落葉松亭日記

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北の水爆は嘘だった

2016年01月13日 | 政治・外交
北朝鮮の水爆実験が物議をかもした。が、どうやら水爆ではなかったらしい。
金正恩まだ33歳の青年。朝鮮民主主義人民共和国2500万人を率い食わしていかなければならない。
日・米・露・支那・中東との国際関係を勘案し経営するのは至難の業だろうが、核やミサイルで脅しては経済制裁を受ける繰り返す。発想の転換はないのだろうか。
小泉純一郎・金正日会談から早十数年、拉致された日本人は未だに帰っていない。
水爆実験、金第1書記が命令書に署名 「爽快な爆音」で新年を
2016年01月06日 22:39 発信地:ソウル/韓国
http://www.afpbb.com/articles/-/3072326

【1月6日 AFP】北朝鮮は6日、同国初の水爆実験を「成功させた」と発表したが、実験実施の命令は、3週間前に金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記が自ら署名していたと、同国国営テレビが伝えた。署名に添えられたメッセ―ジには、水爆の「爽快な爆音」とともに2016年を迎えると記されていたという。

 北朝鮮が同国初の水爆実験として小型爆弾の爆発実験に「成功した」とする発表は、同盟国・中国も含む近隣諸国を驚かせ、非難を巻き起こしている。

 北朝鮮国営テレビの報道は、12月15日の日付が入った金氏の署名の写しを映し出した。署名の横に書かれた直筆のメッセージには「初の水爆の爽快な爆音とともに、2016年を開始しよう。核強国、社会主義朝鮮、偉大な朝鮮労働党を全世界が仰ぎ見るように!」と記されていた。
 同放送はまた、1月6日の実験実施を最終的に許可する1月3日付けの第2の署名も映し出した。(c)AFP

米政府、北朝鮮の水爆実験発表を否定 「分析結果、一致せず」
2016年01月07日 07:01 発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/articles/-/3072358

【1月7日 AFP】米ホワイトハウス(White House)は6日、北朝鮮が初の水爆実験に成功したとの主張を否定した。

 ジョシュ・アーネスト(Josh Earnest)大統領報道官は、「初期分析の結果は、水爆実験成功との北朝鮮の主張とは一致しないものだった」と語り、「過去24時間以内に起きた出来事で、米国政府が北朝鮮の技術的・軍事的能力についての評価を変える要因となるものは、一切ない」と述べた。

 北朝鮮は国営テレビを通じ、現地時間の6日午前10時(日本時間午前10時30分)に初の水爆実験を成功裏に実施したと発表した。国営テレビは、「われわれはこれで核先進国に仲間入りした」と伝え、使用されたのは小型化された爆弾だったと説明した。

 アーネスト米大統領報道官によると、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、同日中に安倍晋三(Shinzo Abe)首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ、Park Geun-Hye)大統領と対応を協議する予定。 (c)AFP

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第220号(1月13日)
http://melma.com/backnumber_190875/

水爆に非ず。

 水爆実験というと特に、日本ではインパクトがある。米ソ冷戦初期にビキニ環礁で米軍が初の水爆実験を行い、第5福竜丸が被害にあった記憶が、いまだ鮮明なのだろう。だが精密誘導が可能になった現在、ピンポイントで敵の軍事拠点を攻撃すればよくなり、過剰殺戮の水爆は軍事的にも敬遠される兵器である。
 北朝鮮が水爆実験に成功したと喧伝したが、原爆より威力の小さな水爆がある訳もなく、相変わらず北朝鮮は、世界中の軍事関係者から失笑を買っている。もし、水爆なら失敗だったことになるし、そもそも水爆の開発目的は何なのか。

 水爆は原爆よりも大型化し、重量も増す。ミサイルの弾頭は小型軽量の方が、当然遠方に届くから、水爆など開発してもICBMの弾頭にして米国を攻撃するのは、ますます困難になる。
 今の北朝鮮の技術水準では重量1トンの核弾頭を弾道ミサイルに装着しても米都ワシントンには届かない。東京も多分無理で、ソウル、北京、ウラジオストックには確実に届く。つまり水爆開発の目的は北朝鮮の同盟国を攻撃する以外にはあり得ないことになる。

 そこで、北朝鮮はSLBMの実験写真を公開し始めた。潜水艦に核ミサイルを搭載して、米国近くまで密かに近付けば、ワシントンも攻撃可能になる。つまり「我々の攻撃目標はあくまで、ワシントンであって、北京ではありませんよ」と言い訳しているのだ。
 だが米大陸近くまで潜航するには、原子力潜水艦が必要だが、北朝鮮は原潜を持っていないし、開発しているとの情報もない。どうしても、北の攻撃目標は北京だとしか思えない。これで、中国に核開発の為の支援を要求したら、断られて当然だろう。

 冒頭に述べたように、水爆は開発経費が莫大で、しかも軍事的に必要な兵器ではない。恐らく北が水爆と詐って開発しているのはウラニウム型原爆だろう。これは構造が単純で開発が容易である上に、北朝鮮は天然ウランの産地なのだ。
 だがウラニウム型原爆も小型化出来ないから、やはりワシントンには届かない。核攻撃は敵の軍事中枢を破壊して反撃機能を奪わないと核報復されてしまう。ソウル、東京、ウラジオストックを核攻撃しても、ワシントンやモスクワが機能していれば核報復で平壌は壊滅してしまう  つまり北朝鮮が核攻撃可能なのは、やはり北京しかないのである。

 今の北朝鮮と中国の関係を、私はしばしば、銀行と暴力団企業に例える。事実上倒産している中小企業に銀行が融資しているとしよう。ところがその企業はじつは暴力団であって、融資を打ち切ろうとすると、銃弾が撃ち込まれるという構図は日本でもお馴染だろう。
 「拳銃だけじゃない、マシンガンだってあるんだ」と3代目がうそぶき、警察署長のケリーが支店長の王毅に「あんたの所で面倒を見ると言ったんだから、穏便に型を付けてよ」と囁いていると言った所か。

軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
動画配信中:「地図で見る第二次世界大戦」
http://www.nicovideo.jp/watch/1441391428
文庫新刊:「図解大づかみ第二次世界大戦」
http://www.kadokawa.co.jp/product/321502000376/
著書:
「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265 「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
監修:
「イラスト図解 戦闘機」
http://www.tg-net.co.jp/item/4528019388.html
「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
http://www.tg-net.co.jp/item/486298102X.html?isAZ=true
インターネット動画配信中:
「現代戦闘機ファイル」
http://www.nicovideo.jp/watch/1411697197
「よくわかる!ミサイル白書」
http://www.nicovideo.jp/watch/1383640409