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眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

2月の鬼たち(アクロスティック)

2018-02-28 12:26:10 | 短歌/折句/あいうえお作文
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煮え立つ金の
高まりを
一歩引かせた
焦点の歩

折句「鬼退治」短歌


まもなく2月が終わろうとしている。終わらない月はない。その中に2月はかなしいほどに含まれていた。少し前は夏だった。人々は半袖を着てかき氷を食べたり、スイカを割って馬鹿騒ぎをした。それでも暑い暑いと嘆き続けた。それからすぐに12月がやってきて12月は花火のように終わった。そしてまた2月が終わろうとしていた。2月は早く過ぎるという。鬼にとってはどうだろうか。人間を敵に回して戦うことを強いられた、鬼等からすればどうだったろうか。知恵をつけた人は逃げも隠れもする。それは人に与えられた選択だ。だけど本当にそうしたいと願うのは、鬼の方かもしれない。


おかわりを
二十四回
頼んだら
いっぱいだもう
しめはお茶漬け

折句「鬼退治」短歌

かえりたい(アクロスティック)

2018-02-28 09:33:30 | 短歌/折句/あいうえお作文
きた瞬間にできることならかえりたいと君は考えている。何かが違う。違和感だけを強く感じた。まとまった群の中に異質のものが交じってしまった、そんな感覚に苦しんでいた。かえりたい。実現するのは遥か先のことだろう。簡単にかえれるものではない。わかっているから一層強くかえりたいと思う。かえりたいかえりたいと胸の内で唱えながら君は長い一日をすごす。


恐ろしく
苦い野菜を
食べるため
いま原点の
ジャワにかえろう

折句「鬼退治」短歌

ルー(折句の扉)

2018-02-28 01:39:52 | 折句の扉
昨夜の他殺体の記憶がまだ残っていた
「そいつが悪いんだ」
「あんたがやったのか」
男は何も答えない
その時、不意に死体が動いた
「はー、疲れた」寝返りを打つ
「大丈夫ですか?」
死んだ風で死んでいない
「救急車をお呼びしましょうか?」
もはやその必要もない
死体は完全に息を吹き返した
平和な夜だった

主人公の台詞に驚いて顔を上げた
拍子に強く後頭部を打った
「いたた!」
店中に君の声が響く
店じゃない そこは自分の部屋だ
まだ少し記憶が混乱していた
雨か 
雨が降ってどこにも行けない

カレーが食べたい

出前を頼んだ後で君は無性に音楽が恋しくなる
ヘッドホンをつけていたらチャイムを聞き逃してしまう
出前というのは救急車でくるものだ
君は思い直してキーボードに向かった
安心してヘッドホンをつけると折句の扉が開いた

空腹が揚げ豆腐を引き寄せ
歌は雨と容易く結びついた
雨粒がケトルの首を説き伏せる
雨音は鍵盤上で富を得る
雨足は獣を越えて鳥になる
雨降りの気怠い午後に

雨宿り剣を交えた
雨乞いの玄武岩には
雨蛙 アメンボの 飴玉に 

あめ あめ あめ あめ あめ
雨はいま 雨上がり
そっと誰かの手が君の肩に触れた
テーブルの上にライスが盛られた皿が置かれていた
救急車などではなかった
出前は普通にやってきたのだ

君はヘッドホンを外した
男は何事もなかったように帰って行く
大家さんか(いや大家さんはもっと歳をとっている)

「どうやって入った?」

男は振り返るとキーホルダーのついた鍵を掲げて見せた
腰を低くしながらこちらに顔を向けたまま後退していく
何も言葉を発しない
(寝た子を起こしませんからという顔)
うっすら笑みを浮かべたまま
男は玄関から消えてしまう

おい!
「ルーはどうした?」


縁深き
通りすがりは
しあわせを
くれてひらりと
去るものである

折句「江戸仕草」短歌




単独ライブ(アクロスティック)

2018-02-27 12:30:45 | 短歌/折句/あいうえお作文
鬼の鼻歌が妙に耳障りだった。隣で聞かされていると自分の歌に集中できなかった。何か邪魔されているような気がする。気持ちよく歌っているようにみえると余計に気に障った。鬼が鼻歌を歌っている。何気ない普通の仕草である。
(鬼が)だから異質のものに変化した。

憎しみや敵意というものは、無関心よりも好意に近づきやすいというが、本当だろうか。鬼が何だというのだ。鼻歌が何だというのか……。鬼の鼻歌がやんだ。

鬼が口笛を吹き始めた。


おしゃべりな
人間たちの
対極で
一本木となり
自立する君

折句 短歌「鬼退治」

トライルール

2018-02-27 09:12:28 | 短歌/折句/あいうえお作文
厄介な状況に置かれた時は逃げ出すことを選んだ。君は迷わず逃げた。傷つくことも傷つけることも必要ではなかった。新しい場所には素敵な未知が開けていた。かまうものは何もなく、君は大きく息を吸うことができた。次第にまた厄介なものが迫ってくる。新しさは長続きはしないものだった。ためらうことなく君は逃げた。逃げ場所はいくらでも見つけられた。見つからない時にはつくりだすこともできたのだ。


お前さん
逃げの一手で
戦うの
怒れる龍を
自陣に置いて

折句 短歌「鬼退治」

鬼カルタ

2018-02-27 01:18:20 | 短歌/折句/あいうえお作文
 矢倉を倒すほど鬼退治は簡単ではない。穴熊以上にそれは難しいのかもしれない。以前は通用した戦術が、少し時間が経てばもうまるで通用しなくなっている。
 鬼の動きは、人間が考えるよりもずっと機敏だ。見た目で判断することはとても危険なことだ。十分に理解しているはずのことが、鬼を前にした後では、冷静さを欠いてできなくなってしまうこともある。
 鬼を日々強くしているのは、鬼の学校ではなく、鬼自身でもない。それは他ならぬ人間の母だ。世界中の至るところで、今この瞬間にも鬼は読まれていることだろう。無数の母によって読み聞かされ、読み倒された鬼が、人間の心も読んで強くなっていくとしても、何の不思議もない。その声を聞き大きくなった子が、鬼へ向かうことは必然だ。その心の奥に決して捨てきることのできない郷愁が残っていることも含めて。


おそろいの
ニットをつけた
タクとキク
いろはカルタの
しはぼくがとる

折句 短歌「鬼退治」

まぶしい(アクロスティック)

2018-02-26 08:13:06 | 短歌/折句/あいうえお作文
 壁に夏がまだ貼りついている。整列した数字の上を走る黒い線が、過ぎ去った日々であることを語っている。振り返る意味も感じられず、いつ捨ててもいいと思えた。そう思いながらまたダラダラと月日が過ぎてしまう。とっくに役目を終えた数字の上には、アスリートが立っていた。老いることも動くこともない。永遠の夏の上で、夢見るような瞳をしている。

8月を
並べた壁を
見つめれば
すぎた暦に
君は凛々しく

折句 短歌「ハナミズキ」