大事な話がある(君だけに)。
親友に呼び出されて私は喫茶店の中にいた。
ここのコーヒーはこの街で一番だ。
「僕はこの星の生まれじゃない」
話は前置きもなく始まった。彼はどこか疲れた様子だった。
「お母さんは?」
私は素朴な疑問をぶつけながら探りを入れた。
「おじいさんは?」
みんなそうだと言う。家族ぐるみで宇宙人ということか。
「わかったか」
彼の状態は相当悪そうだった。
「隣人もだ」
「隣人?」
家族を超えていくのは想定外だった。
「そのまた隣人も、そのまた隣人も……。
この街はもうすっかり変わってしまったよ」
私は彼を救いたいと思っていた。
(ああ。なんて思い違いだったんだ!)
「この星の人間は君が最後だ。後ろを見てごらん」
ゆっくりと私は振り返る。
表情をなくした人々が手に手に工具のような物を持って立っていた。
「冗談だよな」
誰も笑わない。長い沈黙だ。
私はコーヒーカップに口をつけた。
私個人としては、これが最後の一口になるだろう。