じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

薬丸岳「天使のナイフ」

2020-01-25 17:06:18 | Weblog
★ 薬丸岳さんの「天使のナイフ」(講談社文庫)を読んだ。第51回江戸川乱歩賞受賞作。江戸川乱歩賞受賞作には当たりはずれがあるけれど、この作品は大当たりだった。

★ 妻が殺された。幼い子をかばうようにして。犯人は3人の13歳の少年。刑法41条の規定により、彼らに刑罰は課されず、被害者の家族にさえ加害少年の詳細、その後の彼らの「教育」が明らかにされない。少年法の壁が立ちはだかっている。

★ マスコミは興味本位の取材に明け暮れ、世間からは加害者はもとより被害者にも冷ややかな視線が投げかけられる。テレビは「保護派」と「厳罰派」の論争を面白く取り上げ、結局は「可塑性」を盾に、人権派弁護士が強弁を繰り返す。被害者やその家族への配慮は感じられない。

★ 前半はこうした社会派ミステリーに憤りを感じたり、同情をしたりで読み進めていたが、後半の200ページほどは作品の面白さに、のめり込んでしまった。

★ もはや「業」としか言いようがない。少年犯罪と復讐のループ。その中で「贖罪」とは何かを考えさせられた。

★ 被害者にとってみれば、加害者が14歳未満であろうが「心神喪失」であろうが関係はない。

★ 少年犯罪の個々のケースを見れば、加害少年(少女)が犯罪に至るまでにいくつかの要因があることに気付く。まずは家族の問題であり、人間関係の問題であり、社会の問題である。不幸にしていくつかの偶然が重なって犯罪に至ってしまうケースもあろう。それに同情しつつも、被害者の行き場のない怒り、喪失感を思うと言葉を失ってしまう。

★ 現代社会の直面するどうしようもない課題を物語として描かれていた。面白かった。

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