ねえと呼べば彼女だけが振り向く。いつの間にか彼女の代名詞となり、皆は親しみを込めてねえと呼んだ。本当の名が戻ってきた後も、本当の名で彼女を呼ぶ人は稀だった。少女の面影が消えた後も、尊敬を込め「ねえさん」と呼ばれた。
ご飯を食べていると明かりを消した。「映画館」少年は言った。おかしな形で記憶に残ったらしい。お菓子を食べていると明かり消した。少年はよく怒られた。ロマンチックな演出が、日常の生活には差し障りを生むからだ。いたずらを卒業した少年は映画監督になった。本当の明かりを見せるために。