黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『声、あるいは音のような』岸原さや(書肆侃侃房)

2013-11-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
かなしみがかなしくなくてくるしみもくるしくなくて熱だけのある
ふみふみと泣く子の夢を今日も見たふみふみとただふみふみと泣く
薄闇に(ほんとはね)って言いかけて、ふっと(ほんとう)わからなくなる
じゃんぐるじむうごけないよまんなかでぼうにからまるくつしたのよう
遠い夏くすりの糖衣をなめました 苦いところにとどくすれすれ
声だった、とても静かな声だった。楡の木蔭の泉のような
オルガンの和音をさがすでたらめな幼いゆびを母は咎めず
少年が昆虫図鑑をめくりゆく音が響いて木の図書館は
家かしら、ここ。部屋のまま、漂流してる。梨とわたしと子猫をのせて
ひっそりとなにかが終わり夜があける名づけられない世界を生きる

新鋭短歌シリーズ。
どこかしずかなさみしさのようなものが底辺に漂っている歌が多いような気がします。「ふみふみと~」の印象が強く残っているのか、親にはぐれた子どもの寄る辺なき悲しみような…。
特に、笹井さんとお母様との突然のお別れのあたりの流れが痛い…;;

<13/11/6>