「お菓子を買っておいて」
レジに並ぶ列の中から姉が言った。
洋書とワインをかごに入れたカップルが、姉の後ろに並びながら、冷たい目を僕の方に向けた気がした。負けるな。与えられた任務は、秋の課題図書を見つけるのと同じくらいに尊いもの。うまい棒、もろこし輪太郎、キャベツ太郎、カール。どれも家にない。これは大変不安だ。いや緊急事態だ!
「任せて!」
歩いても歩いてもお菓子コーナーが行方不明だ。前はこんなことはなかった。スポーツ書の前に広大なスペースがあり、無駄に歩かされる。ここでジョギングでもするのか。レイアウトが変だ! 店長を見つけたら文句を言ってやろう。
今月の目玉コーナーに表紙を向けて棋書が置かれている。
「こんな本が店頭に並ぶようになったんですね」
話しかけてすぐに後悔した。隣に立っているのは、まさにこの本の著者ではないか。(こんな本)と言うのは相応しくない。先生は無言で少しだけ笑っているように見える。子供の頃、先生の本を読んだことがあった。
「今はいいですよね。ソフトを使って、何が最善か確かめられて……」
「自分で考えないと!」
先生の答えは厳しかった。自分の頭で考えることが、何よりも大切なことなのだ。
「先に答えを見ては駄目です」