■東京国立博物館 特別展『京都-洛中洛外図と障壁画の美』(2013年10月8日~12月1日)
10月20日(日)に駆け足でまわった展覧会。まずは東博から。「本邦初!国宝・重要文化財指定『洛中洛外図屏風』全7件が一堂に」というのが売り文句だが、残念ながら一度に全てを見ることはできない。でも大好きな岩佐又兵衛の『洛中洛外図屏風(舟木本)』が全期間展示なので、わくわくしながら見に行った。舟木本は東博の所蔵だが、私の記憶では、あまり実見したことがない。記録では、2007年12月の常設展で一度見ている。2010年新春にはVR(バーチャルリアリティ)上映があったが、本物は見逃したみたい。
今回、会場に入ると空っぽの第1室が、大画面を使って高精細画像の上映というのは新機軸だと思ったが、私は「現物を見るために博物館に来る」古いタイプの人間なので、ここは後回しにして、第2室から見始める。前期展示で見られたのは、狩野永徳の上杉本と歴博乙本、舟木本、富山の勝興本、岡山・林原美術館の池田本。あとの2件は初見ではないかと思う。現場では、十分に見えなかったが、図録で見ると、それぞれ個性的で楽しい。続く第3室には、かつて京都御所を飾っていた賢聖障子絵、唐人物図屏風など(仁和寺ほかに伝存)。天皇の御座が、びっしり唐人物図に囲まれていたって知ったら、最近のウヨクさんはどう思うんだろう。
第二会場の冒頭も展示はなくて、環境ビデオみたいな「龍安寺石庭の四季」が上映されていた。そのあとは龍安寺の襖絵、さらに二条城の障壁画。もとの空間イメージを再現するため、配置に心を砕いているのは面白かった。
■東京国立博物館・東洋館8室 東洋館リニューアルオープン記念 特別展『上海博物館 中国絵画の至宝』(2013年10月1日~11月24日)
中国に行ってもなかなか見ることのできない中国絵画の名品40件を展示。ただし宋元画は前期・後期で入れ替わるので、一度に見ることができるのは約半数である。『閘口盤車図巻(かいこうばんしゃずかん)』は、五代・10世紀の作品。水門に設けられた楼閣で水車がまわり、さまざまな身分・職業の人々が立ち働く市井のありさまを描く。洛中洛外図に通じる画趣だが、日本はまだ平安盛期の貴族社会だ。北宋の『煙江畳嶂図巻(えんこうじょうしょうずかん)』の、夢見る童画のようなやわらかさ。馬麟の款を持つ『楼台夜月図頁』の、安藤広重みたいなもの哀しい静謐。どれも好きだー。
明末清初には、私の好きな画家たち、呉彬とか朱耷(八大山人)とか石濤とかが並んでいて、テンションが上がる。うわーん、見に来てよかった。とはいえ、やっぱり中国絵画の見どころは分かりにくいので、音声ガイドを借りるのがおすすめ。学芸員の塚本麿充さんも声のご出演。読みごたえのある図録に加えて、別冊(別売)「釈文・印章編」も出してくれた配慮に感謝。
■大倉集古館 『描かれた都-開封・杭州・京都・江戸-』展(2013年10月5日~12月15日)
北宋の都・開封を描いた中国絵画至高の名品『清明上河図』に対し、明代になると「構図等を踏襲し、蘇州の風景を描いた清明上河図が多く制作された」というのは、かつて、ここ大倉集古館で学んだこと。同館所蔵の伝・仇英筆本『清明上河図』は、蘇州の風景を描いたものと考えられている。今回は、やはり江南ののんびりした風情が感じられる清代の”清明上河図”が2件展示されている。そして、南宋の都・杭州と西湖の図。多くは、中国の風景など見たことのない日本人画家の作品であるのが面白い。
目を転じて、日本は京都の名所遊楽図、洛中洛外図など。ふと「長谷川巴龍筆」の黒々したサインが目に留まって、記憶の中から、超脱力系の「素朴絵」屏風であることを思い出した。さらに江戸は名所図絵から、なんと山口晃画伯の『六本木昼図』と『広尾-六本木』も。楽しかったが、私より先に見に行った友人が「欲張りすぎて、印象散漫」と語っていたのも否めないところ。発売が遅れていた展示図録は、10/23(水)からようやく売り出しになったそうだ。
■国立公文書館 平成25年秋の特別展『旗本御家人III-お仕事いろいろ』(2013年10月5日~10月24日)
国立公文書館の展示にはいろいろあるが、江戸城の紅葉山文庫→内閣文庫の資料を駆使した「旗本御家人」シリーズ(時代劇みたいだw)が、やっぱりいちばん面白い。地味な展示だと思うのに、熱心なファン(?)がずいぶん来ていた。大奥の女性たちのさまざまな職種紹介が興味深く、中には髪を剃った「御伽坊主」と呼ばれる女性たちもいたのだな。「暴れん坊将軍」吉宗も、晩年には「介護」の記録が残っているというのも感慨深い。しかも吉宗とは一歳しか違わず、小姓時代から近似した小笠原政登の書き残した記録というのが、さらに。書物奉行や天文方の仕事が取り上げられていたのも嬉しかった。
10月20日(日)に駆け足でまわった展覧会。まずは東博から。「本邦初!国宝・重要文化財指定『洛中洛外図屏風』全7件が一堂に」というのが売り文句だが、残念ながら一度に全てを見ることはできない。でも大好きな岩佐又兵衛の『洛中洛外図屏風(舟木本)』が全期間展示なので、わくわくしながら見に行った。舟木本は東博の所蔵だが、私の記憶では、あまり実見したことがない。記録では、2007年12月の常設展で一度見ている。2010年新春にはVR(バーチャルリアリティ)上映があったが、本物は見逃したみたい。
今回、会場に入ると空っぽの第1室が、大画面を使って高精細画像の上映というのは新機軸だと思ったが、私は「現物を見るために博物館に来る」古いタイプの人間なので、ここは後回しにして、第2室から見始める。前期展示で見られたのは、狩野永徳の上杉本と歴博乙本、舟木本、富山の勝興本、岡山・林原美術館の池田本。あとの2件は初見ではないかと思う。現場では、十分に見えなかったが、図録で見ると、それぞれ個性的で楽しい。続く第3室には、かつて京都御所を飾っていた賢聖障子絵、唐人物図屏風など(仁和寺ほかに伝存)。天皇の御座が、びっしり唐人物図に囲まれていたって知ったら、最近のウヨクさんはどう思うんだろう。
第二会場の冒頭も展示はなくて、環境ビデオみたいな「龍安寺石庭の四季」が上映されていた。そのあとは龍安寺の襖絵、さらに二条城の障壁画。もとの空間イメージを再現するため、配置に心を砕いているのは面白かった。
■東京国立博物館・東洋館8室 東洋館リニューアルオープン記念 特別展『上海博物館 中国絵画の至宝』(2013年10月1日~11月24日)
中国に行ってもなかなか見ることのできない中国絵画の名品40件を展示。ただし宋元画は前期・後期で入れ替わるので、一度に見ることができるのは約半数である。『閘口盤車図巻(かいこうばんしゃずかん)』は、五代・10世紀の作品。水門に設けられた楼閣で水車がまわり、さまざまな身分・職業の人々が立ち働く市井のありさまを描く。洛中洛外図に通じる画趣だが、日本はまだ平安盛期の貴族社会だ。北宋の『煙江畳嶂図巻(えんこうじょうしょうずかん)』の、夢見る童画のようなやわらかさ。馬麟の款を持つ『楼台夜月図頁』の、安藤広重みたいなもの哀しい静謐。どれも好きだー。
明末清初には、私の好きな画家たち、呉彬とか朱耷(八大山人)とか石濤とかが並んでいて、テンションが上がる。うわーん、見に来てよかった。とはいえ、やっぱり中国絵画の見どころは分かりにくいので、音声ガイドを借りるのがおすすめ。学芸員の塚本麿充さんも声のご出演。読みごたえのある図録に加えて、別冊(別売)「釈文・印章編」も出してくれた配慮に感謝。
■大倉集古館 『描かれた都-開封・杭州・京都・江戸-』展(2013年10月5日~12月15日)
北宋の都・開封を描いた中国絵画至高の名品『清明上河図』に対し、明代になると「構図等を踏襲し、蘇州の風景を描いた清明上河図が多く制作された」というのは、かつて、ここ大倉集古館で学んだこと。同館所蔵の伝・仇英筆本『清明上河図』は、蘇州の風景を描いたものと考えられている。今回は、やはり江南ののんびりした風情が感じられる清代の”清明上河図”が2件展示されている。そして、南宋の都・杭州と西湖の図。多くは、中国の風景など見たことのない日本人画家の作品であるのが面白い。
目を転じて、日本は京都の名所遊楽図、洛中洛外図など。ふと「長谷川巴龍筆」の黒々したサインが目に留まって、記憶の中から、超脱力系の「素朴絵」屏風であることを思い出した。さらに江戸は名所図絵から、なんと山口晃画伯の『六本木昼図』と『広尾-六本木』も。楽しかったが、私より先に見に行った友人が「欲張りすぎて、印象散漫」と語っていたのも否めないところ。発売が遅れていた展示図録は、10/23(水)からようやく売り出しになったそうだ。
■国立公文書館 平成25年秋の特別展『旗本御家人III-お仕事いろいろ』(2013年10月5日~10月24日)
国立公文書館の展示にはいろいろあるが、江戸城の紅葉山文庫→内閣文庫の資料を駆使した「旗本御家人」シリーズ(時代劇みたいだw)が、やっぱりいちばん面白い。地味な展示だと思うのに、熱心なファン(?)がずいぶん来ていた。大奥の女性たちのさまざまな職種紹介が興味深く、中には髪を剃った「御伽坊主」と呼ばれる女性たちもいたのだな。「暴れん坊将軍」吉宗も、晩年には「介護」の記録が残っているというのも感慨深い。しかも吉宗とは一歳しか違わず、小姓時代から近似した小笠原政登の書き残した記録というのが、さらに。書物奉行や天文方の仕事が取り上げられていたのも嬉しかった。