Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

Intelの描くシームレスなコンピューティング体験は日本にはやってこない

2010-09-15 20:33:15 | Thinkings

 9月13日から3日間、Intel Developer Forum(IDF)が開催されました。Intelは、言わずと知れたPC・サーバー向けプロセッサのトップベンダー。IDFはIntel製品のいわゆる見本市であり、そのままPCとその周辺の未来をダイレクトに占う場でもあります。

 今年はメインストリームであるCoreシリーズの新しいバージョン「Sandy Bridge」のお披露目がひときわ目を引いたようです。グラフィックスコアとの融合を標準化する事で、よりGPGPU(GPUによる”グラフィックス用途以外の”演算処理)を気軽に扱えるようにするなどの、ソフトウェア側へのアプローチが提案されていました。

 さて、Intelは今やCPUだけでなく、チップセットや無線LAN、GPUはもちろん、セキュリティやOSそのものにまで手を広げる総合的なプラットフォーマーに変貌を遂げようとしています。IDFの冒頭で行われたポール・オッテリーニCEOの基調講演もそれを示唆するような内容でしたが、それを聞いて日本の現状に警鐘を鳴らすようなコラムが「元麻布春男の週刊PCホットライン」に書かれていました。

IDFの基調講演に思う日本コンテンツのガラパゴス化 PC Watch

 このスピーチを聞いて気になった、特に日本人として気になったのは、ユーザーによるシームレスなコンピューティング体験、という部分だ。米国で最もシェアの高い(世界規模でも最もシェアの高い)音楽配信サービスは、間違いなくiTunesだが、ユーザーは(Apple製品に限られるという制約はあるにせよ)iTunesで購入した楽曲を、Mac、Windows、iPod、iPhone、iPadなどさまざまな機器で利用できる。世界最大の電子書店であるAmazonのKindleは、購入した書籍を、最大6台までのデバイス、PC/Mac、Kindle端末、iPad/iPhone等で自由に利用できる。つまりユーザーはDRMのかかったファイルを購入しているのではなく、音楽を聴く体験、書籍を読む体験を購入しているのである。だからこそ、これらのサービスではDRMも、シームレスな体験を極力妨げないようにという配慮がなされている。100%ではなかったとしても、DRMでユーザー体験を損なわないようにしようという意志が感じられる。

 ここで筆者は、日本のDRMの現状・・・デジタルコンテンツにはあまねくコピー制限がついて回り、自分で録画したテレビ番組も自由に扱えない事について、今のコンテンツビジネスが「ユーザー体験」ではなく、「既得権益の保護」ありきになっている事を指摘しています。

 誰が為のコンテンツか?アメリカでは「ユーザーに使ってもらっている」。日本では「ユーザーに使わせてやっている」。こんな殿様商売を維持するために、家電メーカーはかけたくもないコストをかけて、コンテンツ保護の仕組みを実装した「日本でしか使えない機械」を量産し、日本の中だけでパイを奪い合っている・・・こんな悲しいことがあるか!?という筆者の嘆きが聞こえてくるようです。

 Intelが思い描くようなシームレスなコンピューティング体験は、コンテンツの囲い込みが続く日本では夢のまた夢でしょう。それを今やろうと思ったら、法律的にグレーなことを、手間暇かけてやらなきゃいけない。これは一般人には無理なこと。
 まず、ユーザーの意識を、そして既得権益者の意識を変えなければ、日本のコンテンツに未来なんてなさそうですが・・・最大の問題は、その意識改革を最も阻害しているのが、大きな発言力をもつマスコミ自身であると言う事なんでしょうねえ。