狐のへりくだり 2020-11-25 22:09:00 | 幻日記 「いつもつままれさせていただいております」 どうぞどうぞと紳士は腰が低く無防備に見えた。 どうもパワーが出ない。苦手なタイプだ。 化かしが発動しないと狐は思った。 ドアのない金庫は破ることもできないのだ。 どこかにもっと見下してくれる者はいないのか……。 それならどれだけ自分の力を出せることだろう。「ちょっと休まさせていただいております」 人間みたいな言い回しをしている自分を狐は恥じた。 獣度が日に日に薄まって行く。
グッバイ・モーニング 2020-11-25 06:10:00 | オレソン 狂った夜を抜けて潜り込んだ街のアンダーグラウンド「たばこ吸えます」8時から全席喫煙可能ちがうちがう俺が探しているのは地下世界を抜け出して駆け上がったショッピングモール営業時間は11時からここはまだはやすぎる駆け下りるエスカレーター交差点で待つ人々に交じる行き先は風にまかせて西へいつかもみたセルフカフェ「ホットドッグとホットコーヒー」「…………よろしいですか?」「えっ?」単品だと550円モーニングだとサラダに玉子、小話までついて470円!?どうなってんだモーニング!俺は番号札を乗せて店の奥へ向かう3席だけのノースモーキングにその先は見通せないほど遙かまで喫煙エリアが伸びているパーティションのない世界から漂ってくる黒い煙と小話の断片いつまでもこんなところにはいられないぜグッバイ・モーニング
【短歌】うまいもんだね 2020-11-25 02:45:00 | 短歌/折句/あいうえお作文 ミミズクに束縛された作戦で再調査せず生き残るサイ(折句「ミソサザイ」短歌)そばつゆと校正をするかけすぎた七味が燃える交換日記(折句「そこかしこ」短歌)宝石の目玉を寄せてゴロゴロとロックオンしたししゃもの干物(折句「ほめ殺し」短歌)温度差が問題化した停留に夏が残した白滝の麺(折句「おもてなし」短歌)ユリの根にキックを入れてひねられた羊羹ですか美味いもんだね(折句「ユキヒョウ」短歌)かつてない家系を抜けた溝のした生き抜く術は知らぬ存ぜぬ(折句「鏡石」短歌)
くつろぎのひと時 2020-11-25 00:50:00 | ナノノベル 「いつまで荷物背負ってるんだ?まだどこか行くのか」 そんなつもりは少しもなくても、そんな風に映ってしまう時がある。誤解というのは、ごくありふれた日常の風景である。「今は落ち着く時だろう。くつろぎの宿なんだから。へへ」 くつろぎの形は人それぞれ。 例えば馬よりも速く走っている瞬間、最大限のくつろぎに到達している人もいるのかもしれない。「あっ、お構いなく」「えっ? 一部? リュックじゃない?何? 甲羅? へー、そうなの……」 地球人を見るのは初めてらしい。