折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

【短歌】アディショナル・ドリーム

2020-11-27 20:07:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
みてくれる人はいないの前線に浮いたゴースト・フットボーラー

挨拶と相槌だけで埋められた創造不在コミュニケーション

趣が七変化する円盤は君が聴き込むパワー・スポット

ダイジェストVからもれた右サイド君の勇士が焼きついたまま

定跡と同歩の他に許されたあなたが創る自由な指し手

退屈な2時間を越え衝撃が映える悪夢のクライマックス

妄想の熟成を待つテーブルに開くPomeraのディープ・スリープ

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冒険寿司

2020-11-27 11:02:00 | ナノノベル
 私を作っているものについて考えている。
 私は誰といた?
 どこにいた? 何を食べてきた?
 どうして私は私を問うのだろう?
 答えのない問いの中をさまよっていると行き着くところは空腹だ。
 ああ、寿司だ。
 寿司が食べたいぞ。
 お金なんてない。だけど、冒険心が潜らせる暖簾があるのだ。


「へい、いらっしゃい」
 基本のない寿司店だった。
 マグロやハマチなんてありゃしない。
 だから、任せる他に道はなかった。
 何が出るかはお楽しみか……。

「しぶきです」
「ほう、これははじめて聞くネタだ」
「そのままどうぞ。なくなる前に」
 とてもさっぱりしている。
 口に運ぶ前に半分消えたようだ。

「のろいです」
「のろい……」
 不快な響きだ。味は独特の苦味があった。
「大丈夫です。お茶でとけますんで」

「なつびです。燃えてますんで、熱い内にどうぞ」
「おー」
 炎を吹き消して口の中に押し込んだ。
 目の覚めるような熱さだ。

「かっぱです」
「これが?」
 私の知る海苔巻きとはまるで違う。
「皿ごといけますんで。乾く前にどうぞ」
 握ってすぐに食べさせる。
 大将の強いこだわりを感じる。

「わかさです。あえて荒削りにしてます」
「へー、そうですか」
 勢いに任せて噛みついた。
 強い反発があって、簡単には噛み切れなかった。
 手強い寿司があるものだ。

「ゆうひです。眺めてからどうぞ」
 一転してロマンチック。
 私は言葉を失ってしばし箸をとめた。
 グラデーションがきいて見た目にも楽しい寿司だ。
 大将、アートじゃないですか。

「うわさです。とある街の」
「どこです?」
 大将は笑ってごまかしただけだった。
 産地不明というわけか。
 つかみどころがなく、歯ごたえもなかった。
 私が食べたのは風かもしれない。

「あらいです。くまと一緒にどうぞ」
「くま?」
 洒落をきかせたと言って大将は笑った。
 真面目なだけが寿司ではないようだ。

「やしんです。かみつきますんで」
「ひえー」
 ギラギラとして攻撃的だった。
 箸で叩いてとげを落としてから反撃の暇を与えず一気に飲み込んだ。
 なかなか気の抜けない寿司を出してくる。油断大敵だ。

「ねだめです」
「ほー」
 なかなかできないネタらしい。
「若い頃はもっとできたんだがね」
 大将は少し弱音を吐いた。
 ねだめは白く夢のような香りがする。
 こちらはスタミナがつきそうだ。
 
「たぬきです」
「じゃあこの辺で」
「あいよー!」
 握り疲れたのだろう。
 大将はうれしそうに返事をした。
「ずっとだましだましですわー」
 長らくだましながら働いてきたと言う。
 そのおかげで今日の私の冒険があった。
 人生に迷った時には、また来よう。

「ごちそうさま」
 
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偽の封じ手

2020-11-27 07:12:00 | 将棋の時間
「封じ手は……」

 えっ?
 読み上げられた一手を聞いて名人の表情が変わった。手元に引き寄せた図面を見て、表情は一層険しくなった。
「局面が……」
 どうも局面が間違っているようだ。
「あなたは……」
 挑戦者も事の異変に気づいた。
「別人だ!」
 局面も封じ手も夕べから引き継がれたものとは違い、勝手に創作されたものだった。男は少し肩を落として自分の非を認めた。
「私の作った定跡を名人戦の大舞台で指させてみたかった……」

「待った!」
 その時、襖を開けて正立会人が入ってきた。
「前説はそこまで」
「負けました」
 偽立会人が頭を下げて退席した。

 正立会人が封筒に鋏を入れ、角まできたところで止めた。切り落としてしまうとその部分が下に落ちてしまう。それを拾うのは一手無駄である。細かいところまで配慮を行き届かせることも、正立会人の務めであった。2枚目の封筒も同じよう開封して、中身を取り出した。いよいよ名人戦最終決戦、2日目の対局が始まろうとしていた。名人は息を止めてその瞬間を待っていた。挑戦者は眠るように目を閉じている。

「封じ手は……」
 

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妖怪ごっこ(やめられない遊び)

2020-11-27 01:13:00 | 【創作note】
小学生の頃
妖怪ごっこをして遊んだ
「妖怪だ」という体で
背中から被さる愚か者

「やめろっ!」
「ひっひっひっひっ!」

何が面白かったのだろう……

美しいものを美しくするのは
感性の問題かもしれない

詩を書くことは肩の凝ることだ

今も背に妖怪を感じる

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地下道を抜けて

2020-11-27 00:54:00 | オレソン
地下トンネルを通って
線路の向こう側へ

つぶれた紙パック
骨の折れたビニール傘
ずっと置き去のにまま

真夏も休まない熟年アスリート
Tシャツ姿で行き来している

地上にあがるとまぶしい光
徐行するパトカーとすれ違う
瞬間身体に力が入る
何もしていないのに

少し覚えた近道をして
この街のたまり場へ

雑誌コーナーの立ち読み人
何か気になることがあるの

積み上げられたセール・シューズが
通路の中央を占領している
30%のやさしさは
俺の足を止めやしない

いつもの青いノンシュガー

セルフレジは選択の嵐
電子マネーそして交通系電子マネー
レシートまでの3秒間

何もできない俺の時間

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