折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

ポエムがない

2020-01-31 21:23:00 | 【創作note】
ハムがあるのに
マヨネーズがない
犬がいるのに
散歩道がない
地図があるのに
旅人がいない

はあー

和菓子があるのに
お茶がない
猫がいるのに
高いところがない
パレットがあるのに
絵の具がない

ふうー

まいったね
こりゃ

pomeraがあるのに
ポエムがないって
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命令と主張

2020-01-31 09:11:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
お前さん煮物をみんな食べなさい
いいえ私は汁物がいい

(折句「鬼退治」短歌)
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最小の幸福にまるをつける

2020-01-30 22:31:00 | 【創作note】
完全なハッピーエンドなど存在するか
それならそれでこちらが寂しくなる

満足を望むなら
読む前に本が重くなりすぎる
読前不安に押しつぶされて
最初のページも開けない

「たった一行」
いいことがあったらいい
そんなとこから始めてみないか

あなたの物語を
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街を席巻するコラムニストたち

2020-01-29 05:50:00 | フェイク・コラム
 コラムの時代。
 そう叫ばれるようになってから何十年経つことだろう。
 依然としてその流れは衰えることなく、子供たちはスマートフォーンを片手にコラムを書いている。
 憧れの職業としてのユーチューバーの隣にはいつも決まってコラムニストの文字が踊っているのは、あなたも知っての通りだ。

「街にあふれる伝説のコラムニストたち」

 今では全国のコンビニチェーン店よりも、街でよく見かけるのは、街角のコラムニストの姿だ。彼らは昼夜を問わず街に現れ、声を上げて最新のコラムを展開する。人気のコラマーの前はたちまち人だかりができる。隙のない論調の前に共感の拍手がわき上がる光景を、きっとあなたも目にしたことがあるだろう。

「切れ切れのコラムが街をノックアウトする!」

 彼らの素晴らしさはちゃんと伝えたいことを自覚しているということだ。そして、そのやり方は恐ろしく正確である。街から街へと渡り歩く内に、足腰も鍛えられたのだろう。コラムを語る姿勢にも一切のぶれはみつけられない。彼らはどこからやってきてどこへ向かうのか。その方向性を読むことは極めて困難である。

「光のように現れて影のように消えていく」

 誰でも一度は憧れるコラムニスト。
 実際私もその一人で、何度かコラムに似たものを書いてみた。
 また、街角に立ちコラムを展開してみたこともある。
 だが、30分しても彼らのように人を集めることはできなかった。
 私に接近してきたのは、火をくれという帽子の紳士、小太りの黒猫、そして、降り立った雀だけだった。
 なることは簡単である。
 しかし、愛されるコラムニストになるには遠い道を行かねばならないようである。

「愛されるコラムニストへの遠い道のり」
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命拾い

2020-01-28 03:27:00 | 夢追い
 時代の節目には人生の整理をしてみたくなる。箱いっぱいにいらない物を詰めた。せっかくだから、あれもこれも。余計なものはない方がよかったのだ。箱があふれるほど、埋もれていたスペースが復活する。自分の中に純粋なものが戻ってくるような気がした。
 いつの間にか兄が近くにいた。お茶を飲みながら昔のテレビを見ていた。毎日のように友達を呼んで根ほり葉ほりきいて笑って拍手して楽しそう。芸能人が若い。昔はアイドルと呼ばれていた。友達の多くは、今では遠いところに行ってしまった。捕まってしまった人もいる。仕方がない。友達に無理があったのかもしれない。

 ガムテープを貼る時になって、なぜか気になって一冊引っ張り出した。すべての言葉が解説されている。言葉の由来、用途、種々のエピソード。困った時に読めばいい。そうでなくても読みたい本。「惜しい!」危なかった。
(ただ厚いというだけで捨てるつもりだったんだ)
 その隣にあった第ニ巻では将棋の駒が主役となり、言葉の世界が尖った広がりを見せている。これもまた分厚く捨て難い本と言えた。
 兄はまだテレビを見ている。友達は去り新しいコーナーはルー語と共に始まった。
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ひねりフレンド

2020-01-27 11:47:00 | 短い話、短い歌
 それさえあれば際限なくいける。それは当然だ。とっておきのそれがあれば心に余裕を持って、どこまでもいくことができる。それはとても幸福なことに思える。それなのにそれはいつまでも存在しない。それも当然だ。それが欠けた時には一粒も進めなくなってしまう。それぞれのそれはそれだけに貴重でそれだけにそれぞれがそれしかないと心に強く思う。それが自然だ。それらしくそれに向き合うことも、それなりにそれとつき合うことも、それはそれぞれがそれぞれのそれに対しての惚れ方だ。それはどこにでもあり、突如消えてしまうものだ。友よ。



ふりかけが
尽きかけた朝
友が練る
メニューにはない
サンド・スウィッチ

(折句「フットメザ」短歌)
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人類の続き

2020-01-26 21:41:00 | 【創作note】
書きかけの作文は
自分一人の作業じゃない

君は人類の続きを書いているのだ

ここにあるものは
誰かの意志
誰かの未練
果たせなかった誰かの夢だ

君は自分なりの世界を目指せ

完成をみることはなくとも
旅は続くのだ

君は独りじゃない
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未小説

2020-01-25 13:59:00 | 短い話、短い歌
 前書きは冷蔵庫の中の風景から始まり、君の未来は午後の予定のように空っぽだと言う。雲の上を目指せばそれは果てしないゲームの始まりで、言葉は単純なほど強いのだと語りかけてくる。信じなければ進めないが、信じる限りただでは済まさない。私はランチに使うはずだったコインを削って課金した。
「この小説には本文がありません」
 果てしなく続くのは白いページばかりだ。



ヤマンバと
気ままにさらう
ドブがある
俯くよりも
深い未来に

(折句「焼き豆腐」短歌)
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エンドレス・パス

2020-01-24 12:20:01 | ワンゴール

「やあ、どうだい?」

「さあ、どうでしょう」

「なんだい、それは」

「ああ、悪くないってことで」

「なあ、それでいいのかい?」

「いったい何がです?」

「挨拶くらいできないのか」

「はあ?」

「君は挨拶もろくにできないのか」

「お言葉ですが、監督。今はそんなことをしている場合じゃありません」

「そんなことだと?」

「はい」

「やはり、君はわかっていないようだな」

「何がわかってないんですか」

「一番大事なことが、君はわかっていない」

「ゴールの他に何かありましたか? ないと思いますけど」

「挨拶だ! 一番大事なのは挨拶だ」

「はあ。それは一般社会の話ですか。それとも試合の中?」

「そうか。君はそうして試合とそれ以外の世界を分けて考えるんだな」

「当然でしょう。試合に入ったらボールとゴールのことだけを考える。他のことを考える余裕なんてありません。僕は今、それだけに集中しているんです」

「我々の使う言葉の半分以上は挨拶と言える。すべては挨拶に始まり、挨拶に終わるのだ」

「そういうもんですかね」

「おはようで目覚め、おやすみで目を閉じるのだ」

「はあ、そうですか」

「はじめましてで出会い、さようならでお別れするのだ」

「何か寂しくなってきますね」

「その間に人と人の時間がある」

「はあ」

「挨拶を侮ったり、馬鹿にしてはならん」

「馬鹿になんてしてません」

「だから、もっと顔を出せ」

「どこに出すんです?」

「人と人の間だよ。間、間に顔を出して、呼ぶのだ」

「敵の間ですね」

「顔を出し、声を出して、呼びかけねばならない。こっちだよ。ここにいるよ。ここに出してくれよ。こんにちは」

「もっと動いて、パスを呼び込めということですね」

「そうだ。待っているだけでは駄目だ。自分から求めなければ」

「コミュニケーションを取れと言うんですね」

「その通りだ! それが私の言う挨拶だ。そして、パスを受けたら、また返してやる」

「せっかく受けたのに? まずはドリブルを考えなければ」

「ベストの選択をすることが重要だ。言い換えれば、最もゴールに近い選択をすることだ」

「例えばゴールに向かって突き進むことですね」

「君がいくら全力で走ったところで、ヒョウほど速くは走れないだろう。だが、パスは」

「ヒョウを超えると?」

「そうだ。出し方によっては、パスはヒョウよりも速い」

「強いパスはヒョウに勝つのですね」

「味方を信じて返すことだ」

「信頼のパスですか」

「パスとは挨拶そのものだ」

「また挨拶ですか?」

「人と人をつなぐのがパスだからだ。やあ。こんにちは。お元気ですか。僕は元気です。こっちだよ。ありがとう。いえいえ。こちらこそ。じゃあね。またね」

「言葉のようにつなぐということですね」

「挨拶はいくらしてもいいのだ。日に何度してもいいし、同じ言葉を何度繰り返してもいいのだ。こんにちは。こんにちは。こんにちは。こんにちは……」

「おかしくなりませんか。変に思われませんかね」

「心配は無用だ。挨拶されて、腹を立てる人がいるかね。君はどうだ?」

「まあ、別に。嫌ではありませんが」

「そうだろう。されなくて不機嫌になることは多いがね」

「はい」

「信じて返せば同じように返ってくる。返せば返されるだ」

「格言みたいですね」

「目覚めた時におはようのある暮らしがどれほど幸福なものか」

「テレビをつければ、おはようばかり聞こえてきますけどね」

「自分がそこにいることがわかる。生きているということが理解できる」

「言わなくてもわかると思いますが」

「強がりではないかな」

「強がり?」

「人間はそんなに強いものだろうか。二本の足で立ち、一息毎に吸ったり吐いたりを繰り返している。不安定なことにな」

「そうですかね」

「とても不安だ。常に確かめねばならないほどに、みんな不安で仕方がない」

「不安定が不安になるんですかね」

「だからパスを出し合わなければ。お元気ですか。こんにちは。大丈夫ですか。生きていますか。元気ですか。声が届いたら応えてください」

「まあ、元気がなければこのピッチには立てませんけどね」

「ハロー。調子はどう。一つ一つの言葉にはそれほど意味はないようにも思える。だが、すべての言葉に意味はあるのだ」

「言葉としては、ほとんど意味なんてないのでは?」

「表面だけを追ってはならない。言葉の意味以上に意味があることもあるのだ」

「言葉の外に意味があるんですか?」

「言葉は一つの道具にすぎない。言葉が行き交う間に様々なことが起きているということだ」

「パス交換の間に?」

「ハローをはなす。ハローが届く。ハローに触れる。ハローをかえす。ハロー・ボールが動く。それを繰り返す」

「パスが回る時間は悪くはないですね。ゲームを支配している気分になります」

「そうだ。自分たちだけでボールを回していれば、少なくとも失点の可能性はない」

「ずっとそれが可能ならですね」

「百パーセント保持し続ければ、完全な支配者となるだろう」

「絵空事ですね」

「どうかな」

「火を見るよりも明らかなことです」

「それほどかね?」

「それ以上です」

「火は人参やじゃが芋を煮込むことができる。では、パスは何を作り出すだろう?」

「リズムですか」

「もっと大きな」

「時間ですか」

「そうだ。パスは時の粒なのだ。パスはボールウォッチャーを作る。人も猫も見る者すべての視線が引き寄せられてしまう。その中には敵も含まれる。流れるパスの中では、みんな時の傍観者になってしまう」

「そうなるとゴールを狙うチャンスですね。そうならないようにも気をつけないと」

「わかっていても習性に逆らうことは難しい。おかしくも恐ろしくもある習性だ」

「行ったり来たり、行ったり戻ったり、ぐるぐると回ったり……。何がそんなに引きつけるんでしょうね。ただボールが動いているだけなのに」

「ライブだからだよ」

「当たり前じゃないですか。今、まさに僕らはサッカーをしているわけだから」

「そう、まさにそこなのだ。今という時間を見つめること。それが生きていることの証明になる」

「そんな証明が必要でしょうか」

「そして共に生きている時間に対して共感を抱くのだ」

「敵のチームは共感している場合ではないでしょう」

「わかっていても、心のどこかで抱く共感を打ち消すことは難しい。勝敗を超えた性がそこにあるからだ」

「どこにあるんですか?」

「単純な仕草で時を埋めていく。それがすべての人の営みというわけさ」

「そんなものでしょうか」

「わからないかね。それとも何か不満かね?」

「よくわかりません。だんだんと、色々と……」

「時間も時間だ。君もそろそろ疲れていることだろう」

「僕はまだまだ走れますよ」

「果たしてそうかな」

「うそだとでも?」

「自分では疲れていないと思っても、体の方はそうではないことがあると言っているんだ」

「そうですかね」

「ドリブルに偏っていないで、パスの輪を広げてみてはどうかね」

「ハロー・パスですか?」

「色んな言葉があれば相手は読みにくくなる。そうすれば君のドリブルはもっと生きるようになるだろう。じゃんけんだよ」

「じゃんけん?」

「晴れ、雨、曇り。晴れ時々曇り、ところにより一時雨」

「天気予報ですか?」

「雨しかないなら傘を持っていればいい。それはドリブルしかないドリブルだ」

「僕が?」

「しかないというのはとても止めやすいんだよ」

「僕には右も左もあります。シザーズもあるしルーレットもあります。もっと他にとっておきの奴もあります」

「足下に偏ってはならん。もっともっと広く見なければ」

「できればずっとキープしていたいです」

「ボールがそれほど好きか?」

「自分くらいに好きです」

「だったら自分から離してみることだ」

「なぜです?」

「離れてみればどれだけ必要だったかわかるだろう」

「離れなくてもわかっています。そんな必要はありません」

「離れている間に、もっと自身に問いかけるだろう」

「問わなくても、もうわかっているんです」

「巡り巡ってもう一度触れた時、愛はより深まっているはずだ」

「これ以上に深まることなんてあるんでしょうか」

「いずれにせよ、ずっと足下に置いておくことを世界が許さないだろう」

「それは僕のスキルが足りないせいです」

「それだけではない。君はボールを預けなければならない。そして君自身も変わらねばならない。動いて行かねばならない」

「ワンツー・パスを受けろと言っているんですか?」

「そうだ。それはドリブルではないのかね?」

「上手くいけば、ドリブルに戻れるでしょう」

「それは同じことなのだよ。ドリブルも、パスも、同じようにボールを運ぶための手段なのだよ」

「同じですか?」

「みんなつながっているのだよ。一つだけ、あるいは一人だけが孤立することなどできないのだ」

「パスもみんなで運ぶドリブルだと言うことですか?」

「コーヒー・タイム! 君もどうかね?」

「僕が口にできるのは水だけですよ。それだって、プレーが途切れた時にしか許されない」

「私だってコーヒーをじっくり味わう余裕なんてないさ」

「そうあってほしいですね。ここは戦場なんです」

「私も最初はコーヒーなんて飲めなかった。子供の頃は」

「子供の時はだいたいみんなそうでしょう」

「君がそうだったからそう言うのでは?」

「そうですかね」

「それで今はどうなのだ?」

「まあ、嗜む程度には」

「最初の一口は苦く感じられるものだ」

「子供は顔をしかめるほどに」

「だが、ある時、人は気づく」

「……」

「苦みもある意味必要であることに」

「ある意味?」

「いつの間にか苦みを欲している自分がいて、一口一口繰り返して受け入れている内に」

「内に……」

「苦みは笑みへと変わるのだ」

「薄気味悪いですね」

「大きな進歩と呼ぶこともできるだろう」

「進歩ですか」

「唇は触れ、唇は離れ、同じような仕草を繰り返しながら進んで行くのだ」

「いったいどこへです?」

「空に向けて」

「それでどうなるのです?」

「カップの底が現れる」

「まあ、そうでしょうね」

「それがコーヒーを飲むということだよ」

「それが何だと言うのです?」

「何だとは何だね」

「僕たちにとって重要なのは、コーヒーでもコーヒーカップでもありません」

「勿論そうだろう。もっと野心的なカップが必要だ」

「はい。もっと大きなカップを掲げなければなりません」

「その通り! 聞こえるか? あのチャントが聞こえるか?」

「聞こえます。ずっと同じ節を繰り返している」

「彼らも同じカップを望んでいるようだな。だから執拗に繰り返すことができるのだ」

「僕らには大きな力になります」

「繰り返すのは愛だ。彼らの歌声は、まるでパス回しに加わっているかのようだ」

「確かに良いリズムに乗っています」

「面白いようにパスが回っている」

「はい。今はチームがいい方に回っているように思えます」

「君が持ちすぎていないからだ」

「きついですね」

「ボールは疲れない」

「ずっと動いているのにね」

「だからさ。ハローをはなす。ハローが届く。ハローに触れる。ハローをかえす。ハロー・ボールが動く。それを繰り返す」

「行ったり来たり。リフレインですね」

「ボールは目的地を持たないものだ」

「でもみんな喜んでくれています」

「人はリフレインを好むものだからな」

「いつまで続くんでしょうね」

「いつまでも続くだろうさ」

「監督。夢でも見てるんですか?」

「パスは永遠だ」

「そんなことは……。ないはずです」

「笛が鳴っても続くだろう。終わらないパスだ」

「パスは試合の中に含まれているものです。限りある試合の中に」

「だから枠をはみ出すことはできないと?」

「それは誰でも知っていることです」

「さあ、来たぞ。君へのパスが」

「あの人たちはドローなんて望んでいない」

「さあ、来たぞ。君の足下へ」

「僕が変えてみせます。いいえ、決めてみせますとも」

「君はパスを受ける。そして、パスを返す」

「もっと、遠い、目的の場所へ届けます」

「つながっていくことこそ希望なのだ」

「つながっていくだけでは希望はありません」

「どうかな」

「絶対に」

「君はやはり返すだろう。君は慣習の中に含まれているのだから」

「いいえ、僕が変えてみせます」

「できるだろうか? 今まで、できなかった君に」

「今からです! 僕は前を向く選手なんだ!」

 

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街の目覚め

2020-01-24 08:03:00 | 夢追い
 あれ?
 どうもホームの様子が違う。一駅手前で降りてしまった。次の電車はしばらく来ないようだ。仕方ない。ここから歩いて行くか。とりあえず地上に出れば……。出口の選択を間違えたのか、地上に出ても見慣れたものは何もなかった。道も建物も歩いている人にさえも違和感を感じる。
「本坊筋はどこですか」
「川を渡った向こうだよ」
 川だって?
 進路を決めかねて立ち止まっていると犬に足を噛まれる。飼い主が謝りながらリードを引っ張るが、その手は本気ではない。
 草の多い方に行けば犬が追ってくる。何もない方に行ってもやはり追ってくる。小走りを続けてなんとか犬を巻いた。
 信号はいつになっても変わらない。

(変わらない時はボタンを押してください)
 押しボタン式か?
 ボタンを押すと道に川が流れた。川の上に橋がかかる。匂いが戻ってきた。鰹出汁の匂い、チーズケーキの匂い。街が戻ってきた。
「トミー?」
 愛犬が駆けてきた。
 一緒に行くか。
 トミーと共に本坊筋を歩いて出勤だ。
「もう熱は下がったの?」
 店長がヘラヘラしながら訊いた。
 そうだ。セーブモードが働いていたのだった。
 
 先にレジで会計を済ませ後で受け取るシステムだった。コンビニ店員がボタンを押してもヘルプはやってこない。レジには次々に客が押し寄せている。コンビニ店員の体は迷っているようだった。
「急ぎませんから」
 僕はそう言ってレジが一段落するのを待った。数分してようやく間ができた。出てきたコンビニ店員に冷凍庫の鍵を開けてもらった。ちょうど340円の商品を選ばなければならない。カレーがほしかったがカレーは500円だった。僕が手にしたのは魚入りのうどんだ。「えーっ、サバですか?」

 横断歩道ではぐれた子犬が漂っていた。
「誰か、飼い主の人はいませんか」
「私です」
 女はすぐ先で電話中だった。慌てた様子もない。
 曲がり角の先に虹があるような予感がした。細い道だった。薄い虹が見えたが、工事車両が向かってくる。運転手はいない。車は壁の形をしていた。どちらに避けるべきか迷っていると壁車は横道に逸れた。建物と建物の間のはまってそのまま壁になった。
 マンションに帰るとエレベーターは2階に移動していた。5階まで行くと階段で下りて4階のエレベーターに乗らなければならない。10階まで行くともう階段しかなく、上がったり下がったりしながら、ようやく自分の部屋までたどり着く。どこの部屋もみんな壁が取っ払われている。リニューアルしたのだ。防犯カメラがあり安全だとしても、プライバシーはどこへ?
 荷物はそのままの形で置いてあった。こんなに筒抜けで上手く眠れるだろうか。広々として、誰もいないならいいけれど。

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新しいキッチン

2020-01-23 22:50:00 | 短い話、短い歌
 新玉葱を手にしてからすぐに「あっ」とロボットは声を上げた。形なく玉葱はつぶれてしまった。
「まだ自分の力をわかってないのね」
 冗談ぽく言ったつもりだったがそうは伝わらなかったようだ。ロボットはクッキングをやめた。まあ、そういうこともあるって。先週は上手くいっていたのに、今日は駄目だった。成長は何事も行ったり来たりするもの。彼はまだ挫折にも慣れていない。「何も手につかない」そう言ってアームを腰にしまい込んでしまった。次のアップデートまでキッチンに立たないと宣言した。
「仕方ないな」
 私は今夜のレシピをロボットから引き継いで包丁を握った。



アベコベに
ゲノムを組んだ
鳥人が
うどんにのせる
フルーツポンチ

(折句「揚げ豆腐」短歌)
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ハイウェイ・テスト

2020-01-22 08:37:00 | 短い話、短い歌
 難しい問題は飛ばすこと。それがテストに打ち勝つコツだ。容易な問題から解いて、解いて、解きまくる。それこそがコツなんだ。冒険はスライムからはじまるものさ。一つ飛ばす。俺は正解に近づいている。一つ飛ばす。俺は勝利に近づいている。さあ、来い、容易な奴。一つ飛ばす。一つ飛ばす。一つ飛ばす。迷ったら飛ばす。俺は飛ばすのにも慣れてきた。この辺りはレベルが高い。難問が密集したゾーンだ。ここを抜けたら……。悩む時間は捨ててぶっ飛ばす。

 駆け足で飛ばすと来るところまで来た。そこは最終問題。こいつは容易じゃなさそうだ。そして、俺はふりだしに戻った。解くには至らなかったものの、問題のすべてに触れることはできた。もう初見の戸惑いを感じることもない。大丈夫。俺は成長している。俺の中に自信は漲っている。テストはこれからだ。「はい。そこまで!」ペンを置いて!



駄菓子屋と
犬で始まる
問い15
各しあわせに
いいねをつけよ

(折句「大都会」短歌)
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犬の力

2020-01-22 03:07:00 | 夢追い
 靴紐を結び直すためにしゃがみ込んでいた。犬が道と間違えて僕の懐に飛び込んできた。ふわふわとして犬は暖かかった。しばらくの間、犬は間違いに気づかないようだった。鼻を鳴らし、匂いを嗅ぎ、立ち止まり、座り込み、歩き出し、警戒し、興味を示し、まわってみせた。「ありがとう。まちがえてくれて」心の中で犬に感謝しながら、僕はずっと道の振りをしていた。ふわふわとした犬の体に癒されながら、僕はどんどん元気になっていくようだった。(ああ。犬ってこんなにすごいんだな)自分が道になって初めて犬の力を知ったような気がした。曲がり角の向こうから、誰かを呼ぶ声がした。犬の耳が激しく反応している。尾を立てて僕の頬をピシャリと弾いた。飼い主の声で正しい道を思い出したようだった。犬は勢いよく僕の中から抜け出した。「ありがとう。助かったよ」
 いつの間にか靴紐はきつく結ばれていた。






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ダンス・ウィズ・ドリブル

2020-01-21 16:41:21 | ワンゴール

「随分な遠回りだったな」

「得意の形でした」

「だが、ゴールには至っていない」

「シュートは打てました。紙一重でした」

「ポストを叩くことは闇に消えるよりはゴールに近い」

「はい。それは指針になりますからね」

「相手にとっての脅威、自分にとっての指針になる。だがね」

「何か不満げですね。とても」

「その必要が、本当にあったのだろうか?」

「いったい何がです? 必要とは?」

「遠回りだよ。君は遠回りしただろう」

「ドリブルのコースが良くないというのですか?」

「随分とゴールから遠回りしたように見えたな」

「最短距離は最も突破が困難だったからです」

「そうだったろうか」

「急がば回れと言うじゃないですか」

「とても急いでいるようには見えなかった」

「どう見えたと言うんですか?」

「楽しんでいるように見えたな。遠回りを」

「楽しくないということはないです」

「やはりな」

「でも、何が近道で何が回り道かなんて、どうしてわかるんです」

「自分で選んだ回り道を楽しんでいたんだな」

「それがエゴだと言うんですか。もっとはっきり言ってください」

「では、はっきり言おう。君は中に切れ込んでシュートを打ちたかったのではないのか?」

「それが何ですか?」

「そのために、他のあらゆる攻撃手段を切り捨ててしまったのではないか?」

「僕は選んだだけです」

「敵の警戒を言い訳にして、自分の好むプレーを選択したのだ」

「他にどうしろと?」

「その場でターンできたはずだ。中を向くことができれば、味方を使うこともできただろう」

「そこに味方はいたでしょうか? 間に合っていなかったのでは?」

「ちょうど走り込んで来る選手がいた。君の背中には映らなかっただろうがね」

「確かにターンはあったかもしれません。そこからシュートも打てたかもしれません。でも、僕は手数をかけるために、戻ったというわけでもありません。少なくとも自分にそのような意識はありませんでした」

「意識以上のことを、時に体はやってのけるものだ」

「考えている暇はありません」

「そうだ。だからこそ、正しい動きを身につけることが重要なのだ」

「体が覚えたものは忘れませんからね」

「そのために必要なことは何だと思う?」

「勿論、練習です」

「それは日々の積み重ねだよ」

「ああ。そうですか」

「朝起きて、君は最初にどうするのかね?」

「まずは顔を洗います」

「なぜ、そうするのかね?」

「目を覚ますためでしょう。強いて言うならばですが」

「それほど自分の顔が大事だと言うのかね?」

「はあ」

「その前に雑巾掛けをしようとはしないのかね?」

「雑巾掛けを? 突然ですか?」

「突然とは何だね? 君は突然顔を洗うのだろう」

「目覚めてすぐにそんな体力はありません」

「そんな言い訳が通用するとでも? 君は本当にアスリートなのかね?」

「何時間も眠っていたんですよ。誰だってそうですよ」

「果たしてそれが理由かな?」

「他にどうだと言うんですか?」

「君は部屋という全体よりも、顔という個人的なスペースを優先したのではないか?」

「普通じゃないですか。まさか、それがエゴだとでも言うんですか」

「まあ、君が言うならそれはエゴの一つに違いあるまい」

「とてもそれが悪いことだとは思えません」

「まあ順番はいい。君はいつ雑巾掛けをするんだね?」

「……」

「部屋の掃除をしているのかと言っているんだ」

「まあ、たまにしています」

「だから駄目なんだ! 大事なのは日々だと言っただろう」

「そんなに掃除が大事なんですか? 他にもすることが色々と」

「また言い訳か。それではいつになったらゴールが決まることか」

「ゴールとどんな関係があるんですか?」

「何を言うか。私がゴールと関係のない話をしたことがあるのかね?」

「本気で言っているんですか」

「雑巾掛けをするには、何よりも根気が必要だ」

「それはそうでしょうけど」

「何よりも継続性が重要だ」

「それもそうでしょうよ」

「それはとても良い行いだ」

「はい。それでどうなるんです?」

「部屋の中がきれいになる」

「それはそうですよ。それが掃除です」

「だが、他にもきれいになるものがあるぞ」

「他にも? いったい何が……」

「それは心だ」

「はあ。そうですか」

「良い行いを続けていると、知らず知らずの内に心の中までがきれいになっていく」

「それでゴールが決まるんですか?」

「まあ、そう先を急ぎすぎるな。急がば回れだ」

「さっきは遠回りを非難したくせに」

「手をかけて磨くことで、やがて浄化は空間を越えていく」

「そういうものですかね」

「大切なのは、正しい行動を習慣づけることだ。運動が学習を手助けする。それが自然にできるようになれば余計なものも消えていくだろう」

「余計なものですか」

「正しいことだけに集中するのだ。やがて邪念は消え、自身も消える。少しはゴールが見えてきたかね?」

「よくわかりません」

「自身が消えて、ディフェンスの目からも見えなくなるだろう」

「本当にそうなりますかね」

「疑うくらいならまずは試みてみることだ。君は邪念が多すぎる。テレビを見てごらんよ」

「どうしてテレビなんですか?」

「テレビでは悪いのかね?」

「そういうわけでは」

「人々はみんなクイズに夢中だ。どうしてだと思う?」

「正解が知りたいからじゃないですか?」

「考えることは楽だからだ」

「問題が簡単だったら、まあ楽でしょうね」

「難解さは重要ではない」

「そうでしょうか。難しければ……」

「考えられることは、考えられないことよりも遙かに楽だ。楽しいと言ってもいい」

「はあ。そういうものでしょうかね」

「答えがある場合は更に楽だ」

「確かにクイズには必ず正解がありますね」

「クイズのことを考えている間は、それ以外のことを考えることができない」

「時間切れになってしまいます」

「考えなくていいというのは、それもやはり楽だ」

「今度は考えないことが楽なんですか?」

「そうだ」

「監督。大丈夫ですか? 何か矛盾しているようですが」

「人々は考えているようで考えていない。考えないことによって考えているのだ」

「何が何やら」

「それが集中するということだよ。そして、その結果どうなると思う?」

「正解を答えるんですか?」

「何が消えると思う?」

「邪念と自身ですね」

「その通りだ。だからこそ雑巾をかけねばならない」

「クイズの話はもう終わったんですか?」

「終わったと思うかね」

「正直、わかりませんね」

「油断しないことだ。すべてのことは同時に進行しているのだから。攻撃は守備であり、守備もまた攻撃なのだ。今が試合の真っ直中にあるということを忘れないように」

「勿論です」

「床を綺麗に保つためには、常に怠ることなく磨き続けなければならない」

「はい」

「床をもっと前に押し進めるためには、もっともっと磨き続けなければならない」

「床を前に? どういうことでしょうか?」

「運動が学習を後押しするということだよ。わかるかね」

「わかりません」

「その先に敷かれるものは何だ?」

「?」

「油断するなと言ったはずだ」

「抽象的な問題は苦手です。僕はストライカーだから」

「しあわせにつながる道だよ」

「床から道へとつながっているんですね」

「そうだ。運動が絶えず続いていくためには、その先のビジョンが大事なのだ」

「なるほど。そういうものですか」

「その道がどこへつながっていると思う?」

「まだ続くんですか?」

「続くのが道だからな」

「海でしょうか」

「ゴールだよ」

「ゴールか……。惜しかったな」

「いつか道はゴールへとつながるのだ。それが休まず続けていくことの理由だ」

「はい」

「さあ、君はどうする? 今、君はこんなに大勢の敵に囲まれているじゃないか」

(ボール、ボール、ボール、ボール♪)

「みんなボールだけを求めて寄って来ます」

「そうだ。君は狙われているぞ」

「本当にしつこい奴らだな」

「君がボールを持っているからな」

(ボール、ボール、ボール、ボール♪)

「ボールの亡者たちめ。ボールのことばかり考えている奴らに誰が渡すもんか」

「そうだ。渡してはならない。体を張って、君はボールを守らなければならない」

「みんなボールに食いついて来ます。こいつら、ボールばかり欲しがりやがって」

「この場所においてそれは普通だ。ここはそういう場所なのだ」

(ボール、ボール、ボール、ボール♪)

「ボールがすべてなんておかしくはないですか? 本当にそれで正解なんですか?」

「ボールがすべてである時、ボールはいくつあると思う?」

「勿論、ボールは一つです」

「ボールがすべてである時、ボールはボールであるというだけでなく、他のあらゆるものでもあるということだ」

「あらゆる?」

「よって、正解は一つではない」

「そんな、まさか……」

「ボールは石だ。ボールは星、ボールはキャンディー。ボールは炎、心、そして、猫だ」

「ボールが猫だなんて」

「どうする。君は猫を手放すか?」

(ボール、ボール、ボール、ボール♪)

「嫌だ。絶対に渡さない。これは僕のボール。僕だけのボールなんだ!」

「ボールだけのボールと思っていては守れないぞ!」

「僕のドリブルで、僕は僕のボールを守ります!」

「そうだ。ここではボールがすべてだ!」

(ボール、ボール、ボール、ボール♪)

「渡さない! 誰にも渡さない!」

「もう、ドリブルのためのドリブルだけはするな」

「大切なものを守るためのドリブルです」

「そうだ。もっと先へ進むためのドリブルだ」

「なんだか体がとても軽く感じられます。みんなの動きが止まっているように見えます」

「そうだ。それでいい。ドリブルを楽しめ。踊りのように」

「踊りのように」

「踊る人は楽しい。楽しい人は踊るのだ」

(ボール、ボール、ボール、ボール♪)

「僕は踊ります。ゴールへ向けて踊ります」

「私もここで踊ろう。ゴールのための前祝いだ」

 

 

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ヒット麺

2020-01-21 07:35:00 | 短い話、短い歌
 時代劇と現代劇をミックスしそこにボサノバと紙芝居の風味を加えた。涙に笑いご飯にパン、パスタに、スープにシャーベット。監督、脚本、主演、助演、エキストラ、すべてを務め、レッドカーペットを一人歩きするとアカデミー賞を総なめに。カンヌに渡るや拍手喝采、熱狂的な大フィーバーの後、ベルリンに渡るや瞬く間に金字塔を打ち立てる。「きみこそが真のサムライ!」ピピピピピ……。ありゃあ夢かいな。ふぁー疲れた。あれに見えるは! 金ちゃんを見つけてケトルの元へ駆け出した。夢の中で活躍した後は思い切り腹が減る。お湯を注げば香り立つゴールドな一日のはじまり。



アラクレを
七人飛ばし
沸々と
ラ王に注ぎ
いきるサムライ

(折句「アジフライ」短歌)
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