折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

フライング   

2009-12-24 23:59:01 | 猫の瞳で雨は踊る
「生きなきゃダメだよ。あんたは生き物なんだから。
死んだら楽になるなんてのは、迷信だよ」
けれども、ネコは飛んだ。雪をまといながら飛んだ。

10階の部屋の中が見えた。
24を見ながら、男がケンタッキーフライドチキンを食べていた。
男の指先が、雨に濡れた向日葵のように光った。

ネコは落ちてゆく
ネコは落ちてゆく

9階の部屋の中が見えた。
家族が鍋を囲んでいた。キムチ鍋だった。
父が手にしているのは缶ビール。ドライと書かれていた。
鍋から湯気が立ち上がる。蜃気楼のようだった。

ネコは落ちてゆく
どこまでゆこうか
そうだちょうどそこまでだ

8階の部屋の中が見えた。
男女が抱き合って眠っていた。
「ねえ、私のどこが好き?」
「どこもかしこも、世界中で一番好きさ」
女の瞳が、絵空事のように輝いた。

ネコは落ちてゆく
もうどこへもゆけない
色んなものがみえる

7階の部屋の中が見えた。
難しい顔をした二人がテーブルを囲みチェスをしていた。
「チェックメイト」
男は、そう言って瞬間窓の外を見た。
逃げ出しそうなクイーンを指でつなぎとめながら。

ネコは落ちてゆく
どこまでが過去だったか
ここはどこだったか

6階の部屋の中が見えた。
ベッドの中には男の子がいた。
母親が絵本を読み聞かせている。
「クマさんは、ライオンさんに言いました。
僕たちは、同じ生き物だよね」

ネコは落ちてゆく
いきたいとこもあったな
どこかで声が

5階の部屋の中が見えた。
新しく越してきた人たちだ。
一つ一つダンボールを開けて、中を見ている。
「プレイステーションはどこ?」
「アルバムは、持ってきた?」

4階の部屋の中が見えた。
少女は遺書を書いていた。すべての世界を閉じた。
----もうこれでおしまいにします。
少女は遺書を早くも書き終えた。それから、彼女は死へ向かう。
ネコは、もう彼女を助けることができないのだと知ってしまった。
不思議な気持だった。
なぜ、あの時、耳を傾けようとしなかったの……。

ネコは落ちてゆく
戻らない夕日のように

3階の部屋の中が見えた。
そこには誰もいなかった。
それが、ネコの見たものの最後だった。

ネコは落ちてゆく
ネコは落ちてゆく

2階の部屋はカーテンを閉め切っていた。
その中では、ものかきがものを書いていた。
ものかきは、朝から晩までそうしていた。
けれども、ものかきは次第に時間を忘れた。

1階の部屋では、母がみんなの帰りを待っていた。
待ちながら、料理の最中だった。
まだ、誰一人として帰ってはいなかった。
晩御飯は、カレーライスだった。


*


マキは、眠る猫からケータイ枕を奪い返し開いてみた。
タワー状の散文が全身を突き抜けた時、夜は少し寒さを増した。
ねえ。ノヴェル。
「死」なんて、難しい言葉を知ってるのね。
難しい猫なのね……。


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こいのうた

2009-12-24 23:13:31 | 短歌/折句/あいうえお作文
この夜は
イヴと呼ぶだけ
の夜だよ
歌ってあげる
退屈ならば

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雨と缶コーヒー

2009-12-22 17:21:56 | 猫の瞳で雨は踊る
ぼくの毛は地毛だよと書かれたTシャツが売られている街角で、ぼくらはバスを待っていた。
もう何日か待っていたのだが、今日は特別に雨が降りそうだった。

「もうコーヒーがなくなりそうだよ」
缶を揺すりながら、ぼくは言った。

「ケイジくんという友達が、いたような気がするんだよ。
小さかったから、わからないけど」
地面に鉛筆を立てながら、男は言った。

「ケイジくんは覚えているだろうか。
どっちでもいいけどね。
昔のことだから」

降り始めた雨に、ぼくは缶を差し出した。
「これでコーヒーが蘇ったよ」

「半分は、雨だろうけどね」

「薄まったコーヒーだよ」

「キミにはいないのかい?」

疑問符が大きな水溜りを作り、その中に夜を映し出していた。
夜は、始まったばかりのようでもあり、終わりかけているようでもあった。
車輪を引きずりながら、夜とは別の生き物がぼくらの前に訪れた。

「ぼくは行くよ」
雨の中で、男の声が聴こえた。

「あれがバスに見えるのかい?」

「それでも、ぼくはあれで行くよ」

ぼくは、動かなかった。
疲れて遠ざかってく男の背中に、缶コーヒーを掲げた。
光は車輪をつれて走り去り、ぼくはコーヒーを飲み干した。
もう、味はなかった。


*


瞳を閉じて雨音を聴く猫から、マキは自分のケータイを取り戻し開いた。
ケイジが頭の中で刑事に変換されたので、一瞬身構えてしまった。
「雨の日のバスって嫌よねえ。
傘から雫が、ぽつぽつとするから……」
けれども、次第に強まる雨に、マキの感想文はすっかり呑み込まれてしまった。
バスは、来なかった。



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ジョナチャンのお使い

2009-12-18 17:18:29 | 猫の瞳で雨は踊る
ペンギンは、野菜を求めてスーパーに足を運んだ。
特売日らしくスーパーは大勢の人でごった返していて、ジョナチャンは目をぱちくりとした。
そうして、何も買わずにスーパーを後にして、ジョナチャンはペタペタと歩いていた。
あーあーあー。家の人に怒られちゃうな。
煙草屋の前には、猫が心配そうな目をして佇んでいた。
道に迷ったの?
野菜を買うんだよ。ジョナチャンは財布を見せて猫に行った。
だったら、あっちに行くといい。猫は、指示棒を伸ばして指し示した。

空には、鳥が飛びながら絵を描いている。
あれは、ライオン。あれは龍。あれは松の木。
ジョナチャンは、空絵を見上げながら歩いた。
ライオンが松の木を食べた。龍がライオンを吹き飛ばした。それから自分も吹き飛ばした。
野菜は全然描かれなかった。

八百屋の前を、ジョナチャンはペタペタと歩き回った。
バナナがかごに盛られていた。みかんがかごに盛られていた。
店の人らしき人とすれ違ったが、らしきは無言のままだった。
地べた付近に置かれたニラは、かごからはみ出して、もう地べたにくっついていた。
ジョナチャンは、踏まないように注意した。
行ったりきたりしてみたが、らしきはやはり無言のままだった。
ここは八百屋じゃないかもしれないな。

空では、鳥が飛びながら絵を描いている。
あれは、力士。あれは、オルガン。あれは空手家。
ジョナチャンは、空絵を見上げながら歩いた。
力士がオルガンを弾いた。空手家も並んで弾いた。
オルガンが弾けて飛んで、みんないなくなってしまった。
野菜は全然描かれなかった。

「いらっしゃい!」
ジョナチャンは、八百屋の威勢に酔い痴れた。
「トマトが安いですよ!」
ジョナチャンは、いらないと言った。
「他に果物はよろしいですか?」
ジョナチャンは、いらないと言った。
「はい。550万円!」
「あー、10円玉、助かります!」
「またお願いします!」
酔い痴れながら、ジョナチャンは八百屋とさよならした。

「おかえりなさい」
どっさりと野菜を抱えたジョナチャンに、猫が呼びかけた。
空には、今はぶどうや、梨や、キュウイが描かれていた。
「あなた空は飛べるの?」
ジョナチャンは、リンゴが染まっていくように顔を振った。
「そう。私も、飛べないの」
ペンギンは、一瞬ぎょっとしたように猫の方を見た。


*


「ジョナチャンは、何を買ったの?
 ねえ、ノヴェル」
ケータイの文字列を歩きながら、マキは猫に問いかけた。
文字の連なりも、眠り猫も何も答えなかった。

「鳥は、落書きが好きなの?」
マキは、ノヴェルから目を離して空を見上げた。
漆黒の夜の中で、白い生き物めいた何かが、ざわざわと這い出していく気配がした。

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注入

2009-12-15 16:40:24 | 狂った記述他
------------空気注入無料。

「せっかくだから入れてもらう?」

風船猫は、少し萎みかけていたのだった。
身を低くして、じっと新しい空気が入ってゆくのを待った。
少しするともう風船猫は、ぽっちゃりと膨らんでいて心なしか顔色もよくなっているようだった。
口から息を大きく吐いて、自分の体に微調整を加えた。

「ただでありがとう」僕は、マスターに礼を言った。

「その言葉が、私の心に元気を注入しました」

「また来ます」

*

「死んだ利休が映っています」

「だったらそれは先週の分だろう」

「ちゃんと撮りましたよ」

「ならなんで利休が映ってるんだよ?」

*

はちみちとストローのつながりを買ったら、22円のお返しですと言いながら、手の上には220円が載っているものだから、驚いてしまった。
「違うんじゃ?」
数字が違うから、気がついたのではない。
僕は、最初より増えていたから、ただ驚いたのだった。

*

誰もいない交番に入って、風船猫と番をすることになった。
へそ曲がり交番には、ほとんど訪問者はなかった。
時々、散歩途中の犬が紛れ込んで帰り道を尋ねた。
時々、買い物帰りの主婦がやってきて、人生相談を求めた。
時々、宇宙人が侵入してきて、イデオロギーについて論じた。
時々、偽警官がずかずかと来て、なんだキミはと言った。
風船猫は、すっかりくたびれたようだった。
僕も少しつかれてしまった。

*

四捨五入を終えて、僕たちは夜の街へ繰り出した。
円周率はちょうど3を回ったところだった。
「冷たいビールあります」という紙と僕たちは目が合った。
こんなところにあったんだね……。

「あんたに飲ませるビールはないね!

それはあんたが猫だからだよ!

なんだって? なおさらないね!

風船猫だって? さらさらないね!

あんたらに飲ませるビールなんて!

一滴だって ありゃしない!

ひっくりかえっても やりゃしない!」

*

僕たちはゆっくりと萎んでいった。

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夢をあきらめないで

2009-12-13 14:19:11 | 何でもええやん
おばちゃんがちゃんと作ったみそちゃんこ


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誰か

2009-12-12 08:58:41 | 猫の瞳で雨は踊る
拒絶が私の体内を満たし終えると、私は何も受け付けなくなった。
最も身近にあったものたちを、最も遠ざける生き物に私はなった。

「どうして? 食べないの?」

「あんたが人間だからだよ」

「あなたも人間よ」
母は言った。

確かに母の言う通りだった。
扉を開ければ、そこに人間がいる。
声をかければ、そこに人間がいる。
スイッチをつければ、そこに人間がいる。
街を歩ければ、そこに人間がいる。
どこへ行っても、どこまで行っても、そこに人間がいる。
いるのは人間ばかりだ。

「人間なんてもううんざり」
言い残して私は人間世界から出て行った。



硝子の向こうに猫はいた。
こちらをじっと見ている。

「こっちにおいで」
猫は硝子越しに近づいて、ついに硝子にぶつかった。
硝子の上に身を乗り出して、両の手を透明な壁に当てたり、擦り合わせたりした。
猫は、まるで硝子の檻の中に閉じ込められているようだった。回りさえすれば、こちらに来れるのに。
「こっちにこい」


 誰も訪れない
 庭を一人眺めていると
 胸がちくちくする

 こい こい こい

 呪文を唱えてみても
 誰も訪れないまま

 こい こい こい

 いったい自分は
 誰の訪れを待っているのか

 これはきっと
 こいだよ

 もう忘れてしまったか

 わからないこれこそが

 こいだよ 


「回っておいで」
けれども、猫に声も言葉も届かなかった。
「待っていて」
私は硝子を回り、硝子の向こう側に渡った。
背後でかちりと音がして、私は閉じ込められた。
硝子の檻の中に猫はいなかった。そこは深い闇の世界だった。
冷たく邪悪な空気が私の皮膚に付着して、私を分解しようとする。歩き回ると、すぐに硝子の壁にぶつかってしまう、そこは考えるより遥かに狭く逃げようのない空間だった。出たい。ここから何としても。私は割れんばかりに暗黒の硝子を殴りつけるが、手は壮麗な水槽の中で未知の魚を追うように力ない遊泳の果てにきーんという音を返すばかりだった。血を流すこともできない私は、淀んだ硝子の中でどんどん小さくなってゆく。帰りたい。どこか架空の場所に。私は叫ぶ。

「助けて!」

「誰か、助けて!」
私は必死で助けを求めた。けれども、声は硝子に反響するばかりだった。
その時、突然複数の影が檻の隅々でうごめき始めるのがわかった。
それは無数の狼たちだった。

「呼んだかい?」


*


「狼たちは悪者?」
ノヴェルから奪い返したケータイを開き、マキは夜の中で文字を追った。
手短な猫の文字列は、やすやすと流れ瞬時に不完全な結末へとたどり着く。

「それともいいもの?」
猫は、人間の言葉に反応を示さなかった。
硝子の瞳を夢のまぶたに包みながら、微かに寝息を漏らしていた。

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火星タイムスリップ

2009-12-11 14:27:48 | 狂った記述他
テーマはトカゲまたは自由だったが、未だに決まらない。
決めかねながら、僕は火星の参考書の場所を訊いたのだった。
男は、少々の間僕を待たせるだけにしたかと思うと、歩き出し、時々僕の方を振り返りながら森の奥に入っていったのだった。
「ここです」と言いながら、男の視点は定まってなく、手は正解を探して宙を彷徨っている。
何も言わずに、僕は別の場所を探し始めた。
本当のここはどこなんだ?

ここはプールだった。僕は集団を抜け出して、密かにラーメンを食べた。
戻るとプールに入った。それはキムチのプールだった。
「浅いじゃないですか」と先生に当然のことを言う。
浅すぎて泳ぐことができない。普通の方法では泳ぐことができないので、僕は普通以外の方法で泳がなければならないけれど、そうしているのはどうやら僕だけで、みんなどこかへ行ってしまっていた。
何もかもが分散化していく散文の中で、僕は面白いものに丸をつけなければならない。きっとそのような試みの後に、僕は己という秘密兵器に打ち負かされるのかもしれない。自分に負けることは、いずれにせよ勝った自分の味方につけばいいのだ、と悪魔の口づけをハーモニカの光沢でかわして。
努力に打たれた先生は、水位を上げてやると言った。
一握りのキムチをもらい、プールの中に投げ入れたが、水位は少しも上昇しなかった。
からっきしおかしく、到底届かないワイン塔が意識の中で傾いていく。
ラーメンを食べて帰ってきた生徒たちが、ジャンプ台の上で溶け出しながら馬になっていた。
けれども、誰も飛び立とうとはしなかったのだ。

カプサイシンに輝きながら、塩分だけを洗い落とした僕は探していた。
五十音を超越した場所に、ここがあるのだとしたら僕の探す場所はどれも間違っているような気がしたし、もっと根本的な間違いが僕を形作っているせいで、森の中での僕を夕闇の中の羽根にしているのかもしれなかった。
「ここです」と言った男は、星明りに手を触れながら、プラネタリウムを登り始めていた。
そんなところにあるものか……。
否定の表現が、やがて降りてくるまで僕はじっと待っていた。


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寂しさの行進

2009-12-11 11:28:36 | 猫の瞳で雨は踊る
----過去に流れていくのは嫌だから、私はもう行進を止める。

猫は、句点を打ち終えてケータイを閉じた。


*


猫が眠りに落ちた後、マキはそれを奪い返して開いた。
猫の一行が現れた。
ねえ、ノヴェル……。
歩いていかなきゃダメだよ。ダメなんだよ。


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猫と小判

2009-12-01 13:34:14 | 猫を探しています

「費用はきっちり100万円いただきます。
 猫を探し当てるということは、大変な時代になっているのです」
 お安いものだった。それで猫を見つけることができるのなら、少しも惜しいことはなかったし、その場で払ってもかまわなかった。
「少し考えさせてください」
 僕は、そう言って猫探偵事務所を後にした。100万円……。
 それからずっと、お金のことばかり考えていた。寝ても覚めてもお金のことを考えていたし、時には枕がお金のように見えて眠りを妨げることもあったのだ。猫を探すこともやめてお金のことばかり考えているのだった。だんだんと気が変になりそうになった。猫のせいではなく、お金のせいだった。

 ATMを目指した。けれども、入り口の前には、数字フィールドが張られていた。
 7が危険な角度で襲い掛かってきたので、切り落とした。すると4が上から降りてきて何か怪訝な顔を見せた。無視していると9がのんびりと風に乗ってやってきて自己紹介するので、すぐさま僕は切り捨てた。3と8が挟み込むように迫ってきたので、咄嗟に身を屈めて同士討ちを誘うとそれは巧くいった。その時、9が戻ってきたので僕は一瞬目を疑い、金縛りにかかりそうだったが、どうやらそれは僕の思い込みであり、実際のところその正体は6なのだと思いつくとすっかり冷静になり、9と同じようにあっさりと切り捨てた。一息つく間もなく、2が金切り声を上げながら背後から襲い掛かってきたので、僕はそれを肘で振り払い、地面に落ちたところを踏みつけて粉々に砕いた。2は金属的な音を立てて抵抗したが、やがて力尽きて砂のように散っていった。終わりかと思っていると5が体操をしながら近づいてきて、4の隣に来ると絡み合いいちゃいちゃとするので、僕はその間を引き裂いてやった。けれども、どこからともなく現れた0が、僕の首を締め付けているのだった。気を失いそうになりながら首に食い込む0に手を伸ばすが、0は凄まじい力で締め付けるので、僕はとうとうしりもちをついてしまった。油断しているつもりはなかったのに、どうしてこんなことになってしまったのか……。見失いつつある時間の中で、僕は数々の未練を噛み潰しながら過去の反省を口にしていたのだ。
 どうして、どうして、どうして……。
 その時、天上に天使の姿を見た。見ると同時に僕はそれを打ち消していた。
 おまえなんかいない。本当はいないんだ。本当はいないんだ!「どこにもいないんだ!」
 気づくとそれは、声となって出ていた。首を締め付けるものは、もう何もなかった。声に乗って0は飛んで行ったのだ。
 入り口の前に突っ立っている棒のような数字を押し倒して、中に入った。

「よくぞここまで来ました」
 意外にも、待っていたのは人であった。
「随分と数字に強くなられましたね」
「仕方がなかったのです。ここまで来るためには」
 後ろめたいことは何もなかったのに、なぜかいい訳めいた言い方になってしまう。
「あなたが探していたのはこれでしょう」
 女は、高々と金の斧を掲げて見せた。
「いいえ。違いますけど」
「すると、これでしょう」
 そう言って女は、下ろした手を再び上げた。その手の上には、やはり高々と金の斧があるのだった。
 きっと、そうです言うまで同じように、それは、その儀式のようなそれは続くのだろう。
「間違え、  でした」
 そう言って、逃げるように出た。横倒しになった1に躓いた。1は、コロコロと転げて西の方角を指した。

 これっきりにしようと思った。お金のこと一切を頭の中から追い出して、再び猫のことを考えることにした。
 僕は、猫を探しているのだった。少し遠回りして、僕はまた戻ることにした。


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