始めに話題になった分散コンピューティングというと、seti@Homeが上げられます。これは何かと言いますと、通常、PCのCPUパワーが常に100%で動くことはありません。つまり、計算能力のリソースは常に余っている状態なのです。そこで、家庭のPCに専用のソフトウェアをインストールしてもらって常駐し、ダウンロードしてきたデータを処理しようというのです。つまり、世界中のPCをネットで繋げて余ったリソースをまとめることで、1台のスパコンのように使おうという仕組みです。
この仕組みは、近年ではゲノムの解析や新薬の開発など、途方もない処理能力が求められるプロジェクトに受け継がれており、PS3でも同様のプロジェクトが立ち上がったことが一時期話題になりました。
これらは、「宇宙開発のため」「ゲノム解析による研究のため」など、割と公益性の高いものに使われてきましたが、ここに来て、なんだかずれたモノが出てきました。
NTTデータなど3社、分散コンピューティングによるCGアニメ制作プロジェクト Nikkei Treandy Net
NTTデータは11月15日、ゲーム用ソフトの企画・開発を行うWHIRLWINDと、CGコンテンツの企画・制作などを手がけるイージアと共同で、分散型コンピューティングを使ってデジタル・ハイビジョン対応アニメーションを制作する実証実験を開始した。一般から広く参加者を募り、参加者のパソコンで手分けをして画像処理(レンダリング)を行う。
NTTが手がけるサイエンスやエンターテイメントの分散コンピューティング事業の一環だそうですけれど・・・
タイトルでも書きましたけれど、一般から無料でリソースを集めてきて、やることは「HDアニメ」というのは、なんだか違う気がします。確かに、興味を引くのはいいかもしれませんから、人を集めてのグリッドネットワークの実験にはいいかもしれません。しかし、できあがるのが「一過性の特殊な商品」で、最終的に企業が利益を独占するようなものだと、他人の善意を集めた分散コンピューティングでやる意味が果たしてあるのかと思うわけです。
新薬もそうかも知れませんけれど、アニメよりは現実的に人を救うことになるでしょう。ゲノムの研究にしたって、医療や生物学の未来を開くかも知れません。公益性という観点から言えば、今回のプロジェクトとは段違いだと考えています。
嫌なら参加しなければいい訳で、私はそのとおり参加しないわけですけれど・・・なんとなーく、こういうお金の匂いがするプロジェクトに、こういう技術は使って欲しくないなあ、と変にもやもやとした気分になってしまいました。
考え方は人それぞれ。参加するもよし、成果だけ見るのもよし、華麗に無視するもよし。とりあえずWebサイトにだけリンクを張っておきます。