眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

絶望に遠い姿勢

2024-04-24 03:28:00 | この後も名人戦
「脇息にもたれかかって、このままでは地の底の方に沈んで行きそうですが、先生これはやっぱり、現局面に絶望感を持っていて、投了も間近と考えられますか?」

「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」

「そうでしょうか。あの様子では、かなり苦しげかと」

「今は限界点を超えて読み耽っているわけですから、当然通常の姿勢とはまた異なるわけです。ああいったかっこうが普通とも言えますし、勿論希望を持って読んでるわけです」

「そうでしたか。苦しんでるわけではないのですね」

「苦しみもまた楽しみということです。読むというのはそういうことです」

「よく理解できました。みなさんも安心して応援することができそうですね」

「勝負はこれからですから」

「この後も、名人戦生中継をお楽しみください」

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封じられたメッセージ

2024-04-14 17:36:00 | この後も名人戦
「立会人の先生が、今慎重に鋏を入れて、封筒から何やら取り出されましたね。これは遠い故郷よりの手紙でしょうか。それをこれから読み上げて、朝の対局室をハートフルな空間へと導くのでしょうか、先生」

「何をわけのわからんことをおっしゃってるんですか。そんなはずないじゃないですか、田辺さん」

「はっ、そうでしょうか」

「ちゃんと説明しますと、あれは封じ手と言いまして、名人の次の一手が入っていて、それを立会人の先生が取り出して読み上げ、そうすることによって名人が次の一手を着手するということです。指されました」

「はい。封じ手は44銀でした」

「これは驚きました。目の覚めるような一手が飛び出しました」

「この手はどういった狙いなのでしょうか?」

「わかりません。さっぱりわかりません」

「はい。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」

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虫の行方

2024-04-08 23:51:00 | この後も名人戦
「何か対局者が気にされてますが、これは虫でしょうか。盤の周辺を飛び回っているようです。これは大変な事態となりました。まさかタイトル戦でこのようなことがあるとは。虫対策までは研究が行き届いていなかったということでしょうか。このままでは対局の中止も危ぶまれてしまいますが、先生」

「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」

「そうでしょうか」

「そうですよ。虫なんてものは、ほっといたらその内どっか行くんですから。そう大げさに考える必要はないんですよ」

「でも先生、危険な虫だったりすることはないんでしょうか」

「大丈夫です。見たらわかります。あの程度は大した虫ではありません」

「流石は先生。虫の方も大変お詳しいということで」

「やめてください。別に詳しくはないですよ」

「えへへっ、それは大変失礼いたしました」

「見てください。もう落ち着いてきてるでしょう」

「よかったですね。この後も名人戦生中継をお楽しみください」

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見守り先生

2024-04-05 09:15:00 | この後も名人戦
「副立会人の先生が入ってきました。何かいい手でも思いついて、たまらなくなって、こっそり助言をしに入ってきたのでしょうか、先生」

「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」

「ほほほほっ、違いますか。これは大変失礼いたしました」

「仮に思いついたとしても、絶対に言いません。将棋では助言というのは、絶対の禁じ手ですから、もしもそんなことをしてしまったら、二度と対局室には入ってこれなくなります」

「立ち会いの先生方は、思っても見守っているだけですね」

「勿論、そういうことです」

「はい。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」

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竜馬ダンス 

2023-11-10 09:16:00 | この後も名人戦
「これは竜と馬の追っかけっこが4手1組でしょうか。繰り返されてますが……。このままだと延々と繰り返されてしまって永遠に終わらないのではないでしょうか? そうすると対局者も私たちも誰もが帰れなくなってしまって、日常生活というものが完全に崩壊してしまうことが心配されますね、先生」

「何をおっしゃってるんですか。そんなわけないじゃないですか田辺さん。そうなる前に将棋には千日手というルールがちゃんとあるわけですから。そうなったらそうなったで初手から指し直しになるだけです」

「ほっほっほっほ、それは大変失礼いたしました。千日手というルールのおかげで千日も続くことはないといういことですね」

「まあ、そういうことですね。千日手の可能性は今のところ五分五分でしょうか」

「はい。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」

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雨天決行 

2023-11-08 01:51:00 | この後も名人戦
「これは大変なことになりました。雨漏りでしょうか。天井から何やら落ちてきてますね。このままでは対局の続行も危ぶまれるのではないでしょうか? 先生どうでしょう」

「そんなもんお前、なんで部屋の中で雨やねん。プレハブ小屋でやっとんのか。ちゃうやろ。立派なとこやのに考えられへんで」

「今、記録係の少年がバケツを持ってきて、駒台の横に置きましたね。もっとバケツは必要なのではないでしょうか。あちらこちらで落ちてきてますね。タブレットなどは大丈夫でしょうか」

「だいたい電子機器いうのはあかんやろ、お前。普通に考えたらどないやねん。そやろお前。考えられへんで。どないなっとんねん向こうは」

「記録的な短期間での雨ということで、対局室も緊急事態となっております。先生こんな時ですが、形勢の方はいかがでしょうか?」

「互角やな、ぱっと見た感じ。わしら読みとかあらへんで。ぱっと見たとこで出たとこ出たとこ勝負やで。そんでお前うまいこといったらもうけもんやないかのう。いかんかったら運がわるかったゆうだけの話や。そやけど雨やなんかで水を差されるようなそんな将棋とちゃうやろこいつら。ずっとお前こいつらそれで飯食ってきとんねんから」

「雨にも負けないということですね」

「バケツなんかなんぼでもあるやろ。もう雨でも上がるんちゃうんか」

「止まない雨はないということですね」

「どこでもそうやで、定跡以前に誰かてお前知ってるわ」

「視界良好ということですね。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」

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ゾンビの観戦

2023-11-02 03:15:00 | この後も名人戦
「ゾンビが入ってきてそっと座りましたね。対局者は大丈夫でしょうか。先生、ご両人は怖くはないのでしょうか?」

「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」

「そうでしょうか」

「今は終盤戦なんですから、怖いとかもうないんですよ。盤上の詰む詰まないに集中しているわけですから、ゾンビだろうがお化けだろうが、そんなものを怖がっているようでは、勝てませんから」

「これは大変失礼しました。局面は終盤真っ直中ということですね」

「しかも今は10月ですから、立会人も怖がらせるというような意図は全くなくてですね、ファンサービスの一環としてゾンビになっておられるわけです」

「そうだったのですね。頭が下がるというか、私たちも今後の参考にさせていただけたら、先生もどうでしょうか?」

「勿論です。技術的なバックアップがあれば、今は何にでもなれるわけですから、別に断る理由もないですね」

「なれないものは何もないということで」

「そういうことです」

「楽しみですね。この後も、竜王戦生中継をお楽しみください」

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でかきつねうどん

2023-10-27 17:37:00 | この後も名人戦
「名人が注文されたのはきつねうどん。これは上に大きなあげ、きつねでしょうか。このきつねが邪魔になってうどんが食べにくいことはないんでしょうか?」

「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか。田辺さん」

「えへへ」

「いいですね。やっぱり、うどんは」

「この後も、名人戦をお楽しみください」

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犬のエンター

2023-10-23 22:18:00 | この後も名人戦
「今ですね対局室に1匹の犬が入ってきましたけれど、どうしましたかね。散歩中に飼い主さんとはぐれて、誤って紛れ込んでしまったのでしょうか。ちょっとおっちょこちょいな飼い主さんでしたかね、先生」

「何をおっしゃいますか。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」

「というと?」

「よくご覧になるとわかると思いますが。あれは犬じゃなくて犬に扮した観戦記者の方です。ちゃんとお仕事されてる方ですから。見てください。ペンを握って今何か書かれてるとこです」

「ほほほほっ。これは大変失礼いたしました。秋ですからね、ハロウィン等の一環で楽しませていただけるということだったのですね」

「そういうことです。我々がやっているのはエンターテイメントなわけですから。楽しくなければ将棋になりません」

「なるほど、もう定跡化された動きなわけですね」

「そういうことです」

「よく理解できました。この後も、竜王戦生中継をお楽しみください」

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