眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

A6/17時のワンオペレーション

2020-11-11 20:44:00 | 【創作note】
背中に相棒のPomeraを積んで歩く
11月の風
首筋だけ冷たい

公園でボールを追いかける子供たち
あの仲間に僕はなれない

たこ焼き屋の赤い暖簾が風になびく
歩行者信号のない交差点
車と競って駆け込んで行く

歩く間は楽なもの
すぐ先に変わる風景だけを
思っていればいい
到着前に足取りは重くなる
止まれば主体が脳になるから

魂をかすめ取りながら
猛スピードの自転車が
僕を追い抜いて行く

スーパーの入り口では
カートが鉢合わせ渋滞している
エスカレーターを上がり
老夫婦のあとをゆっくり歩く
15センチの鍋でおでんを作るのか

今日四隅は占められていて
丸テーブルはよそよそしい
風通しの穴から漏れてくる煙

食器が擦れ合う音がする
17時のワンオペは
未だ息つくひまもない
ホットホットホットアイス
水ください

Pomera iPhone トレイ ボールペン メモ帳
過密テーブル創作タイム
下書きのA6がすぐにいっぱいになる
なんでこんな狭いんだ

気怠いJazz 
時に弾むピアノ
天井からの風が痛くて
僕は隣の椅子に座り直す
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leave me alone(駒犬の間)

2020-11-11 11:27:00 | 将棋の時間
 少し困った顔をしていると優しい人が寄ってくる。
「どうしたの?」
「……」答えがあるなら苦労しないだろう。
 頭を抱え込んでいると親切な人が近づいてくる。
「いい薬があるよ」
「大丈夫?」
「いい本があるよ」
 ああ。どうしてみんな優しいの!
(僕はもう少し独りでいたいのさ)

「駒犬の間へ、どうぞ」
「えっ?」
「思う存分考えて。誰も責めないから」
 立会人に導かれるままに僕は襖を開けた。
 向こうの座布団にも人がいる。
「あれは?」
「四枚堂八段だよ」

「僕独りじゃないの?」
「大丈夫。盤の向こうの人は何も干渉しないから」


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話しながら走る(アイコンタクト)

2020-11-11 06:46:00 | ワニがドーナッツ!
「何本つながったんだろう?」
「もう数の問題じゃない」
「どうしてこんなに奪われないんだろう」
「上手いからじゃないかな」
「まるで俺たちしかいないみたいだ」
「そんなことはない。いつも危険と隣り合わせさ」

「まるで取られる気がしないんだ」
「そうかいサイドハーフ」
「そうとうもボランチよ」
「俺たちは上手くやっている」
「だが問題はその先だ」
「その先ね」
「俺たちは先を見なくちゃ」
「ピッチは広く見ておくべきだ」

「なあボランチよ」
「なんだサイドハーフ」
「これがサッカーか?」
「何か不満でも?」
「回っているだけでサッカーなのかな」
「止めて蹴るがサッカーの基本だろう。止めて蹴る。止めずに蹴る。出して受ける。受けて走る。それを繰り返す。相手を揺さぶって揺さぶって……」
「おいボランチ! リベロからパスが来たぞ!」
「ほいきた! 受けて走る。そして右サイドへ展開だ」

ワニがドーナッツ!!

「俺たちは持たされてるんじゃないか?」
「持っている限り失点することはない。何か不満か?」
「俺たちは本当に自由なのかな」
「サッカーは自由だ」
「なあボランチよ。自由っていったい何だ?」
「自由に選べるってことじゃないの?」
「自由って言ったら駄目じゃん」
「何が駄目だ」
「自由を語るのに自由を使ったら駄目じゃん」
「俺の自由じゃん」

ワニがドーナッツ!!

「俺たちは自由の中で目的を見失っているのでは?」
「なあサイドハーフ。自由ってわかってるのか」
「俺たちは好きにドーナツを選ぶことができる」
「勿論だ」
「持ち帰ることもできるし、イートインすることもできるんだ」
「気分によってな」
「だけど、ドーナツの中心に何を見ればいいのだろう」
「見ても仕方ないだろ」
「なあボランチよ。その中心の向こう側にいったい何を?」
「何を見たいかってことじゃないの」
「お前は何を見たい?」
「ゴールかな」
「ボランチらしいな」
「なあサイドハーフ。お前はゴールじゃないのか」
「俺はまだ考えている途中だ」
「そうか。サイドにはまだ考える時間があるんだな」
「そうだ。俺たちには時間がある」
「それが俺たちのキープなのか」
「俺たちが回し続けている限り、ドーナツは動かない」
「止める蹴る。俺たちの基本がそうさせるんだな」
「俺たちには決める力がないんだ」
「へんだな。何でも自由に選べるのに」
「自由が多すぎて進めなくなったのさ」
「サッカーって難しいんだな」

ワニがドーナッツ!!

「今はそれでいいとも思うんだ」
「急には変われないしな」
「お前は不動のボランチさ」
「ありがとう。サイドハーフ」
「つなぐ先のアイデアが俺たちにはないのだから」
「確かにそうだ。俺たちはドーナツさえ砕けない」
「だが悲観する必要もない。これが俺たちの役目なんだ」
「そうか」
「アイデアはあのベンチの奥から出てくるからだ」
「やっぱりそうか! 俺たちじゃない気がしたぜ」
「そう。アイデアと決定力を兼ね備えた者がやがて現れる」
「それまで頑張ればいいんだな」
「耐えながら回しながら楽しみにするんだ」
「色々と忙しいじゃないか」
「行けるとこまで行け! 俺はそういう選手だ」
「走れサイドハーフ!」
「ボランチよ。俺によこせ!」
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