折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

忍者にシャワー

2015-10-01 02:55:01 | ショートピース
自分を消せない忍者が背伸びして雨雲を消そうと術を使った。雲の流れは変わったが術のためかは不確かだった。黒の群が頭にやってきて容赦のない糞を見舞った。「自分も消せないくせに!」日曜を行楽日和にする術は今日も失敗だった。しばらくすると雨のシャワーが忍者の頭を撫で始めた。
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ねえ

2015-09-10 02:16:10 | ショートピース
ねえと呼べば彼女だけが振り向く。いつの間にか彼女の代名詞となり、皆は親しみを込めてねえと呼んだ。本当の名が戻ってきた後も、本当の名で彼女を呼ぶ人は稀だった。少女の面影が消えた後も、尊敬を込め「ねえさん」と呼ばれた。
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映画監督

2015-09-08 05:07:38 | ショートピース
ご飯を食べていると明かりを消した。「映画館」少年は言った。おかしな形で記憶に残ったらしい。お菓子を食べていると明かり消した。少年はよく怒られた。ロマンチックな演出が、日常の生活には差し障りを生むからだ。いたずらを卒業した少年は映画監督になった。本当の明かりを見せるために。
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ロボット小説

2015-08-06 06:51:46 | ショートピース
おじいさんは万年筆一本持って机に向かっている。ずっと日の目をみない小説を書いていた。現在は、ロボットによる自動作成小説が主流だった。「ロボットなんかに負けるか」いつもの口癖だ。「でもロボットを作ってるのは人でしょ」「だから負けられんのじゃ!」おじいさんはロボットによって地球が支配される時代小説を書いていた。
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現実うつつ

2015-07-28 04:50:24 | ショートピース
仕事にうつつを抜かして3日間もログインしていない。見知らぬ人からのメールやリプライを放置したまま、先輩や上司への挨拶や気配りには余念がない。あなたは自覚がないようだが、ここまでくると完全な現実依存症ですね、と先生は深刻な顔をした。あなたにとって本当に大事なものを見極める時です。
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おかわり不自由

2015-07-23 03:40:02 | ショートピース
自由の前に小さな不がついていた。だまされた! おかわりできないなんて。煮付けをまだ半分も残して、立ち上がったところで気づかされるなんて。それは僕だけではなかった。空っぽの腕を持って、途方に暮れる人たちが、僕を囲むようにして。みんな膝をついて頭を下げる。釜が開いて、猫が顔を出した。

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最後の引き出し

2015-07-14 04:48:24 | ショートピース
引き出しの中は空白の一日だった。しばらく眺めていたが気が滅入って閉じた。二番目の引き出しを開くと悪夢の一日が入っていた。恐ろしくてすぐに閉じたので指を詰めそうになった。三番目の引き出しには激動の一日が入っていた。密度に耐え切れず閉じた。私が忘れたのは、どんな一日だったろう。不確かなまま、最後の引き出しに手を伸ばした。
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ひねくれた逮捕

2015-07-13 05:44:31 | ショートピース
交番は自転車屋の中にあった。アクロバティックに積み上げられた車体の中に疲れ果てパンクした逃亡者がたどり着く。輝きの中で新しい旅立ちを夢見ながら奥へ奥へ。無数に見える車輪を潜り抜けて両手は錠の中に吸い込まれている。「こんなはずじゃなかった」素直な人はこんな捕まり方をしないものだ。
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ダンスのルール

2015-06-23 01:55:50 | ショートピース
踊りながら食べている。さぞかしそれは楽しいでしょうと言うと若者は顔をしかめた。「僕らは踊るために食べているのです」同じ踊りでも、純粋に踊るのはアウト、口に含んでいればセーフ。それがこの町のルールと言う。「アホウな話でしょ」顎と足とを忙しく動かしながら、若者は笑った。

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闇の缶詰

2015-04-10 04:17:30 | ショートピース
缶詰の中から生まれ出るファンタジーを信じて閉じこもった。一度入ればどこにも出口はないことはわかっていた。今までの記憶と想像を融合して世界を広げるしかない。蓋は誰かによって開けられる。それは一度だけのチャンスだ。一瞬の美しさのために、私はいま全力でここに閉じこもっている。
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内部告発

2015-04-07 05:26:29 | ショートピース
傘をさす大勢の人々の向こう側で笹をくわえた唇が揺れている。黒と白が溶け出して交じり合うことを恐れ木のてっぺんまで登ったパンダの正体が知れたのは、触れ合い広場からの告発だった。本当は太った関西人。

「えらいすんまへん」

子供たちの期待に答えたかったと園長は謝罪した。

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ラリー

2015-04-03 07:11:30 | ショートピース
心の中で一つずつ打ち返す日々だった。打ち負けてなるものか。得体の知れぬものなんかに。必死でラケットを振る内に、心は徐々に無に近づいていった。

「私は何かと闘っているのか、それともただ遊んでいるのだろうか」終わりのないラリーに鍛えられて、少し筋肉がついてきた。
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偽装遊戯

2015-04-02 04:45:10 | ショートピース
イベリコ豚とまーさん豚はどちらが本当に強いのか?

素朴な好奇心から始まった戦いは観客の期待に耐えかねて変色していった。クラウド化されたGPS技術の下、完全なコンピュータ制御の中で、見せることと見せかけることの区別が失われた。純粋さと人々が離れて、結末を迎えた。
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四季を愛する人

2015-03-31 05:04:34 | ショートピース
長い沈黙をすべての終わりの合図にして、みんなは帰っていった。

「しーっ、声を出さないで」誰かが言って、更に長い沈黙。

ほとんどの人は、空白の先にあるメロディーなんて待ちはしない。夏が来た。冬が過ぎて、また春が来た。秋が深まった。四季を愛する人が、まだ残っている。
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猫タクシー

2015-03-27 02:22:28 | ショートピース
「運転手さん。前の車を追って」
「へっ、前の奴なんか追えるかよ」
運転手はなんだか不機嫌そうだ。
「いつからこの仕事を?」
「ふん。相手を見てから物を言えよ」
そう言えばさっきからまるで景色が動いていないのは、何か妙だった。
「運転手さん?」
私の手の中で、眠っている。
拾ったのは、猫だった。

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