古き都の南、崩れかけた楼門の袂で、時折、笛を吹く若い男がいた。
笛の名手だった貴族を父に持つが、その屋敷の下女だった母は厄介を避けるためその事実を伏せ、陶工に預けられた彼。
その音色を耳にして鬼が現れ、男に美しい女を与えた。しかし元々が死骸であるため、まだ魂魄が定まっておらず、人語は解するが、心はないという。男は、百日経つ前に触れると元に戻ってしまうという彼女とともに暮らすことになったのだが、その美しさが人々の評判を呼び……『鬼の笛』、
東南の森に棲む白狐は、自慢の琴を弾き鳴らし暮らしていた。自然界の掟を破り、自分が死んだら、琴と一緒に埋めてほしいといっていた彼女。古ムジナはそんな白狐の不可解な心を知るべく、街に降りたった。
そこでイタチ男と出会った古ムジナは和尚に化け、彼とともに古寺に住みついた。
最初は遠巻きに見ていた村人も、あるきっかけで和尚を慕うようになるが、彼自身は未だ目的を達していなかった。
そんな中、村人から疎まれている娘と親しなったが……『ムジナ和尚』
山で、天狗の頭目・梁星と出会った大臣の姫。
その後、たびたび遊びに出かけていたのだが、やがて父の命令で入内が決まり、帝の后となることに。梁星は、姫に懐刀を渡し、それを抜いたら彼女の前に現われると告げる……『天つ姫』、
村に雨をもたらす龍神を彫って欲しいと頼まれた、名人の男。
見たものしか彫れないという男に、村の和尚は、山奥に龍が棲んでいるといわれる淵の話をする。
そこまで出かけていった男は、その近くに住んでいるという女と関係を持ち……『真向きの龍』、
山で拾われ育ったが、先を見通せる性質ゆえに行く先々で疎まれていた少年・吉弥は、ある理由から、働いた店への盗人の引き込み役を引き受けた。
しかし番頭頭らに見つかり追われて、逃げ込んだ社で捕えられたところを、巫女姿の女に助けられ、竹の水を渡される。
その後、榛ら盗人にも追われた吉弥は、何故か酒に変わっていた、その水により再び救われる……『青竹に庵る』、
染屋の男・柳に養われている少女・紅。
番頭頭・留造が取り仕切っている、都で名の知れた織屋・宮津屋には子どもが消えるという噂があった。柳は、むかし宮津屋の前に捨てられたところを拾われて、留造とは旧知の仲であるらしい。
ある日、糸を届けに宮津屋に出かけた紅。そこにある織物に夢中になっていると、女中が“お繭様”にさらわれるから、早く日が暮れる前に帰るようにという。だが忠告を忘れ、うっかり長居してしまった彼女が出会ったのは真っ白な子供だった……『機尋』の6編収録。
妖怪にまつわるお話を描いた短編集。
『おとぎのかけら』が西洋童話モチーフだったので、その対極というか、日本の昔話版的な雰囲気。
『鬼の笛』は(作中では明言はしていないけれど)、笛は葉二つで、源博雅の息子、という設定っぽい。
<11/9/11,12>
笛の名手だった貴族を父に持つが、その屋敷の下女だった母は厄介を避けるためその事実を伏せ、陶工に預けられた彼。
その音色を耳にして鬼が現れ、男に美しい女を与えた。しかし元々が死骸であるため、まだ魂魄が定まっておらず、人語は解するが、心はないという。男は、百日経つ前に触れると元に戻ってしまうという彼女とともに暮らすことになったのだが、その美しさが人々の評判を呼び……『鬼の笛』、
東南の森に棲む白狐は、自慢の琴を弾き鳴らし暮らしていた。自然界の掟を破り、自分が死んだら、琴と一緒に埋めてほしいといっていた彼女。古ムジナはそんな白狐の不可解な心を知るべく、街に降りたった。
そこでイタチ男と出会った古ムジナは和尚に化け、彼とともに古寺に住みついた。
最初は遠巻きに見ていた村人も、あるきっかけで和尚を慕うようになるが、彼自身は未だ目的を達していなかった。
そんな中、村人から疎まれている娘と親しなったが……『ムジナ和尚』
山で、天狗の頭目・梁星と出会った大臣の姫。
その後、たびたび遊びに出かけていたのだが、やがて父の命令で入内が決まり、帝の后となることに。梁星は、姫に懐刀を渡し、それを抜いたら彼女の前に現われると告げる……『天つ姫』、
村に雨をもたらす龍神を彫って欲しいと頼まれた、名人の男。
見たものしか彫れないという男に、村の和尚は、山奥に龍が棲んでいるといわれる淵の話をする。
そこまで出かけていった男は、その近くに住んでいるという女と関係を持ち……『真向きの龍』、
山で拾われ育ったが、先を見通せる性質ゆえに行く先々で疎まれていた少年・吉弥は、ある理由から、働いた店への盗人の引き込み役を引き受けた。
しかし番頭頭らに見つかり追われて、逃げ込んだ社で捕えられたところを、巫女姿の女に助けられ、竹の水を渡される。
その後、榛ら盗人にも追われた吉弥は、何故か酒に変わっていた、その水により再び救われる……『青竹に庵る』、
染屋の男・柳に養われている少女・紅。
番頭頭・留造が取り仕切っている、都で名の知れた織屋・宮津屋には子どもが消えるという噂があった。柳は、むかし宮津屋の前に捨てられたところを拾われて、留造とは旧知の仲であるらしい。
ある日、糸を届けに宮津屋に出かけた紅。そこにある織物に夢中になっていると、女中が“お繭様”にさらわれるから、早く日が暮れる前に帰るようにという。だが忠告を忘れ、うっかり長居してしまった彼女が出会ったのは真っ白な子供だった……『機尋』の6編収録。
妖怪にまつわるお話を描いた短編集。
『おとぎのかけら』が西洋童話モチーフだったので、その対極というか、日本の昔話版的な雰囲気。
『鬼の笛』は(作中では明言はしていないけれど)、笛は葉二つで、源博雅の息子、という設定っぽい。
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