偶然を装った猫が通ることによって、話のきっかけとなる。予定時刻ちょうどに、猫が通りすぎた。
「この辺りは猫が多いみたいですね」
「そうなんですね」
「……」
チャカチャンチャンチャン♪
猫がまた戻ってきた。
「やっぱり多いですね」
「ほんとですね」
「何か探してるんですかね?」
「そうかもしれませんね」
「……」
チャカチャンチャンチャン♪
猫がまた戻ってきた。
一瞬立ち止まり、通り過ぎた。
「またきた」
「よくきますね」
「犬派と猫派どっちですか」
「どちらかと言うと犬ですね」
「犬もいいですよね」
「かわいいですよね」
「……」
チャカチャンチャンチャン♪
猫がまた戻ってきた。
「猫か」
「……」
「猫は水が苦手みたいですね」
「どうしてでしょうか」
「どうしてですかね」
「……」
チャカチャンチャンチャン♪
猫がまた戻ってきた。
「猫多いですね」
「同じ猫じゃないですか」
「同じか……」
「……」
チャカチャンチャンチャン♪
猫が雨の中を戻ってきた。
足を止めじっとこちらをみつめている。
しばらくそのまま目を逸らさない。
そのまま向きを変えず店の中に入ってきた。
受付の前で足を止め、尾を立てた。
作戦には含まれない行動だ。
「お腹空いてるのかな?」
「でしょうか」
「……」