i氏の海外生活体験記

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火の国、地熱発電に期待

2012-03-14 20:35:23 | 下北の地熱発電
3/14毎日新聞福岡版が伝えております。

-てんこもり九州・山口:「火山国」九州の再生可能エネルギー 地熱発電に期待 /九州-

 風力、太陽光、バイオマス……。昨年3月の東京電力福島第1原発事故を機に、再生可能な自然エネルギーへの関心が高まっている。地球の熱をエネルギー源として利用する「地熱発電」もその一つだ。安定電源として期待が高く、政府は利用促進に向けた規制緩和策の検討を進めている。火山の多い九州は、いわば「地熱王国」。だが、普及には壁もある。地熱が電気を生み出す現場を訪ね歩き、その将来性を探った。【阿部周一、黒澤敬太郎】

 ◇八丁原発電所、発電量年間平均約70%
 大分道九重インターチェンジを降り、標高1700メートル級のくじゅう連山へ続く山道を車で約40分。前日の雪が残る阿蘇くじゅう国立公園で、ひときわ白く濃い蒸気が丘の向こうから顔をのぞかせた。九州電力八丁原発電所(大分県九重町)。総出力計11万キロワットを誇る、我が国最大の地熱発電所だ。

 「去年から見学に来る方が多いんですよ」。秋好真人所長が出迎えてくれた。併設する展示館の来場者は10年に約3万3000人だったが、大震災があった昨年は4万人台に達したという。原発事故を機に高まる自然エネルギーへの関心が、ここにも表れている。

 八丁原発電所は2基の発電機を持つ。1号機(5万5000キロワット)は全国で5番目に古い77年に運転を開始。90年に同じ出力の2号機が完成した。

 発電所には稼働中の井戸が十数本ある。深さはいずれも約2000~2500メートル。その先は、マグマだまりで熱せられた300度近い高温の地下水の層「地熱貯留層」に達している。井戸を伝って噴き出す蒸気が発電用タービンを回している。発電の仕組みは基本的に火力と同じだが、違うのは、火力のボイラーに相当するのが、地熱の場合は「地球」というわけだ。

 蒸気と一緒に噴き出す熱水からも、熱水の圧力を下げることでさらに蒸気を取り出し、発電に利用。余った熱水は再び井戸で地下へ戻している。

 発電機が置かれた建屋は、天井が高い体育館のような建物。屋内をタービンの駆動音が包む。人の気配はほとんどない。運転管理は約2キロ離れた九電大岳地熱発電所から遠隔操作で行っている。

 八丁原は全国の地熱発電所の中でも「優等生」と評価される。最大の理由はその利用率の高さ。北海道や東北には計画出力に比べて実際の発電量が20%台にとどまる地熱発電所もあるのに対し、八丁原は年間平均約70%。どの井戸からどれだけ蒸気を取り出し、余った熱水をどの位置にいくら戻すかという「地下のコントロール」(秋好所長)がうまくいっていることなどが勝因だ。そのために、九電は地下水温を各所でモニタリングして、直接見ることのできない地熱貯留層を三次元コンピューターグラフィックスで再現し、将来予測に役立てている。

 八丁原の発電量を火力でまかなおうとすると年間21万キロリットルの石油が必要となる計算だ。巨大事故のリスクや二酸化炭素排出が少ない安定電源として期待は高まる。

 ◇中・小規模地熱が脚光、温泉地・霧島や小浜の取り組み
 八丁原発電所に代表される大規模地熱は数万キロワットの出力が得られる一方、技術的にもコスト的にも開発に困難が伴う。そこで今、脚光を浴びているのが、数千~数百キロワット単位の中・小規模地熱だ。

 日本有数の温泉地、霧島温泉郷(鹿児島県霧島市)の「霧島国際ホテル」は84年、地下400~250メートルから噴出する約140度の蒸気を利用した地熱発電設備を導入した。浴用に約40度まで冷まし、その際に発生する蒸気で発電タービンを回す。出力は20~50世帯分に相当する100キロワット。ホテルの電力の4分の1をまかなう。全国から見学者が訪れており、竹下卓・取締役営業部長は「設備費などのコストはかかるが、火山の恵みである地熱の力を知ってもらい、もっと普及してほしい」と語る。

 「日本一熱量の多い温泉」をうたう長崎県小浜温泉郷では、100度近い国内有数の温泉熱を利用し、今までくみ上げながらも捨てていた「未利用湯」で発電する計画が進んでいる。新年度から2年間、温泉の熱で、沸点の低いアンモニア水などを蒸発させてタービンを回す「バイナリー発電」の実証実験が始まる予定だ。

 この発電方式だと新たな井戸を掘る必要はなく、温泉が枯れる心配がない。地元の観光業者らは昨年、「小浜温泉エネルギー活用推進協議会」を設立。温泉と地熱発電を一緒にPRし、地域づくりにもつながっている。

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 ■ことば

 ◇バイナリー発電
 150度に満たない比較的低温の蒸気・熱水でペンタン(沸点36度)やアンモニア(マイナス33度)など沸点の低い液体を加熱し、その蒸気でタービンを回す発電方式。通常の地熱発電は地下の蒸気で直接タービンを回すが、この方式は地下の蒸気で媒体を熱して別に蒸気を取り出すため「バイナリー」(「二つの」という意味)の名が付いている。九電八丁原発電所では04年2月に実証試験を始め、06年から営業運転(出力2000キロワット)している。

 ◇再生可能エネルギー固定価格買い取り法
 太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及を促進するため、再生エネルギーによる発電分をすべて電力会社が決まった価格で買い取るよう義務づける法律。菅直人前首相の「退陣3条件」の一つであることから注目され、昨年8月に成立した。7月の施行に向けて、現在各電源の価格が協議されているが、買い取り価格が高く設定されれば、再生エネルギー普及に役立つ半面、電気料金の引き上げにつながる可能性もある。

 ◇発電電力量の構成比率
 経済産業省の「エネルギー白書」によると、国内の10年度の発電電力量(一般電気事業用)に占める各電源の割合は、火力(LNG、石炭、石油)58.3%▽原子力30.8%▽水力8.7%▽新エネルギー1.2%--となっている。停滞が目立つ新エネルギーのうち、地熱はわずか0.3%に過ぎない。ただし、全国の大半の原発が運転停止した11年度は比率が大きく変わるとみられる。

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 ◇九州の主な地熱発電所
【九州電力】   場所          出力     運転開始

大岳       大分県九重町  1.25万キロワット 67年 8月

八丁原1号      〃      5.5万キロワット 77年 6月

八丁原2号      〃      5.5万キロワット 90年 6月

八丁原バイナリー   〃      2000キロワット 06年 4月

滝上         〃     2.75万キロワット 96年11月

山川       鹿児島県指宿市    3万キロワット 95年 3月

大霧       鹿児島県霧島市

         同県湧水町      3万キロワット 96年 3月

【温泉ホテル】

別府杉乃井    大分県別府市   1900キロワット 81年 3月

霧島国際     鹿児島県霧島市   100キロワット 84年 2月

-引用終わり-

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環境省のこだわり-1

2012-03-14 15:05:55 | しもきたインフラ
3/13現代ビジネスのニュースの深層で伝えていました。長文なので2回に分けました。図表は2個うち1個のみ掲載しました。私は現状を的確に捉えている記事と思います。

-羊頭狗肉の規制緩和 地熱発電を阻む環境省のレンジャー魂-

 全国の原子力発電所が相次いで運転を停止する中で、自然再生可能エネルギーの隠れた本命として見直し機運が高まっていた地熱発電の育成が風前の灯になってきた。

 まるでプロパガンダに協力するかのように主要メディアは実態を伝えないが、環境省の自然環境局は、事業者の要望を無視して、発電所建設に必要な国立公園と国定公園の規制緩和を拒む姿勢を固めた。
 結果として、すでに地元との調整が始まっていた全国の9地域のうち、6地域の計画が暗礁に乗り上げる見通しという。

 問題の自然環境局は一般的な中央官庁の組織とは異質の存在で、本来は国立公園に駐在して現場を管理・監視することを使命とする自然保護官(レンジャー)の牙城。日頃から、環境省の中からも「独立王国のようだ」(環境省関係者)と苛立つ声が絶えなかった。今回も再生可能エネルギーの振興という省の方針を無視しているという。
 東京電力・福島原子力発電所の大惨事を受けてエネルギー戦略の歴史的転換が急務であるにもかかわらず、国益の変化とは無縁のレンジャー部隊に国策を委ねることの弊害が改めて浮き彫りになっている。

 まず、有力メディアの報道を紹介しよう。

 「国立公園で地熱発電後押し 環境省、設置規制緩和へ」(2月14日 朝日新聞デジタル)

 「地熱発電 国立公園内の基準緩和へ 特別採掘に限り容認」(2月15日 毎日新聞)

 「環境省、地熱発電所の要件緩和 『斜め掘り』容認へ」(2月14日 47News共同ニュース)

と、自然環境局の打ち出した「斜め掘り」の解禁方針を前向きに評価する報道一色となっている。
しかし、斜め掘りの解禁は、本当に地熱発電の振興に役立つのだろうか。

 まず、「地熱資源開発が計画されている地域」というリストを見ていただきたい。現在、全国の事業者が進めている地熱発電所の建設計画を、資源エネルギー庁がヒアリングしてまとめたものだ。
 計画は全部で11あり、このうち地元との調整が始まっている9件の具体的な内容がリストアップされている。
 ところが、<国立・国定公園第2種・第3種特別地域を調査・開発範囲に含む計画>の6件が、今回の環境省の規制見直し方針に失望し「すべて事業化を断念する可能性が高い」(資源エネルギー庁関係者)という。
 残りの3件も、今後の調査の行方次第では、環境省の規制がネックになって断念せざるを得ないとみられている。

 つまり、今回の自然環境局の見直しは、有力メディアが伝えたニュアンスほど実効性は高くない。

-押しつけられる2倍のコスト
 では、何がいけないというのだろうか。

 業界団体の研究に基づいて、資源エネルギー庁が作成したものである。(図は省略)

「垂直掘りと斜め掘り」ポイントは、地熱発電に使う高温の水蒸気が溜まっている「貯留槽」の真上から「垂直掘り」(下図では「ケースA」)をする場合と、離れた地点から斜めに掘る「斜め掘り」(同「ケースC」をする場合のコストの違いだ。
 6地区の開発事業者がかねて要望していたのが、この垂直掘りだ。逆に、自然環境局は、斜め掘りしか認めないと主張していると考えてもらえば良い。
 垂直掘りの採掘距離を1800mと仮定すると、標準的なコストは4億円強。一方、ケースC地点まで離れて40%ほど長い2500mの距離を掘るとすると、そのコストは2倍の8億円程度に跳ね上がってしまう。

 実際の調査では、20ヵ所ぐらい採掘することが多いので、斜め掘りは、事業計画上の調査コストが80億円から160億円程度に跳ね上がる原因になる。地熱発電所は、環境アセスメント手続きなどもあり、8年から10年程度の開発期間が必要。この間、採掘コストも回収できないため、投資リスクを負う事業主体がいなくなるという。


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環境省のこだわり-2

2012-03-14 15:05:19 | しもきたインフラ
(続き)
 つまり、主要メディアが持ちあげた環境省の見直し方針はコストを押し上げる問題があり、羊頭狗肉の規制緩和に過ぎないのだ。むしろ、メディアは「環境省、公園内での垂直掘り要望を拒否 地熱発電の事業化難しく」と報じるべきだったと言える。

 地熱発電は、再生可能エネルギーの中でも稼働率が高いのが特色だ。現在運転中の設備の稼働率をみても、太陽光(12%)、風力(20%)を大きく上回り、地熱のそれは70%に達している。
 晴れないと発電ができない太陽光発電や、風がないと発電できないうえ、風車の回転部分や方向を変える部分の故障が多い風力発電と比べて、地下の熱源から噴出する水蒸気は安定しているからだ。

 ところが、国内の地熱発電所は現在、18ヵ所しかない。

 1974年に、当時の環境庁が通達を発出、それ以前に操業していたか、すでに建設工事が始まっていたものを除いて、「当分の間、国立・国定公園の景観及び風致維持上支障があると認められる地域においては新規の調査工事及び開発を推進しない」としたうえ、1994年の通達でも「開発を目的とした調査井掘削を含めて個別に検討し、その都度開発の可否の判断を行う」として厳しく制限してきたからだ。
 富士箱根伊豆国立公園内の「普通地域」(5区分ある中で一番規制の緩い地域)にある八丈島発電所が2001年に運転を開始したのを最後に、過去13年間にわたって新たな地熱発電所は1つも建設されていない。

 その結果、全国で潜在的には2,357万kW(大型原子炉の23.5基分)の発電所建設が可能とされているにもかかわらず、実際の発電容量は合計で54万kWにとどまっている。潜在的な熱源の9割以上は、全国に29ある国立公園、同じく56ある国定公園などの自然公園の特別地域などに集中しているが、こうした地域での建設が環境省によって厳しく規制されてきたからだ。

-地熱発電を認めないつもりなのか?
 ただ、1997年に京都議定書が採択されるなど、地球温暖化対策として温暖化ガスの排出削減が重要な課題になったことから、こうした厳し過ぎる規制の見直しを求める声は次第に強まっていた。
 そして、環境省の自然環境局は昨年6月、「地熱発電事業に係る自然環境影響検討会」を設置した。昨年3月の東京電力・福島原子力発電所の事故が規制緩和必要論の高まりに拍車をかけたこともあり、自然環境局がようやく重い腰をあげて建設規制の緩和策の検討に入ったものと受け止められていた。

 ところが、今年2月14日に開催された「地熱発電事業に係る自然環境影響検討会」の第5回会合に示された「基本的考え方」によって自然環境局が示したのが、前述の公園の外か、もしくは「普通地域」からの斜め掘りしか認めないという羊頭狗肉の緩和案だ。
 念のため記しておくと、そこには「坑口を普通地域もしくは公園外の地表部に置き、傾斜掘削によって第2種及び第3種特別地域内の地下深くの地熱資源を利用する場合には、自然環境保全や公園利用への特段の支障がなく、特別地域の地表部へ影響を及ぼさないと考えられる場合においては許容されるものと判断される」と書かれている。

 これには、環境問題に詳しいエコノミストも「事実上、地熱発電など認めないという意味がある」と呆れ顔でコメントした。

 批判が強いにもかかわらず、自然環境局は1歩も引く構えを見せていない。約30人の国会議員が参加している「超党派地熱発電普及促進議員連盟」(共同代表 二階俊博元経済産業大臣、増子輝彦元経済産業副大臣)が2月28日に開いた会合で、国会議員や資源エネルギー庁幹部から、「斜め掘り」では不十分であり、「垂直掘り」を解禁するよう迫る発言が相次いだにもかかわらず、環境省の幹部はのらりくらりとかわしたという。
 さらに、行政刷新会議が年度末にまとめる「エネルギー・規制改革アクションプラン」に先立ち、自然環境局は早ければ3月16日までに、新たな通達を出して「斜め掘りの規制緩和」を既成事実化してしまう構えという。

-打ち捨てられる国民感情
 私事で恐縮だが、筆者も釣り好きでこよなく自然を愛する者の1人だ。自然保護の重要性に異を唱えるつもりなど毛頭ない。
 しかし、自然環境局が所管する土地の面積は、国立公園だけでも国土全体の5%を超す広大な地域に及ぶという。
 その一方で、開発事業者が今回、容認を求めた「垂直掘り」の予定地は、すでに地元との建設的な話し合いも行っている地域と聞く。こうした地域の中には、地熱発電を街興しに活かしたいと積極的なところもあるらしい。
 こうした事情をみていくと、地熱発電所の建設予定地が、5つの保護ランクのうちの3番目、4番目のカテゴリーに属するからと言って、一遍の「通達」によって全国一律に禁じてしまおうという自然環境局の行政手法はあまりにも乱暴ではないだろうか。
 もちろん、再生可能エネルギーの振興を掲げてきた政府の基本方針への造反に他ならないし、福島原発事故以来、再生可能エネルギーへの期待を膨らませている国民感情を無視する行為とも言わざるを得ない。

 最初の配備が1953年と、旧・環境庁の誕生より古くからの歴史を持つレンジャー(自然保護官)の業務への誇りや気概、あるいは伝統は大切にすべきものである。
 しかし、今回のような羊頭狗肉の規制緩和方針を打ち出してやったふりをする行政姿勢、手法は常軌を逸している。
 こうした時代錯誤は、政府の意向を無視して独断で戦線を拡大した戦前の関東軍の行動を彷彿させるものである。
 ちなみに、環境省の中堅幹部によると、自然環境局は「レンジャーとしての現場での業務執行が与えられた使命なので、本来は独立行政法人などに移行すべき組織。ここへきて、省としての環境省の体裁を整えるため局として存続させてきたことの弊害が目立っている」という。

 これ以上地熱発電の育成・振興を妨げ続けるのならば、「環境省の関東軍」にメスを入れる必要がありそうだ。

-引用終わり-

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