男子とも女子とも仲の良く、両者の橋渡し的存在である阿木慶太である。
そんな中、蓉子のお腹に赤ちゃんができたことがわかり……『第二部』、
荒野、15歳~16歳。
山野内家に新たな命が誕生していた。荒野の妹・鐘である。
アメリカからの帰国後も家には戻らず、東京の全寮制男子校に進学した悠也とは、月に1回か2回一緒に出かける仲に……一応、恋人どうしと言ってよいのだろうけれど、恋人というものについて、どちらもわかっていない。でも顔を合わせるとうれしいし、一人のときは悠也のことを考える。そんな関係だった。
そんな中、父がある賞を受賞するが、時を前後して蓉子の様子がおかしくなり……『第三部』を収録。

第一部と第二部は、ファミ通文庫で出版された『荒野の恋』の改題。
恋も知らない内気な少女・荒野の成長記録、というか“少女”という名の芋虫が、“大人”に近づき、さなぎに変わる過程の標本のようなお話。題材のセレクトが桜庭さんらしいですね~。
前作ほどのインパクトはないですが、どこか覚えのある感情を抱く荒野の姿に、ちょっと微笑ましかったり、懐かしかったり……。何だか彼女の行く末を見守りたくなります(笑)。

<08/6/17>


最新の画像もっと見る

コメントを投稿