成功者といえど、常に失敗を避けて来られたわけではありません。
歴史の偉人を見てみても、織田信長は志半ばで明智光秀の謀反に会いましたし、アインシュタインは宇宙の膨張を否定する余り「宇宙項」を作り、量子力学の不確定性も否定しました。エジソンの晩年の発明はどれもぱっとしませんでしたし、田中角栄も最後はスキャンダルでその政治生命を終えました。もうちょっと身近な例だと、2007年のクラブワールドカップ3位に輝いた浦和レッズは、Jリーグ設立当初は「お荷物」と言われていたのです。
要するに、常に順風満帆にいくなんてことなんて、よほどのことが無い限りはあり得ないと言うこと。コンピューターの世界でも、IBMはOS2の舵取りを完全に失敗した過去がありますし、マイクロソフトだって独占禁止法には相当痛い目を見ています。後、Meとか。アップルは・・・OS Xが出来るまでのOSは、今となっては黒歴史かも。
そして、ネットの巨人Googleにしてもそれは同じこと。Googleが提供してきたサービスの中で、さっぱり使われていないものも数多く存在します。輝かしい成功と、センセーショナルな出だしのおかげで忘れ去られているだけの話。
そして、今回開始するサービス”knol”も、その道をたどるのかも知れません。
[WSJ] Google版Wikipediaは成功するか ITmedia
非公開テスト中のこの新プラットフォームでは、ユーザーはさまざまなテーマについての写真と解説を掲載したWebページを作成できる。このページは「unit of knowledge」を表す「knol」と呼ばれるとGoogleは述べている。
Googleの公式ブログの発表で、エンジニアリング担当副社長のウディ・マンバー氏は、特定のテーマに関するknolは、「そのトピックを初めて検索する人が最初に読みたいと思うような内容になる」としている。現在は、Wikipediaがインターネットで情報を検索する多くの人に対してそのような役割を演じている。
Googleは、科学、医療情報、地理、歴史的出来事、エンターテインメント、ハウツーなど幅広いトピックについて、インターネットユーザーに知識を共有するよう奨励することが目的だとしている。読者はコメントや質問、編集案を提出したり、レーティングやレビューもできる。
ちょっと引用が長いですけれど、要するに執筆者にリターンがあるWikipediaを作成する事を、Googleは狙っているようなのです。
しかしながら、このサービスはWikipediaと決定的に違う点があります。
「執筆者にリターンがある」と言うのがこのサービス最大のウリになるわけですけれど、逆に言えば、執筆者を特定するために、その項目のページは執筆者しか触れないことを意味します。要するに、Googleの新サービスが提供する「知識」というのは、単なるブログの1エントリに過ぎないわけです。Wikipediaの最大の特徴である「不特定多数の共同執筆による自浄作用」が全く働きませんし、同じような、いや全く同じ見出し項目の乱立だってあるでしょう。これでは知識の共有と言うよりも、単なるアフェリエイト情報サイトでしょう。
危惧されるのは、このサービスがGoogleの提供するサービスだと言うこと。
同氏は、執筆者が希望すればknolのページに広告を配信し、「広告収入のかなりの部分」を執筆者に分配するとしている。このことが、Googleが広告付きのknolを、Wikipediaの広告のないページよりも(検索結果で)上位に置くことに関心を持っているのではないかとの懸念が生じている。
当然のごとくGoogleは否定していますけれど・・・個人的には、事件や人物、商品について、とうてい「中立な」記事が望めそうのないknolがWikipediaよりも検索結果が上位に来てしまいかねないことは、非常に嫌です。
現時点での予想としては、knolはWikipediaを正確性では決して抜くことは出来ないと思われます。また、例え正確な記事があったとしても、たくさんの同種の記事からユーザーが選び出さなくてはなりません。それならば、私は淘汰が日常的に進んでいるWikipediaを選びます。
まあ、まだまともに始まっていないサービスについてあれこれ否定的に言うのも何ですが・・・knolはgoogleの黒歴史になるだろう、個人的にはそう思っています。希望的観測も込めて。