客が誰も来なくなって
店先は猫の陣地になった
ちょうどよい玄関マットの上に
現れて
居座って
消えて
戻ってくる
以下繰り返し
ストレッチ
寝そべって
くつろいで
待ち合わせ
夜の間ずっと猫たちの居場所だった
戯れて
じゃれ合って
たたき合って
誰の邪魔も入らない冷え込んだ夜
おしゃれして
くっついて
キスをした
メリークリスマス♪
多分大丈夫だろう
私はきっと大丈夫だろう
少しくらいいいじゃないか
自分で決めたことだけど
自分次第でケースバイケース
そんなに怖い顔をしないで
ちゃんと気をつけていれば
全く問題ない
どこへ行っても
誰と何を食べても
みんなと旅に出てもいいじゃないか
5人が6人になろうが4人でも3人でも
そう変わるものか
目安は目安 世の中は例外だらけ
今日は何も考えないよ
雨は大丈夫だろう
今日はきっと大丈夫だろう
裸のままでいいじゃないか
ちゃんと気をつけていれば
何があっても大丈夫
風が吹いても竜巻がきても
夜に梯したっていいじゃないか
自分で決めたことだけど
自分次第でバイバイバイ
みんな怖い顔をしないで
2メートルが3メートルでも90センチでも
そんなに変わるものか
目安は目安
何だって一律には決まっていない
ねえ先生 大切なのは心がけだろう
未来のことは誰にもわからないから
思うようにいかなくても
誰の責任でもない
明日は明日
今日は何も考えないよ
(私はなんて無力なんだ)
ねえ 神さま
寂しいメインストリート
土産物屋は定休日でもないのに
シャッターを下ろしている
駅
降りるものは1人、2人
終電の終わる
23時にシャッターを下ろす
20時は闇に包まれた街
川の流れる音だけがする
街に1つのコンビニ
夜とともに明かりを消す
世代が変わる毎に
街から人がいなくなった
にぎわう声は
田圃の蛙と野鳥たち
会話の消えた18時
鴉がかすれた声で鳴く
四方を囲う山々が
あっさり夕日を持って行く
何もないだけ空気がきれい
おー秋よ
おー素晴らしき秋
それらしきものはなくても
どこまでも歩きたくなる
薪を割ってよし
牡蠣を食ってよし
陽気な秋
メキメキと腕が伸びる秋
先の見えぬ秋
直に冬
おー秋よ
素晴らしき秋
貼り紙の多い秋
繊細な秋
絵を批評する秋
敵を作る秋
行き先不明の秋
もう暑くない秋
少し寒くなった秋
薄手のカーディガンを持って行きなよ
おー秋よ
素晴らしき秋
泣き言も言わずに
どこまでも独り歩き
好きに占ってよし
柿を食ってよし
去るものを
訪れるものを
教えてくれる秋
おー秋よ
おー何か
うきうきとなる秋よ
やっぱり四季は
秋がよい
おばあさんの気がかりは
通帳の残高
ありあまるほどあっても
それほど気になるものか
歳を取るにつれ
だんだん普通でなくなって
「突然減った」
「誰かに盗み取られている」
おかしな妄想を抱くようになった
あれから世の中は変わり
今では何が起きてもへんじゃなく
おばあさんは正しいのだ
3日振りに会ったら
ポメラは虚ろな目を向けた
もう僕を忘れたか
・
ああ 開けっ放しにしてたの!
こんなに気が抜けて!
どうしてくれるの!
飲めないじゃないの!
何を騒いでいるの?
(おばあさんがやってきて空気が変わる)
飲めないことはありませんよ
少しだけ泡も残ってる
ええ、わるくない
これは「微炭酸」よ
「微炭酸?」
ちょうどいいんじゃない?
詩人さん、私を打て
打ち始めれば生まれるものがある
私たちはそういう関係だ
不安と不安定から道はなる
今日が逃げ切ってしまう前に
言葉を口実にして
私を打て
寝たらおしまいだ
寝たら消えちまう
詩人さん、私を打て
ためらいの向こうには
晴れ間がみえる
触れて離れての繰り返し
それが私たちの関係
「そんなの虚しいだけだよ」
「いいえ。君の詩は麦茶なの。
国中のコンビニに流通して、
街街を流れて行く。
人人を潤して行ける」
「そんなキャッチーなものかね」
「ポップでなきゃ生きられないのよ」
「とけすぎてわからない飲み物になった。
冷やしたいだけで薄めたいわけじゃなかったのに」
「君が早く飲まないから」
「ゆっくりじゃないと意味がないよ」
「氷がとけてもう秋になるわ」
詩人さん、私を打て
1、2、3、
その先で終わってしまうことを
恐れないで
打ち始めれば奏でられる
台本にいない君を
偶然が運んでくれるから
寝たらおしまいだ
寝たらさよならだ
詩人さん、私を打て
考えるよりも速く
君の思う先に行くために
つかまえようと手を伸ばしたが、イメージは指の間をすり抜けて行く。見えているようで、あるのかどうか怪しい。夕べは特別な何かが感じられたはずが、ひと時過ぎれば確かな根拠を思い出すことができない。微かなイメージを頼りに、かためて、つなげて、共有できる形に起こしたとしても、愛しいものとはかけ離れたところに行くばかり。上手くやろうとすればするほど、迷路の中に迷い込むようだ。どこで間違えてしまったのか……。飛ばし方を忘れたロケットの前で、まだ星を想うことがある。
いつの間にか筆は手から離れて指先で硝子を撫でていた。ずっと描かれていたはず。夜通し談笑の外にいながら、世間と自身の間にキャンバスを立てて。それは強固な盾として頼られた。イメージは夜の間をすり抜けて行く。形にならぬ。絵にも物語にもならない。これまでのところは何だったのか。形容し難いものがつかえる苦しい朝に、誰か名前をつけてくれないか。飛ばし方を忘れたロケットの上に、まだ星が瞬いて見える。
影のように隠れ、縮み、潜み、光のように弾ける。加速する。もう一度、今度はもっと加速する。緩急をつけて密集から抜け出す。その時、お前は完全な自由の中にいる。自信を宿らせて敵を欺く。ドリブルは意識を利用したトリックなのだ。
ごまかして、やり過ごした。耐えて、踏みとどまって、乗り越えてきた。ようやくここまでたどり着いたが、ここはどこなのか。
「ここはどこ?」
自分が動いたり、風景が動いたように思えたりした。動いたのは時の方ではなかったか。
「よくきたね」
ここは生きたものだけがたどり着ける。
「これからの場所だよ」
ああ、やっぱりね。僕も今ちょうど同じことを考えていたんだ。ここはそんなところだ。前にもきたような気がするよ。
証人として地に根をつけて
見守り続けていた
他に道はなかった
(だんだんと駄目になるのだ)
空は淀み
怒号と爆音が増して行く
自然は悲観を放出する
水は濁り
街は荒れ
人は地に落ちた
(いずれ駄目になるのだ)
「躊躇わなければ手折られていた」
時々
雨の向こうに虹がかかり
翼の向こうに星が流れた
天は陽を投げかけた
向日葵の背がすっと伸びて
笑った
「行ってくるよ」
やり遂げるまで帰らない。弱くても崇高な目的を持っていた。
駆け出しの頃がよかった。
・
レベルアップするにつれて忘れてしまう。
朝焼けの色。好きだった食べ物。人の名前。
・
一番の敵は孤独のはずだったが、愉快な仲間たちに恵まれた。
・
魔王は悪の限りを尽くしていたが、各地に多様な遊戯施設を張り巡らせて、娯楽性の高い世界を築くことによって己の悪事をぼかすことに長けていた。それはどんな強い魔物よりも、勇者の冒険を足止めするのに役立った。「もう少しゆっくりしよう」もう少し、あと少し。楽しければそれでいい。安定的な楽しさを手放してまで先を急ぐほどの理由があるだろうか。勇者は日々に広がる楽しさに浮かれ、旅立ちの朝にあった第一声を忘れてしまった。ぼかしの魔王恐るべし。
・
「どうだ。強くなったか?」
電話の向こうに父の声。
なってないとは答えられない。
「うん、まあ」
・
こん棒は遙か過去、ついに伝説の剣を手に入れる。
しかしその矛先にある目標を勇者は既に見失っていた。
・
旅立った勇者。成長を続ける勇者。
それなりの満足の中で戻れない勇者。
勇者の中に埋もれる勇者。
・
「誰かみつけて」
・
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・
「迷子にならないことは難しい」
・
僕は勇者
何かよくわからないけど
できない時ってあるんだ
洗い物に手がつけられない
ゴミが捨てられない
ごはんが炊けない
詩が書き出せない
(だいたいやってみれば何でもないのに)
開封できない
返信できない
読めない
観れない
楽しめない
払えない
更新できない
何かよくわらないけど
そういうことがある
わからない?
まるでない?
ああ そうですか
それは おめでとう