眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

棋書とカール

2020-11-29 20:06:00 | 夢追い
「お菓子を買っておいて」
 レジに並ぶ列の中から姉が言った。
 洋書とワインをかごに入れたカップルが、姉の後ろに並びながら、冷たい目を僕の方に向けた気がした。負けるな。与えられた任務は、秋の課題図書を見つけるのと同じくらいに尊いもの。うまい棒、もろこし輪太郎、キャベツ太郎、カール。どれも家にない。これは大変不安だ。いや緊急事態だ!

「任せて!」
 歩いても歩いてもお菓子コーナーが行方不明だ。前はこんなことはなかった。スポーツ書の前に広大なスペースがあり、無駄に歩かされる。ここでジョギングでもするのか。レイアウトが変だ! 店長を見つけたら文句を言ってやろう。
 今月の目玉コーナーに表紙を向けて棋書が置かれている。

「こんな本が店頭に並ぶようになったんですね」
 話しかけてすぐに後悔した。隣に立っているのは、まさにこの本の著者ではないか。(こんな本)と言うのは相応しくない。先生は無言で少しだけ笑っているように見える。子供の頃、先生の本を読んだことがあった。
「今はいいですよね。ソフトを使って、何が最善か確かめられて……」
「自分で考えないと!」
 先生の答えは厳しかった。自分の頭で考えることが、何よりも大切なことなのだ。
「先に答えを見ては駄目です」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

消されかけた夜

2020-11-29 11:07:00 | オレソン
赤青白
理容の灯り渦巻いて
夜に消えて行く

胸にかすれ字のパーカーを着て
あのJazzとコーヒーの店へ
道程を歩く

すぐ左を
ハイスピードで抜けて行く自転車
少しよろめいたりしたら
俺は消されていただろう

この街の道
共存の限界ギリギリ

順番を待つ人の列が
駐車場から歩道にまであふれそう
できたばかりの業務用スーパーの
念入りな入場制限

列の最後のあの人は
何十分待つのだろう

俺は少し気にかけながら
立ち止まらずに行く

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする