眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

キーボード演習

2013-05-31 04:07:22 | 気ままなキーボード
改行するにはまだ夜が十分に残っていると監督が言って、僕らはブルガリアヨーグルトの橋を渡った。スーパーの東口は閉まっていて、その先の靴屋もクリーニング屋も花屋もみんなみんな、何もかもどいつもこいつも、本屋もカフェもチキンも占いも閉ざされていたから、ウエスト三百メートル遠回りして中に入ると中にはちょうど各国からの野菜が大量に運び入れられるところだ。そのままでもおいしく飲めるという炭酸水を籠に入れて、泡踊らせながらレジへと向かう。たくさんの旗が揺れ動くのが見えるその中を、新しく呼ばれた選手の名前を秘めて、まもなく長い長い笛が、どこからともなく運ばれてくる。女が下を向きながら立っている二人の内のどちらかをきめなければならない。薄々みんなは気づきはじめたこと。新しい名前なんて呼ばれない。
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フェイク

2013-05-29 07:40:10 | ショートピース
1度も投げたことはなかったが、高く振り被るだけで周りのみんなは心配したり評価したり食べ物をくれたりしたのだ。みんなはきっと「投げたら終わり」と知っていたのだ。みんなの期待を背負い、私はより高く高く振り被る。「ボーク!」人の家の前に立ち、仮面の男が謎の言葉を叫んだ。#twnovel

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リッピング 

2013-05-28 21:51:56 | 夢追い
 水道の蛇口が床下からひょっこりと伸びている。どうしてこれがトイレなのか? そのつもりで今から用を済ませようとしているところに、2人は体育館の中に入ってきた。もう済んだということにして離れたかったが、そうだとすると床に流れる痕跡がなければ道理が通らなかった。その点が近代のトイレと大きく事情の異なるところだった。床から伸びる1つの蛇口のことを、後から来た2人もトイレと認めているようだった。さりげなく蛇口の前を離れると、後から来た者も気遣いを見せて「どうぞ」という仕草をした。もう済んだということにできなければ、ただ単に遊んでいる人という話にはならないのだろうか。
(遊ぶには何もなさすぎる)
 僕はどこまでもトイレの人だった。トイレの前に立ち、トイレの前から離れたのだ。
「出ない」
 何もうまい言葉が出ず、ただ素朴な事実だけが口から出た。
 彼らが去った後、僕はもう1度その蛇口の前に立つだろう。
 しかし、どうしてこれがトイレだろう。自分が認め、彼らがそれを認めたからといってそれは正しいことになるのだろうか。彼らは僕の誤認の後を、一緒に誤って歩いただけなのではないか。そうだとするとこれは共同幻想に過ぎない。
 次の瞬間、正しい勢力が入ってきて、彼らのことを笑うのかもしれない。その時、僕の立場はどこにあるのだろう。
 ちょろちょろと透明なものが流れて、床を這い広がって行く。
 

 聴いたことのない曲が流れた。いいなと思っていると更に知らない曲が続き、そのどれもが魅力的なので胸が躍るような心持になった。
「これ焼けるの?」
「できるよ」
 この弁当箱に入れればいいと友達は言ってくれた。
「今から買ってくるよ!」
 焼いてもらう上に弁当箱までもらうのは心苦しかった。日は暮れているけれど、まだ時間はあると思った。3足靴下を持たせてくれた友達が外まで見送りについてきてくれた。それを店の中の他の商品にこっそり混ぜてレジまで持っていくのだ。友達が何かを伝えようとする声が、交差点を行き来する車の音にかき消されてしまう。少し後戻りして聞いた。
「大丈夫だよ」
 ありがとう。きっとうまくいくだろう。すぐに新しい弁当箱を買って戻るだろう。
 3足靴下を混ぜられる店はなかなか見つからなかった。種類が異なったり、システムが合わなかったり、人が少なすぎたりしたのだ。時間ばかりが過ぎていき、もうその先に希望はなくなった。
(もう店はないな……)
 自分で言い出しておいて、帰路に着くのはつらかった。友達の家が近づくにつれ、千の靴下が両腿に巻きついているような気がした。

 2階倉庫に3足靴下をぶら下げた。
「まだ未清算のです」
 問われる前に先手を打った。
「平然と言うが、これは不正になります」
 検査官の態度は冷静なもので、先手を打ったくらいでどうにかなるものでもなかった。元はというとすべて僕が素直ではなかったせいだった。友達の好意に最初から素直に甘えていればこんなことにはならなかったのだ。できもしない提案をして、友達を面倒なことに巻き込んでしまったのだ。すべては僕が、すべて……。
「僕がすべて悪いんです!」
 2階に上がってきた友達が言った。どこまでもいい奴なのだった。
「その通り!」
「黙って!」
 父がどこからともなく入ってきたので、すぐさま口を封じる。
「僕が悪かったんです」
 新しく3足靴下を出してもらう必要もなかったのだ。洋服箪笥の左下には、新しくはなくても、十分に履くことができる靴下がぎっしりと詰まっていることを僕は知っていたし、知っていながら、友達の優しさに甘えてしまったのだ。何から何まで僕が悪かった。
「もう片付けたよ」
 左下の靴下の類はもうとっくに片付けたと友達は言った。
「それはそうか……」
 左下に靴下を入れていた時代、つまり僕がこの家で暮らしていた時代は遥か昔のことだったのだ。
「そのままだったら気持ち悪いよ」
 僕は笑い、友達も笑い、検査官も笑ったので、これでお咎めなしということになった。
「もめないようにな」
 まとめるように父が言った。
 僕らは何も答えずに、階段を下りた。

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ファイナル

2013-05-23 20:52:07 | ショートピース
主人公の額に当選議員の名が再び走った。最終回、最愛の人に向かって最後の思いを告げる時だったけれど。「あなた、誰でしたっけ?」大事なことを忘れてしまっても、男は余裕の微笑みを浮かべていた。「この後もっと面白いドラマが始まるよ!」人格は既に、次回の主演作に移っていた。#twnovel

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カレーライス

2013-05-17 01:44:49 | 夢追い
 ラーメンにまつわる男女の話を聞いていると小腹が空いたような気がして電車を降りた。カウンター席には2、3人の客がいて、僕が腰掛けた目の前には2、3口のカレーライスが置いてあったので、遠慮なく口に運んだ。なかなかの辛味だと思っているとドアが開いて、手に煙草を握り締めた男が入ってきた。
「まだ食べていたのに!」
 自分が食べているのを今更返すわけにもいかず、僕は手を上げてマスターを呼んだ。
「この男にもう1杯のカレーを!」
 少しのトラブルはあったものの、しばらくして新しいカレーが運ばれてくると2人並んでカレーライスを食べた。どういうわけか、こちらの皿にもライスだけが付け加えられていて、とっくにカレーの方はなくなったというのに、細々と味気ない飯を口に運んだ。男は先に食べ終わり、満足そうに白い煙を吐き出すとそれはこちらも流れてきて、ライスの上を這う間に米粒の1つ1つに新しい力を加えてより強固なライスブロックを形成させた。胃袋に新鮮な空気を取り入れようと僕は煙に紛れながら店を出た。交差点の一角に煙草屋があり、同じ銘柄の煙草を買った。
「プレゼントかい?」
「カレーを食べてしまったんで」
「ごちそうさまを言うんだよ」
 店に戻るとカウンター席には2、3人の客がいて、男はもういなくなっていた。灰皿の中で、半分残った煙草がくすぶっている。
 席に近づくと爆発音がして米粒が飛んだ。
 筋肉質のライスの上では、忙しげにボンバーマンが活動を始めていた。

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ルルの解体

2013-05-16 20:52:38 | ショートピース
ルルと名づけたケーキを少しだけ遠ざけた。見ているだけで十分にしあわせだったから。「この子のためなら頑張れる」無理難題の山、難攻不落の暗号たちと格闘して、私は多くのことを学んだ。ルルの名を忘れる時がきた。「もういいね、ルル」私はフォークを手にして、解体作業を始める。#twnovel

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牛待ち家族

2013-05-08 21:30:28 | 夢追い
 牛丼は45分待ちだった。ボードに名前を書いて待たなければならない。先に待っていた子供がふらふらとして、その内こちらの方に寄りかかってきたので支えた。どこの子なんだ? ポケモンと書かれた下に名前と牛丼(並)と書いて待つ。
「どうしたの?」
 新しくやってきた客が店の奥を覗き込んでいる。
「食器が足りなくなって……」
「うそ。絶対何かある」
 何かわけがある。他に理由があるとひそひそ声で言いながら、案外人は待つ生き物のようだ。待っている者同士で親睦会が開かれることになって、ちょうどバックヤードの奥が野原になっているので、そこで山菜狩りをという話になったが、それには加わらずカウンターで待つことにした。2つ隣の男と少し会話を交わした。

「この辺りで?」
「道の向こう」
「よく来るの?」
「よくというほどでもないが」
 つれの男が瓶を持ってビールを注ぎ、続けてこちらにも向かって来そうな気配を感じたので、目を逸らした。(いっそこのまま出てしまおうか)店外には、制服を着た警官が2人、長槍を真っ直ぐ持って立っていた。何か事件があったのだろうか。その影響で、段取りが遅れてしまったのか、それとも牛丼が一通り作られるのを待って、店長自身が逮捕されるのかもしれない。
「20分待ちです」
 新しく入ってきた客が、店に入ったところで迷っている。
「15分でいけるそうです」
 奥を覗き込んで従業員が細かな訂正を加えると、男はならばと扉を閉めて中に入ると隣に座った。男は2つ隣の男と知り合いなのだった。突然、話題はその男が主導して荒っぽいもの、物騒なものへと傾いていく。気がつくと2本同時に煙草を吸っている自分がいた。これは灰皿か、これもそうか、と灰皿を3つ使いながら、代わる代わる2本の煙草を吸っていた。

 親睦会に行っていた人も、みんな多彩なトッピング材を抱えて戻ってくるとテーブルに着いて満席となった。もう、みんなは相手を名前で呼び合っていて、1つの家族のようになっている。いよいよその時は迫っていた。
 奇妙な連帯感の中で、もう待ち切れないという空気と、残り僅かな待ち時間を惜しむような空気が、交じり合っていた。
「タイトルは何にします?」
 議長がみんなに問いかける。
「待つ屋はどうです?」
 なるほどという声が上がる。
「待つわってどう?」
「うち、その方が好きやわ」
 吉野さんに続いて、賛同の声が、次々と上がった。

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ファーストフード

2013-05-06 18:42:05 | ショートピース
ゴールを決めるだけが仕事ではなかった。後方からのスルーパスに反応してワンタッチでコントロールする。中盤で溜めを作るとその間にマイクに向かってしゃべり出す。「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」リクエストを味方に通すと急いでゴール前へと駆け上がる。時間は1分を切った。#twnovel

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宇宙旅行(やまとなでしこ)

2013-05-01 18:53:15 | アクロスティック・メルヘン
休みの日に行くならどこだろう?
まだみんなの考えはまとまらず、
「東京ディズニーランド!」
なんて言う者もあれば、
「テーマパークがいい!」
しまりのないことを言う者もあって、
行楽の行方も定まらないのでした。

やがておばあさんが、
「まだ宇宙には行ってないわね」
とびきりの提案をすると
「夏休みには宇宙に行こう!」
提案はみんなから受け入れられて、
出発の日を夢見ては、
今夜の月を見上げるのでした。

「やっぱり宇宙に行ったらさあ」
まだ先のことなのに、
時の向こうに想像が膨らんで、
「なんと言っても宇宙カレーだね!」
てるちゃんはカレーが好きです。
「しょーもない! 昨日食べたでしょ!」
これでは先が思いやられます。

「やっぱり宇宙に行ったらさあ」
まだ先のことなのに、
時の向こうに想像が膨らんで、
「なんと言っても宇宙映画だね!」
てるちゃんはディズニーが好きです。
「しょーもない! 水曜に見たでしょ!」
これでは先が思いやられます。

「やっぱり宇宙に行ったらさあ」
まだ先のことなのに、
時の向こうに想像が膨らんで、
「なんと言っても宇宙サッカーだね!」
てるちゃんはセレッソが好きです。
「しょーもない! 日曜に遊んだでしょ!」
これでは先が思いやられます。

「やっぱり宇宙に行ったらさあ」
「まずは地球が見てみたい!」
時の向こうに丸々とした想像が膨らんで、
「なんと言っても地球だね!」
てるちゃんは地球が好きです。
「しょーもない! いつも住んでいるでしょ!」
これでは先が思いやられます。

「やっぱり見たいな! 住んでいると言っても、
まだ見たことはないんだからね。
当然見たいと思うだろうね。
なんと言っても見たいよね。
テレビでだったら見たことはあるよ。
しかしそれは実際に見たのとは違う。
言葉で作った地球みたいなものさ」

休みが近づいていくにつれて、
魔法がとけていくように、
時は宇宙計画を裏切っていきました。
「何も他人になってまで自分を見つめる必要はないのよ」
てるちゃんに向けてお母さんは言います。
出発の日に合わせるようにして台風がやってくると、
根底から宇宙の土台をひっくり返してしまうようでした。

休みの日に行くならどこだろう?
回り回ってようやく答えは出たようです。
「東京ディズニーランド!」
なんて言う者の声に合わせて、
手をみんなで一斉に上げると、
しぶしぶそれに従う者もいたけれど、
「これでいいのよ」   とお母さんは言いました。


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