折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

無台

2019-01-27 04:10:44 | 気ままなキーボード
ずっと楽しみに取っていた
自陣に埋めて無敵の城を構築する
中盤に放って制空権を確保する
ぎりぎりまで引きつけて
大将を一気にしとめる

掌と読みの中で
あふれるほどに
シャッフルしながら
ずっと楽しみに取っていた
主役を張る金や銀
とっておきの飛車
一枚一枚拾い集めてきた歩
数え切れないほどの歩

「先生。きれいにしておきましたよ」

離席している間にそれはきれいさっぱり片づけられていた
落ち葉を一掃したあとの道のように
駒台の上には何もなくなった

「もういらないだろうと思いまして」

彼は立派に自分の仕事をしただけだ

「ああ」

責めも感謝もしていなかった
五段はあぐらのまま窓の外をみた

もう一度風が吹いたら……

振り駒からはじめようか
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もう歌詞は覚えてしまった

2019-01-08 03:01:08 | 気ままなキーボード
「わー美味しそうね」

ささやかな光がこぼれて
ショーケースの中を照らしている
博多とんこつラーメン
旭川しょうゆラーメン
どさんこ味噌ラーメン

身に余る光をあびて
五目チャーハンの五目が輝く
「みんな美味しそうね」
皿からあふれかけた皿うどん
チャンポンの上の具だくさん
あんかけチャーハンの上に張りついたあん

最下層にひっそりと
猫の貯金箱は佇んでいる
「みんな僕のことは呼ばないの」
隣の無口な赤い獅子と並べられて
ああなんだか奴は不気味
もうそんなに照らさなくていいのに

すぐ上の段には易々と光を受けた餃子が
自慢の焦げ目を輝かせている

はい。旭川しょうゆラーメン
それに五目チャーハン
あとあんかけチャーハン
と皿うどん
はい。追加で餃子ですね。
ありがとうございます!

みんなが呼ばれるのを
猫の貯金箱はただ見上げるだけ

「ああ、なんかたまんないね」


昼休み時間の終わったフードコート
さっきまでの賑わいはどこへ消えたの
束の間の休息を終えてみんな戻るところへ
戻っていったのだろうか
残ったのは歌い終えることを知らない野鳥たちと
ここにいるしかない僕だけ

みんながいなくなってから
歌声は一層自由で伸び伸びとして聞こえる
こうしている時間に
もうすっかり歌詞は覚えてしまった

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地獄からの復活

2019-01-02 03:29:35 | 気ままなキーボード
チームは泥沼の連敗地獄から抜け出せなかった。今日もエースは連打をあびて試合半ばにはいつものように炎上状態になっていた。いつものように監督は足取りも重くマウンドに向かう。
「おい。大丈夫か?」
「見ての通りですよ」
「お前を送り出したことは俺の恥だ」
「よくそんなことが言えますね」
「今となってはもう遅い」
「まだ終わっていません」
「形の上ではな」
「形があればいいじゃないですか」
長い長い話し合いの時間が持たれた。審判も観衆も皆が思いやりの精神を持って結論を待った。
「選んだのは私だが、打たれたのはお前だ」
「勿論そうです」
「責任はちゃんと取ってもらうぞ」
「勿論そのつもりです」
エースに発破をかけて監督はベンチに下がった。満塁走者を背負いエースは再び孤独になった。バッターボックスには見覚えのある顔がある。
「お前。さっきはよくもやってくれたな」
リベンジの機会が回を変えずに巡ってきたのは幸運だ。先の結果を踏まえてキャッチャーは慎重にサインを送る。投手は確信を持って頷いた。今度は負けはしない。渾身の一球を強打者の技術が打ち砕いた。見事にとらえられた球は美しい放物線を描いてスタンドに飛び込んだ。またしても満塁ホームランだ。打者は喜びを使い果たしたのか、無表情を保ったままホームに帰ってくる。
仲間たちが自然とエースの元に集まった。
「大丈夫か?」
「大丈夫ではないが大丈夫だ」
「本当に大丈夫か?」
「本当でもうそでも大丈夫だ」
「お前を先発させたことを私は心の底から悔いている」
いつの間にか輪の中に監督が紛れ込んでいた。
「いまさらなんですか?」
「そう。今となってはもう遅い」
「監督。まだ試合は終わっていませんよ」
「そうです。まだ終わったわけではありません」
試合半ばで席を立ち始める人が目についた。賢明な観衆はゲームの行方を既に見切ってしまったのかもしれない。
「帰りたい人は帰ればいいんだ。僕たちは帰らない」
「そうだ。僕たちはまだ帰れないんだ」
「まだ試していない球があります」
「そうか。まだエースのプライドは残っているようだな」
「次こそは抑えてみせます」
「その言葉にうそはないな。どこにも逃げ場はないぞ」
「僕は逃げません」
「そうだ。皆で戦い抜こう!」
「ここから始まるんだ」
「何回でも始められる」
「それが俺たちのダイヤモンドだ」
「おう!」
「よし。しまっていこう!」
円陣が解かれてから間もなくエースは連打をあびて瞬く間に満塁のピンチとなった。走者が一掃されることはもはや周知の事実でさえあるようだった。猛打線が容赦なくあらゆる球種にかみついて放さなかった。試合を通してエースが炎に包まれていない時間は皆無だった。三者凡退。そのような言葉は久しく聞いたことがない。火だるまのエースが中心になってチームは連敗を繰り返した。気づけば最下位の独走状態となり、ファン離れが加速していった。フロントは緊急の会議を開きチームの建て直しが急務であることが確認された。
「君に責任を取ってもらうぞ」
本格的な大改革に向けて監督の続投が決まった。
「チーム一丸となって頑張ります!」

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蕎麦屋イン・ザ・スーパー

2018-12-01 11:10:10 | 気ままなキーボード
2度3度足を運んだ
蕎麦屋は暖簾をおろし
門を閉ざし
告知もメッセージもなく
壁になった

壁はいつになっても無口なまま

今は力を溜める時なのか
密かに新メニューの開発が進んでいるのか
店主は遠く修行へ旅立ったのか
いつか戻ってくるのか
その内に復活するのか

壁の向こうに眠るストーリーを見ずに
前を通り過ぎることができない

壁伝いに歩けば先にはたこ焼き屋がある

ここだけじゃない
蕎麦屋はここだけじゃない
踏切の向こう側にもある
国道沿いにもある
知らないところにもきっとある

蕎麦なんて好きでもないわ
カツ丼食べたいな

動きを見せない壁が また12月を迎える

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カップヌードル

2018-11-30 03:36:01 | 気ままなキーボード
ふつふつとわき上がる涙が
車窓の向こう側を満たしていた
「お見送りの方は白線までお下がりください」
じゃあね
元気でね

「間もなく蓋が閉まります」
バイバイ
バイバイ
バイバーイ……


「もう向こうに着いた頃だね」
「そうね」
「ちゃんと食べてるかな」
「大丈夫だよ」
「だといいけれど」
「何とかなるよ」

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伸びた男

2018-11-27 01:10:45 | 気ままなキーボード
お湯を注いで
カップに被せた蓋は
現実の世界を閉じた

テーブルに顔を伏せて
男は眠ってしまった
3分間はとてもじゃないが
10秒だって
男は持ちこたえられなかった
膨らんでいくヌードルの前で
穏やかな寝息を立てながら

それはまだ誰のものでもない
口をつけることはなかったけれど
きっと深い絆で結ばれている
男はとてもしあわせそうな顔をして
夢の中にいる

カップヌードル
次の世界で 
きっと逢いましょう
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おじさんパワー

2018-11-23 01:54:05 | 気ままなキーボード
しょーもないのー

トマトオムライスに向かっておじさんがケチをつけた
しょーもない ふん
チーズオムライスにハンバーグオムライスに
ふん しょーもない
音を立て走り去るスケートボードに
ラジオから流れるJポップに
ゾンビとミイラのパレードに
くっだらない! しょーもない!

「おじさん。何をそんなに怒っているのかな」
「仕方がないの。生きるためには」
「どうして?」
「怒りを食べて生きているのよ」
「怒りを?」
「そう。おじさんは怒りを食べて生きているの」
「本当?」
「そうよ。だから許してあげなくちゃ」

怒り
それはおじさんを走らせるもの
それはおじさんを笑わせるもの
それはおじさんを食わせるもの
怒り
それはおじさんを生かしてくれるもの
「バカヤロー!」
ロビーに下ろした革靴におじさんは怒りを語らせることができた

「どうしてそんなことができるの?」
「おじさんだからよ」
「おじさんだから?」
「そうよ。おじさん本当はとてもシャイなの」

しょーもない! ふん

オープンカフェの進出におじさんが目くじらを立てた
どこまで出てくんねん
ふん! しょーもない!
出てこんでええねん 出過ぎやで
オープンすぎんねん ふん! しょーもない!
他に出るとこないんかい 
もうよその土地ちゃうか 出過ぎやねん
ふん! しょーもない! 引っ込んどけ! アホ!
どこまで出てくんねん! 他の店の敷地やで
中でおとなしゅうしといたらええねん
なんやねんな ずるずるずるずる出しゃばってきよって
ふん! しょーもなー!
何がおもろいねん ふん! しょーもない!
しょーもなーい!
出過ぎやっちゅうねん ふん!

「おじさんは何にでも怒れるの?」
「そうよ。それが唯一の才能よ」
「本当に何にでも怒れるの?」
「そう。自分の外側にあるすべてが怒りの対象なの」
「すべてが?」
「それは自分だけでは作り出せないの」
「へー。そうか」
「だからみんなそれをわかって許してあげるの」
「そうなんだ」
「どうしたの? 何か不安そうね」
「僕もおじさんになるのかな」
「そうね。いつかはね」
「いつか?」
「きっとなれるわ」
「そうか。なれちゃうんだ」
「誰だって心の中におじさんを飼っているんだから」





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マザー・スタンダード

2018-11-17 21:17:21 | 気ままなキーボード
年をとった母がおでんのパックを買っていた
特売のコーナーに置いてあるとついつい手が伸びるという
年をとった母がレトルトカレーを買っていた
3つ入ったパックの奴
年をとった母が大粒の梅干を出してきた
通販はもうやめるという
年をとった母が出雲そばのパックを出してきた
消費期限は12月に迫っている
年をとった母が納豆のパックをどーんと置いた
年をとった母が畑の葱を抜いた
葱だと思ったら玉葱だったという(にんにくかも)
年をとった母が食器棚の中からカップヌードルをみつけた
年をとった母がわさびを絞り出した
賞味期限は2018年の2月で切れていた(やっぱりね)
年をとった母がキッチンに立っていた

8時45分 もうすぐバスがくる時間

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本日のディナー

2018-10-31 01:14:00 | 気ままなキーボード


ご飯
漬け物
納豆
ヨーグルト
ヨーグルト2
ほうれん草マヨネーズかけフライドオニオンのせ
焼き玉ねぎ
タジン鍋(豚肉入り)

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セーブモード

2018-10-30 22:36:42 | 気ままなキーボード
どうした、きみ
何か元気ないね

ふふ、まあ、普通っす
あなたに見せる元気はない
ぼくがうそつきになってしまう
さようなら 

かけていく鉛筆がいま手の中にある
だけではなくてもう一つあるとすれば
もっと遠くを向いてかけていけるだろうか
折れたり尽きたり消えてしまったり
そんなことを何も恐れることなく
振り返っても立ち止まっても
ただただつまらないと他人に見下されても
やっぱり前を向いてずっとずっと
かけていくことができるだろうか

あるいはもうぼくは持っているのかもしれない
いまはもう忘れてしまったけど
最初からポケットの奥にとってあったかもしれない

いまはまだ確かめることはせずに
何かを恐れながら行けるところまで

ポケットに手を入れて歩くのは12月までとっておこう
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ゾンビ・ゴール

2018-10-26 15:20:46 | 気ままなキーボード

 緩いディフェンスの間を縫って俺はゴールへと突き進んだ。一度俺の間合いに入りドリブルを始めれば、もはや普通の相手では止められない。ゴールはもうすぐだった。その時遅れて伸びた足に削られて俺は倒れてしまった。明らかなファールだろう。そこにルールが存在する以上、ファール以外は考えられない。笛は鳴らなかった。俺はいないのか。俺はいなかったのか。これがもしもファールでないのならば、俺はいなかったのかもしれない。ドリブルをする俺も、ゴールへと近づく俺も、削られて倒れる俺も……。俺はいつからいなかったのだろうか。俺は誰にも認められることなくその場に倒れ込んでいた。

 長い間。俺は多くの夢を見た。夢を見ながら、ゲームのことをピッチの目線で気にかけてもいた。封筒を開けると招集レターが届いていて、多国籍軍の理容師として渡航せよとのこと。俺には理容師としての資格や経験がない。それは不条理な紙切れであり、友人の声の多くも同情的だった。拒否するというのが本線だ。一方ではまた別の声もあった。これを機会として捉え、逆に今からでも理容師としての技能を身につけてはというものだ。それは現実的に可能なのかどうか……。そういうことを考えながらも、俺は本当の現実のありかというものに薄々と気づいてもいる。封筒を手にした感触、不条理な要望、友人の助言、内なる葛藤、これらはすべて夢の産物にすぎない。本当の俺の肉体はピッチの上にある。ピッチの上で死んでいる俺こそが現実の俺である。だから、俺は本気で悩む必要を感じなかった。手紙のこと、多国籍軍のことは、自分に向けられた課題のようで他人事にも等しい。

 その時、俺は薄目を開けて、現実上の試合の行方を注視し始めていたのだ。ボールは中盤を不安定に流れ、攻守はめまぐるしく入れ替わっている。味方の縦パスはカットされるが、すぐにプレッシャーがかけられる。最終ラインからのバックパス。それは敵の守護神へは渡らない。その時、俺は起き上がった。遅れて届いたパスを受け取るのは俺だ。俺はここにいたぞ! 

(ずっとずっと俺はここにいたんだぞ!)


 ゴール!! 


 もう倒れることもない。誰もが認めるしかないゴールがついに決まった。俺を殺した審判が真っ先にゴールを告げたのだ。俺のゴールだ! 明らかなゴールが、俺の存在を明るみへと連れ出した。俺はユニフォームを脱いで観客席へ飛び込んだ。熱い! 焼けるように熱い。そこは温泉の中かもしれなかった。

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迷子

2018-10-15 23:48:13 | 気ままなキーボード
こちらをどうぞ
(いいえ結構)
男は無言で断りながら胸に手をあて
それを取り出すと
名を書き出していた

どうしてもこれがいい
これでなければならない……
他人にはわからない感覚というものがある
傍から見れば皆同じように映っても
やっぱり母は母なのだ

男は胸ポケットから母を取り出したに違いない

学び始めた幼き日より
よくぞここまで来たものだ
スラスラ
流れるように
男は現在の居場所を書きしるしていく
その姿は自信にあふれているように映る
(間違ったことは何もしていない)

三丁目の角で一度手を止めた
ハイフンをすぎたところで西の方を見上げた
マンションの名前の中でかすれて
切れてしまった「ああ……」

あらら…… 「こちらをどうぞ」

男は母を胸にしまった
少しぎこちなくカタカナへ戻り
電話番号を書き終えた

「チェックアウトは何時ですか?」
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ウォーク・ドッグ

2018-09-16 21:16:51 | 気ままなキーボード
捨てられた犬は
捨てられたことを知らなかった
何も情報を持たないままに
とぼとぼと道を歩く

近頃
あのおじいさん見ないね
あのお父さん見ないね
あのおばさん見ないね
あのフェイスブックの人見ないね
あのガキ見ないね
あの近所の人見ないね
あのpomeraの人見ないね
あのたまに見る人見ないね
あの子どこ行ったの

何か急に仕事なくなっちゃった
ぼく何かしたのかな
それとも何かすべきだった?

新しい町はどっちだろう
まだ棒なんかには当たらない

視界良好

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人間の扉

2017-11-01 02:58:20 | 気ままなキーボード
「行くんじゃない! そこを潜ったら元には戻れないぞ」
「大丈夫。僕は大丈夫」
「駄目だ。絶対に。そうはならない」
「どうしてわかる? 君にわかるはずがない」
「お前にだってわかるはずがない。わかるか?」
「何がだ?」
「その扉を抜けたら人間になってしまうんだ。そして一度でも人間になったものは、もう再び元の自分に戻ることはできないんだ」
「僕は違う! すぐに元に戻ってみせる」
「自惚れるな! お前は何もわかっちゃいない」
「わかりたくないね。そうやって怖じ気付いてずっと眺めているだけの存在に成り下がるくらいなら、何もわかりたくないね」
「向こう見ずなだけでは破滅の近道を渡るだけさ。他者の忠告は聞くべきだ。特に私のような者の忠告は」
「嫌だね。僕の心はもう既にあの扉の向こうにあるんだから。それもずっとずっと以前からね」
「まだ肉体がこちら側にあることが救いだ。それにまだ私と話せている」
「話すことなんてない! もう心は揺るぎないほど決まっている」
「まあ待て。落ち着いてここにかけなさい」
「待つもんか。一秒だって待つものか。放せ!」
「一秒を急いで何になる。それが破滅へ向かう一秒だというのに」
「急いでなんかいない。ただ一秒だって無駄にしたくないだけだよ」
「お前は人間になることの意味を知らないんだろう」
「知る必要はない。人間になんてならないんだから。僕はずっと僕のままだ。今もこれから先も僕は僕のままだ」
「そう言っていられるのも今の内だけさ。あの扉を潜ったが最後、誰だって人間になることを拒むことはできない」
「君の話は今までの話にすぎないじゃないか。僕がそれを変えてみせる」
「無理だ。どうしても行くと言うのなら……」
「どうして無理と決めつける?」
「私にはわかる」
「僕にはわからないね」
「それでも行くなら、私もつれていけ」
「嫌だね! 人間に怯えた君をつれていくわけにはいかないね」
「お前だけで行くのか」
「そうだ。僕だけで行く。そして、すぐに戻ってみせる」
「戻ったとしてもその時はもう人間になっている」
「僕は僕のままだ! 自分を守ってみせる」
「いいや。人間になって、あっさりと私を殺してしまうだろう」
「馬鹿な……」
「今にわかるよ。だいたいお前は、何をしに行くんだ?」
「肝試しさ」
「馬鹿な真似はよせ」
「利口ぶっている君よりはましさ」
「やめろ。本当に、本当に人間になっちまうぞ」
「人間人間うるせーんだよ」

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椎茸は太陽の下で

2017-10-25 00:31:07 | 気ままなキーボード
「言葉というのは常に舌足らずなものですから、必ずそれを補う必要があります。そのために必要なのは何でしょう? さあどんどん意見してください。はい、君」
「雨です」
「その根拠は何ですか?」
「……」
「ないんですか。適当に言ってみたのか。確かに雨は情緒があります。耳を傾けてみたくなる時もあります。でも、だんだん強くなってきますね。傘をさしていても手に負えないような、強い雨。もう、何も聞こえなくなって、みんなかき消してしまう。雨には抑揚が足りません。えっ、椎茸?」
「いい出汁が出ます」
「そうですね。椎茸は非常にいい出汁が出ます。だけど、ちょっと考えよう。言葉を補うには個性がありすぎる。それが大問題。子供が逃げていきます。あなた椎茸が好きなの。へー。はい、次は」
「ギター」
「そうですね。音楽は大きな力を持っています。認めます。ギターが喜怒哀楽を表せるということも知っています。それでもそれは人を選びます。好きな人の胸には深く響くとしても、そうでない人にとっては全く響きません。むしろノイズです。あなたギター弾けるの」
「今、練習中です。日に2時間くらい」
「へー、そう。それで、車?」
「車。どこ行くんですか? 逃げるんですか?」
「口車に乗るとか言うし」
「それはもう悪い方に向かっています」
「電気自動車」
「ちょっとどうでしょうか。何かどんどん離れていっているように感じますが……」
「銃で補います」
「みんな消してしまえって? それはもうあきらめでしょう。デリートキーを連射するようなものです。誰ですか? 今の意見は。帰った? はい。銃では言葉は補えません」
「タヌキ」
「どうしてタヌキだ! どうしたらそうなりますか。騙されますよ。藪をつついて蛇を出すようなもんだ。悪い蛇ばっかりじゃない? 蛇にいいも悪いもありません。人とは違うんです。タヌキは論外!」
「キタキツネ」
「はい。他には?」
「言葉です。言葉で補います」
「そう。その言葉を待っていました。言葉は言葉によって補うもの」
「ラムネ」
「トランプ」
「クマのプーさん」
「チョコバット」

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