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【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】1-9 経世済民 経営者に求められる率先垂範 世の中を立派に治め、国民の苦しみを救う政治家

2024-06-01 12:03:00 | 【心 de 経営】 経営四字熟語・名言

  【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】1-9 経世済民    経営者に求められる率先垂範 世の中を立派に治め、国民の苦しみを救う政治家 

 

 
  四字熟語というのは、漢字四文字で構成された熟語であることはよく知られています。お恥ずかしいながら、その四字熟語というのは、すべてが中国の故事に基づくものとばかり思っていましたが、実はそうではないことを発見しました。
 経営コンサルタントという仕事をしていますが、その立場や経営という視点で四字熟語を”診る”と、今までとは異なった点で示唆を得られることが多のです。「目から鱗が落ちる」という言葉がありますが、四字熟語を講演や研修の場で用いたり、自分の仕事や日常会話に活かしたりするようにしましたら、他の人が私を尊敬といいますとオーバーですが、自分を見てくれる目が変わってきたように思えたことがあります。
 四字熟語の含蓄を、またそこから得られる意味合いを噛みしめますと、示唆が多いですので、企業経営に活かせるのではないかと考えるようにもなりました。これを「目鱗経営」と勝手に造語し、命名しました。
 以前にも四字熟語をご紹介していましたが、一般的な意味合いを中心にお話しました。このシリーズでは、四字熟語を経営の視点で診て、つぶやいてみます。以前の四字熟語ブログもよろしくお願いします。

■1-9  経世済民    経営者に求められる率先垂範
~ 世の中を立派に治め、国民の苦しみを救う政治家 ~


 社会生活をする上で、人の上に立ってリーダーシップを発揮しなければならない立場に立たされることがあると思います。人の上に立つというときに、「経世済民(けいせいさいみん)」という言葉も意識したいと思います。
「経」という文字は「経営」とか「経済」をはじめ私たちはしばしばこの「経」という文字を使います。「経」は、「きょう」と読めば「お経」を連想するように、仏様の説いた教えを記したものです。「けい」と読むと「ものごとの筋道(広辞苑)」を指します。
中国では「経」という文字をしばしば「治める」という意味で使い、ここでも上述とは異なって、「治める」という意味で使われています。「済」は「救済」という言葉にも使われますが「済」は「救う」という意味です。
 すなわち、「経世済民」とは、「世を治め、民を救う」と読むことができ、「世の中を立派に治め、国民の苦しみを救うこと」を意味しています。「安寧秩序(あんねいちつじょ)」の国、すなわち世の中が平和で、安心して生活できる秩序ある状態が持続するという四字熟語にも繋がります。また「五風十雨(ごふうじゅうう)」という四字熟語のように「穏やかな気候」ということから「世の中の平穏無事」を例える言葉もあります。
 逆に「苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)」は「税金や年貢の取り立てが厳しい」ことをいい、そのような過酷な政治、企業で言いますとブラック企業のような経営は慎まなければなりません。因みに「苛」は、苛酷という言葉にありますように「ひどい」という意味です。「斂」は、レンズの焦点に光が「収斂」するという言い方からも推量できますように、税金などを搾り取るようにして集めることです。「誅求」は「責めて求める」こと、すなわち厳しい取り立てをすることです。
 日本には「政治屋はいるけど、政治家はいない」ということを時々耳にします。その違いについては、私は良くはわかりませんが、ニュアンス的にはわかるような気がします。国民のことを考え、政府がリーダーシップをとれていない昨今の政府や国会議員をはじめとし、行政を司ったり、関係したりする人達は、全てがそうであるわけではないですが、概ね自分達の権力闘争に明け暮れしています。判断基準が自分達に有利になることにしかないように思えます。
 隣国の韓国では、政府・大統領が率先して国のICT(IT)化や海外展開を促進したり、外国との関係強化を図ったりしています。日本は、領海問題をはじめ多くのグローバル対応が迫られているにもかかわらず、国内外問題を無視しながら内向き思考の状況が続いていると言っても過言ではないです。「経世済民」をきちんと掲げ、地道に持続させ、国民が安心して生活できる「政治家」が出現しないものでしょうか。
「経世済民」は、政治だけの問題ではありません。これは企業でも言えます。経営者が社員のため、ユーザーのため、ステークホルダー(企業関係者)のために経営や管理をきちんとしていくことも経世済民に繋がるのです。
 余談になりますが「経済」という言葉は「経世済民」の短縮形であるとも言われています。
 本書別項でも挙げていますが、企業の経営者と話をしていてしばしば聞くことの一つに「うちの社員はダメ社員ばかりで、俺のいうことが少しも実行されない」などという嘆きの言葉です。
 「良禽択木(りょうきんたくぼく)」という言葉があります。賢者は賢君に仕えるともいいますが、できる社員はできる経営者を選んで仕えるということをこの経営者は忘れているのです。社員は、経営者の鏡でもあります。社員が良くないのは、経営者に欠陥があるのです。
「雲中白鶴(うんちゅうはっかく)」という四字熟語があります。天高く、雲が流れるところに飛翔する鶴は品格を感じます。このことから、「品性の優れた高潔な人」として例えるときに使われます。
「子は親の背中を見て育つ」と言われますが、社員は経営者をよく見ています。経営者が人格・人品に優れていれば、社員もいずれそれに感化されます。しかし、「率先垂範(そっせんすいはん)」をすれば社員が自然と良くなるというものでもないことも知っておきましょう。
 では、なぜ率先垂範をしても、良禽択木たることに繋がらないのでしょうか?
 一つには、社員が目標意識を持っていませんと、率先垂範が充分に効果を発揮しません。経営理念に基づく、経営計画、経営戦略を明確にし、それへの参画意識を持たせることにより目標意識が高まります。目標意識が高まりますと、経営者の人柄も目標の一つとなってきます。
「まじめで飾り気がなく、心身共に強くたくましい」、そのような人のことを「質実剛健(しつじつごうけん)」とか「剛健質実(ごうけんしつじつ)」、「剛毅木訥(ごうきぼくとつ)」といいます。「質実」は「飾り気がなく、まじめ」、「剛健」は「心や躰が強く、たくましい」ことをさします。
「剛毅」は「気力たくましく、屈しない」という意味から、意志が強く物事にくじけない人のことをいいます。「木訥」は「無口で飾り気がない」人を指します。「剛毅朴訥(ごうきぼくとつ)」や「剛毅朴吶(ごうきぼくとつ)」という漢字を用いることもあります。


 別項の「槐門棘路」も参照しながら、人の上に立つことの意義を考え、言動に注意して欲しいです。すばらしい経営者には、自然と優れた社員がついてきてくれるのです。
 コンセプトを構築するときに重要なのが、経営理念やビジョンなど、企業の根幹をなす哲学と整合性がとれていることが重要です。他人が何かを言いいますと、直ぐに自分の信念を曲げてしまう、定見を持たない、いわゆる「付和雷同(ふわらいどう)」型の人間では信頼されません。「雷同」は「雷が鳴ると万物がそれに応じて響く」という意味で、「むやみに他人の言動に同調する」ことで、「雷同付和(らいどうふわ)」ともいいます。
 類語として「唯唯諾諾(いいだくだく)」や「 党同伐異(とうどうばつい)」という四字熟語もあります。「唯唯」は「他人に逆らうことなく、言いなりになる」、「諾諾」も「自分の確たる考えを持たずに他人の意見や考えに同調する」ことをさします。このことから「唯唯諾諾」は「事の善悪に無関係に、他人に同調する」という意味で用いられます。
「党同伐異」は、「同じきに党(むらが)り、異るを伐(う)つ」と訓読みし、「伐異党同(ばついとうどう)」ともいいます。「ことの道理にとらわれず、自分の仲間に味方し、仲間と対立する相手を攻撃する」という意味です。
 それに対して「確乎不抜(かっこふばつ)」は「意志がしっかりしていて物事に動じない」ことを表します。「確乎」は「しっかりとしている」ことを指し、「不抜」は「抜けない」すなわち「しっかりしていて動かない」ことを指します。昨今では「確固不抜」という誤用が一部の人には容認される傾向があります。「乎」は、「状態を表す語に付けて語調を強める語(広辞苑第六版)」とあり、「確固たる」という表現も一般化していることから、容認の方向に向かうのかもしれません。
 類語に「狷介孤高(けんかいここう)」があります。「狷介」は、「がんこで心が せまく、人と調和しない(広辞苑第六版)」、「孤高」は、「ひとりだけが遠く離れて高い境地にいる」ことです。このことから、「自分の意志にかたくなに固執し、他の人と一線を画す」という、どちらかと言いますと、仲間はずれにされそうで、ネガティブなニュアンスを持っています。
 逆に「行雲流水(こううんりゅうすい)」は、「雲が漂い、水が流れるように自然の成り行きであるがままに行動する」という四字熟語もあります。「行雲流水」は、「諸国修行の禅僧」という別の用法があります。
「すぐれた経営者は、ビジョンを語る」ということがしばしば言われます。ビジョンとは、経営者の夢をある程度具体的な言葉にして表現したものかもしれません。たとえ現状から飛躍していても、その実現を信じることができるような未来像を、はっきりさせるために言葉で表現したものと言えるかもしれません。
 他者が賞賛するような、かっこいいビジョンを作ろうとする必要はなく、自分の詞で形にして行けば良いでしょう。しかし、せっかくビジョンを作るのでしたら、自分自身で納得できるビジョンを作りたいですね。
 世の中で、すぐれたビジョンと言われるものを見ますといくつか共通点が見られます。社員が自社に誇りを持ち、社員の気持ちが動くような魅力を持つ、社員を引き寄せる吸引力があります。そこには、経営者としての、未来に向けた考えたかや行動のあり方が述べられています。そのために、それを見た社員は、自分の未来を、自社の未来像に重ねて、一緒にやっていこうという参画意識を起こさせています。それが結果としてベクトルあわせから団結力に繋がり、変革の原動力となっています。
 企業というのは、「唇歯輔車(しんしほしゃ)」「輔車唇歯(ほしゃしんし)」の関係で運営されています。「唇歯」は、「唇と歯」のことでありますし、「輔車」は、もともとは荷車を支える骨木のことですが、ここでは「頬骨(ほおぼね)」と「下顎」のことです。このことから「利害関係が密で相互補完関係にある」、すなわち一方がダメになってしまうと他方もうまく行かなくなると言うことで、お互いに助け合う必要性を説く四字熟語です。「唇亡歯寒(しんぼうしかん)」も「唇がなくなると、歯が寒い」ということから同じような意味です。
 企業は、全社員がバラバラで統率のとれていない「烏合之衆(うごうのしゅう)」や別項にあります「四分五裂」の状態では、組織とは言えません。「規律も統制もなく、ただ寄り集まっているだけの集団(新明解四字熟語辞典)」、すなわち「烏(からす)」の集まりでは、バラバラでうまく行かないことをいいます。
「烏合之衆」によく似た表現に「有象無象(うぞうむぞう)」という四字熟語があります。仏教用語の「有相無相(うそうむそう)」という言葉が語源で、それが変化した「有象無象」になってしまったと言います。因みに「有相無相」は、「世の中に存在する有形無形のすべて」を指しますが、このことから「有象無象」、すなわち「種々雑多なものや諸現象」ということを意味すると解釈が変化してきているのです。
 ビジョンは、抽象的ではありますし、目標とか計画とかのように論理的に、行動のあり方を具体的に示していなくても、このような力を持っています。平素の実務の中で、ビジョン実現のために何をすべきか、その行動規範になる経営理念や戦略や計画などに繋がるようにして行くことにより「組織で動く」ことができる企業となるでしょう。
「経世済民」の企業でないと「易姓革命(えきせいかくめい)」が起こりかねません。史記に出て来るのですが、「天子の徳がなくなると人心が離れ、王朝が交代する」ということで「王朝が交代する」という意味です。王朝が交代すると、王室の姓が変わることから来ています。
 
 
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