ホームの端っこは屋根がない。もしも雨が降っていたら、少しの間だけ傘をさして歩かねばならないだろう。少々の雨なら濡れながら歩くのもいい。開いてすぐに閉じるのは面倒な仕草だ。賢い人は中寄りの車両に乗って、そこから降りるのだ。そうすれば降り立ったホームには屋根がある。そんなこともあって同じ電車でも人のいる場所には偏りがある。土曜日に降り立ったホームはいつもと違って人が少ない。いつも同じ時間に見かけるあの人の姿もなかった。雨はもう上がっていた。
階段を下りると右から車が続々とやってくるのが見えた。1台目は大型トラックだった。とてもかなわないと思った。大きくても小さくても、生身の肉体にとっては元々かなわないのだが、大型車両を見た時には圧倒的な重量の差を感じてしまう。イオンへ行くためには車道を横切る必要があったが、大型トラックが通り過ぎるまでは車道に近づくことも躊躇われた。私は少し膨らんで歩きながら横断歩道に向かった。
大型トラックが速度を緩めることなく通過し、続いて3台の車があとを通り過ぎた。4台目の車は少し速度が遅かった。しかし、そのあとにやってくる車はもうない。私はあえて横断歩道の手前まで来たものの、あえてその先に踏み込むことはしなかった。4台目は速度を落としながら近づいてきた。停車する車なのか、それともそのまま進むのか。わからなかった。
渡るのか待つのか私は少し迷いながら揺れていた。運転手の視線はまっすぐ前を向いていた。しかし、その目には迷いの色が見てとれた。行けるのか行けないのか。止まるのか止まらないのか。そうしている内に、迷いと迷いがぶつかって車は止まった。
4台目運転手の視線の先には少し離れた場所に停止しているパトカーがあった。運転手は横断歩道の手前で速度を失って、私に横断歩道を渡らせることを選択した。
しかし、そのブレーキは確信を持って踏まれたものではなく、私とパトカーと、もしかしたら助手席に座るパートナーの声、種々の要素が重なり合ったあとの、最終的な着地に過ぎなかったようにも思える。助手席の女は冷静な顔で背筋が伸びていたように思う。それはその時にはっきりと確認したのではなく、あとから振り返って何となくそうだったのではと思ったのだった。
横断歩道を渡り私はイオンモールに向かった。