見もの・読みもの日記

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変わらない主人公・変わる敵役/中華ドラマ『将夜』

2020-07-03 22:53:24 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『将夜』全60集(騰訊視頻、2018)

 新型コロナの影響で新作ドラマのリリースが停滞していることもあって、気になっていた旧作から。架空世界を舞台にしたファンタジー古装劇である。唐国、燕国、西陵、大河など各国が覇を競う世界。唐国の辺境の一兵士として育った寧缺(陳飛宇)は、都にある人材育成機関・書院の入学試験を受けることを許され、侍女の桑桑を伴って上京する。

 寧缺には敵討ちの宿願があった。狙うのは、かつて林将軍府を襲って寧缺の父母の命を奪った夏侯。唐国皇后の兄でもあり、北の国境を守護する大将軍である。孤児になった寧缺は、やはり夏侯の軍勢に襲われた人々の生き残り、赤子の桑桑を拾って、二人で生き抜いてきた。

 都に着いた寧缺は無事に書院に入学し、書院二層楼の選抜試験にも合格して十三番目の席次を得て「書院十三先生」と呼ばれるようになる。それぞれ特異な能力を持つ十二人の兄弟子・姉弟子と、書院の主である夫子に可愛がられる。また、符道大師・顔瑟に素質を見込まれ、神符術を伝授される。さらに皇帝の特務を請け負う侠客・朝小樹と意気投合して、朝小樹を幇主とする魚龍幇の人々にも助けられる。聡明な名君・唐国皇帝の知遇を得、公主の李漁(先代皇后の娘)からも好意を寄せられる。

 もちろん寧缺を邪魔者と見なす敵もちょこちょこ出てくるが、全体としては、仲間や師匠、支援者がどんどん増えていくので、ちょっとご都合主義ではないかと苦笑してしまった。寧缺のぶっきらぼうで傲岸不遜な性格は、幼い頃からひとりで(桑桑と二人で)生き抜いてきたことを思えば納得もでき、初めは魅力も感じたが、ドラマの中盤、終盤になっても、全く性格が変わらないのはどうなんだろう。若者を主人公にする場合、成長や変化が目に見えるドラマのほうが私は好きだ。

 それでいうと、むしろ敵役の劉慶(孫祖君)のほうが面白かった。燕国の第二皇子で、地位、美貌、才能全てを持ち、昊天を奉じる「光明の子」と呼ばれていたが、書院二層楼の選抜試験で寧缺に敗れ、のち、再び寧缺と争って決定的に敗北し、修行者としての能力を全て失う。彼を気づかう恋人を振り捨て、乞食となって流浪し、たどりついた知守観で、邪悪な方法で強大な能力を手に入れる。いけすかないセレブのイケメン皇子ぶりから、薄汚れた乞食姿、悪のラスボスと、メイクも衣装も別人のように変わるのが面白くて、劉慶を主人公にしたほうがよかったのに、と思った。

 桑桑は「少爺」寧缺のために働くことを喜びとしている幼い侍女だが、寧缺が書院の仲間たちとともに北の荒野へ派遣されて留守の間、西陵の光明大神官に気に入られ、不思議な能力を授けられ、光明大神官の後継者に指名されてしまう。さらに、彼女こそ諸国の伝説にささやかれる「冥王の子」であるというネタバレを途中で読んでしまったのだが、本編では、そこまで話が進まなかった。本編のあとに続く「将夜2」で初めて明らかになるらしい。

 本編は、寧缺が夏侯との死闘を制し、両親の仇をとるところで終わる。戦闘シーンの撮り方は突き抜けていて、古装劇というより、特撮ものみたいだった。まあ夏侯を演じた胡軍がカッコよかったのでよしとする。しかし、いろいろな伏線が置き去りになっているので、「将夜2」が気になるといえば気になる。寧缺の性格も、ここからようやく変わり始めるのだろうか?


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