「どこかに価値はあると思っていたが」
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随分と昔のこと。僕が書いた長文を読みながら、職場の同僚が言ったことを、思い出しました。
「眠くなるな」
その時、隣でスマホ画面をのぞき込んでいた人も、その意見に共感しているようでした。確か夢小説か何かでした。(そのつもりはなかったのに、秘密を勝手にばらす人がいたせいで読まれてしまったのだ)
あんたにはわからないよ。
感性が足りないんだろ。面白がって読んだら楽しめるんだよ。その時の僕は内心ではそんなことを思いながら、とぼけた振りをしていました。
だが、時は巡って、今となっては彼の言う通りではないかという思いが、日増しに強くなっていきます。
「何か眠くなる」
それこそが、宇宙中の読者を代表する声では?
夢の話とか、僕がだらだらと書いてしまうような文章は、ただ眠くなるばかりではないでしょうか。結論がなかったり、簡潔でなかったり、論点がぼやけていたり、回りくどかったり、繰り返しだったり。睡魔を誘うことにおいて、伸びているのではないでしょうか。
だったら、むしろそういう人、眠れない人をターゲットにして、眠たくなるための文章を目指していくべきなのでしょか。
いったいそれはどんなモチベーションなのですか。
だいたい逆ではないでしょうか。
ぱっと目が覚めるような、そんな文章の方を書いてみたいような気もしてきました。
ちゃんとしたブログを書きたくなったのです。そのためには、荒れ果てたカテゴリーの並ぶ、この地を離れてみる必要がありました。
早速、はてなブログというサービスに登録してみました。アプリは割とシンプルなようです。ちゃんとしたブログなので、お題に参加することにしました。
『最近飲んでいるもの』
具体的で、自分について考えられる、いいお題です。僕は最初コーヒーを思いついて、結局みそ玉について書いてみることにしました。みそ玉とは、みそを丸めた玉です。YouTubeでやっていました。冷凍してお湯を入れるだけですぐ飲めるという優れものです。詳しく書いてしまうと重複するので、やめておきます。gooブログにも「お題」はあるのかもしれないけど、参加した記憶はありません。ともかく、全く同じことを別の場所でそのまま書く(投稿する)というのは、やめることにしました。
はてなブログのアプリにも、アクセス解析のようなものがありました。『みそボールの感動をあなたにも』の記事にも、早速5人ほどのアクセスがあったようです。お題に興味があるというユーザーも、それくらいいるということでしょうか。せっかくだから、10人くらいには読んでもらいたいものです。しかし、今の時代、ブログの記事は読まれない。(なかなか読まれにくい)くらいの前提で考えておく方がよいのかもしれません。
そうい言えば、gooブログに「アピール・チャンス」ってありますが、誰にアピールできるのでしょうか? アクセス解析を見ている人にでしょうか? だとするとすごい狭いスペースでのアピールになるけど、どうなのでしょうね。
日付が変わって、「スター?」が1つついたようです。noteでいう「スキ」のようなものでしょうか。(noteは懐かしいですね)
かつて現代詩フォーラムとか、noteもそうですが、お知らせが赤く灯ると、何かありがたげな感じがします。
家でも、街でも、SNSでも、ブログでも、最初の内は新鮮な気がしていいですね。
僕はあれこれやりすぎていたのではないでしょうか。
折句とか短歌とか夢の話とか、日記とか創作ノートとか、ショートショートとか、詰将棋(詰めチャレ)の話とか、将棋ウォーズとか。(だいたい棋譜も譜面もない自戦記なんて誰が楽しめるの)
そうしたすべてに興味を抱けるとしたら、それは世界で自分のほかにいないのではないでしょうか。あれもこれも好きなように書いてきました。そこに問題はなかったでしょうか。あまりにも1つのブログに詰め込みすぎたようにも思います。
そこで今日に至っては、考えるべきところにきたと気がつきました。どこかに自分を分散してみたい。もっと方向性を固めたものを、個別に始めたい。ゼロからするために、gooブログではなく別の場所を設けたいと思います。例えば、それははてなブログになるかもしれません。
詩的なものと自由に小説的なものを書くところ、言葉遊びに特化して書くところ、ショートショート、短い話に特化して書くところ。そうして分けて書いていくのが、自分のためにもいいのではないでしょうか。
ここはあまりに雑然としすぎていて、作者自身が手に負えないというのもあるかもしれません。
自分が楽しむということも勿論大事なことですが、もっと読者に楽しんでもらえるような、世界によい影響を与えられるような、そんなものを書けるように、身を削って努力することはできないでしょうか。
今までは、主に自分の内にいる読者しかみていなかったような気がします。サービス精神に欠けていたのではないかなと思います。
好きなことを好きに書いて発表できる場があるということは、それにしてもよいことです。
完全に更新をとめるまでもない。
ここではもう失うものもないような気分になりました。
レインウェアを着て走っている時、早く降り出すことを願う俺がいる。防水キャップに重ねてヘルメット、スマホホルダーも完璧。備えたからには降ってほしい。そうでなければ暑いだけで馬鹿みたいだ。街を走るからには、何でもいいから鳴ってほしい。大げさなバッグを背負ってただ走っているのは空しくなってしまう。何でもいいから運びたい。せめて誰かのために。
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どこかのローソンが偶然に俺を呼んだ。誰かが大量の飲料を注文したらしい。2リットルのコーラだけでバッグはパンパンになった。何十本背負えば、俺の罪は消えてくれるのだろう。進む度にバランスが崩れそうだ。坂道に耐えられるか。突っ込んでくる逆走自転車を避けてふくらんだ瞬間、タクシーのクラクション。俺を抜いた後もずっと尾を引いている。もう無理か。元から無理ゲーだった。突然、肩の荷が下りたように軽くなる。星になったか。誰かが背中に字を書いたようでもあった。俺ははっとして振り返った。俺の後ろにパンダが乗っていた。
「降りて! 君も捕まっちゃう」
俺はまだ倫理的なものに縛られていた。
「大丈夫。前だけを見てて」
「君は?」
「僕はモノトーンだから見つからないよ」
「どうして助けてくれる?」
「好きだからさ。だからじっとしていられない。留まっていられるのは不死のものだけだからね。前を向いてる?」
「もうすぐ着きそうだ。コンビニからいたの?」
「いつだって君の背中にいるよ。思い出がいつも未来にあるようにね」
「ありがとう」
ドロップ先のマンションに着くとまた重たさが戻ってきた。
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一足先に乗り込んだ女が自分の階のボタンを押した。
(何階ですか?)
女が言い出すのを俺は待っていた。3秒が過ぎた。5秒過ぎ、10秒過ぎても静寂が続いていた。ほぼ一緒に乗り込んだのではなかったのか。もしやと思い、正面以外のあらゆる面を確認する。右にも、左にも、後ろにも、操作盤はない。見えていないのか……。俺は幽霊になったのか。