見もの・読みもの日記

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気分は大和路、見仏旅行/奈良の古寺と仏像(三井記念美術館)

2010-07-13 22:42:24 | 行ったもの(美術館・見仏)
三井記念美術館 特別展 平城遷都1300年記念『奈良の古寺と仏像~會津八一のうたにのせて~』(2010年7月7日~9月20日)

 週末、新潟で白桃美術館という小さな美術館を訪ねた。そこで、新潟出身の会津八一(※以下、この表記を使用)の書画を見て、この展覧会が始まっていたことを思い出し、上野で新幹線を降りた足で、そのまま三井記念美術館に寄った。”会津八一のうたにのせて”という副題が印象的だったもので、私は「古寺と仏像」と「会津八一」の比重は1対1か、むしろ後者のほうが重いんだろうと勝手に思っていた。だいたい「奈良の古寺と仏像」が、そんなに東京に運んでこられるものじゃないだろうし…。

 そうしたら、予想は大ハズレ。法隆寺、東大寺、薬師寺、唐招提寺など10数ヵ所の寺院から、時代も技法(金銅、木彫)も大きさも、さまざまな仏像が40体以上もお出ましになっていて、仏像好きなら歓喜まちがいなし。逆に、「会津八一」色は、ほとんど印象に残らないくらい薄い。買って帰った展示図録によると、新潟展・東京展・奈良展のいずれかで展示される「仏像・仏教美術」関係資料は120点。うち、61点が東京で見られる(数え違いご容赦)。一方、「会津八一」関係資料は172点だが、東京で見られるのは、展示替え分を含めて20点程度に過ぎない。えーこれ、同じ展覧会の巡回展と称することに無理があるんじゃないかなあ。私は仏像ファンであるが、会津八一の書画や自筆原稿にも興味があるので、ちょっと騙された気分である。

 という不満はひとまず措き、第1~2室には金銅仏と銅板押出仏14体が集結。金銅仏は、博物館や美術館で見る機会がわりと多いが、今回は、大阪市立美術館蔵の1件を除き、全て奈良の古寺から出陳された貴重なものだ。正暦寺の薬師如来倚像は有名だが、初見だろうか。思っていたより小さいことに驚く(深大寺の釈迦如来倚像くらいを想像していた)。鼻の先端に残る金メッキ?が鼻水のように光って可笑しい。座ったお尻のまわりを囲むレースのような衣がかわいかった。第2室の法隆寺の釈迦如来立像は、ずんぐりと小柄だが、姿勢のよさに威厳が感じられる。両手に挟んだ宝珠は、つぶれたあんぱんみたい。三山型の宝冠をかぶっているが、後ろにまわると髪をY型に結っているように見えた。

 第4室、東大寺の四天王像(鎌倉時代)は、顔の筋肉、指先、天衣の先まで神経のゆきとどいた優品。あんまり行き届きすぎて、後補?と疑われたが、図録の解説にも「やや神経質なきらいもある」と書かれているから当初の姿なのだろう。平たくつぶれた邪鬼もかわいい。西大寺の塔本四仏は、みんな何か言いたげな口元がおもしろいなあ。薬師寺の地蔵菩薩立像(平安時代)は、小さな頭部をこころもち傾げ、目しいたような静かな表情に心が洗われる。

 最後の7室は、展示ケースいっぱいの大きい仏像が多いが、圧巻は室生寺の釈迦如来坐像(~7/25)。うわわ、おいでになっていたのか!と慌てる。私の大好きな仏像なのである。それにしても展示ケースが薄い(奥行きがない)ため、ほとんどかぶりつき状態である。距離を置いてガラスなしで拝見するのも嬉しいが、こういう「接近感」も嬉しいものだ。失礼を承知で申し上げれば、旭山動物園の白クマを思い出してしまった。本像は「翻波式衣文」の代表作といわれるが、間近で見て、その堂々とした体躯の半身を包む、深く鋭い衣のひだの繰り返しに、ぞくぞくと総毛立つような力強さを感じた。頭部(もとは螺髪がついていたんだろうなあ)から胸のあたりの平板な印象と、きわめて対照的である。この弟7室は、橘寺の日羅像、秋篠寺の地蔵菩薩像など「濃い」(呪術性の強い)造型が多くて、息苦しいほどだ。

 「会津八一」関係資料は本当に少ないので、期待しないほうがいいと思うが、奈良の旅館・日吉館に掲げられていた「観仏三昧」の額が出ていたのは、思わず、にやりとしてしまった。なお、1階アトリウム(玄関ホール)にて、仏像写真家・小川晴暘没後50周年記念写真展『祈りのかたち』を開催中(~7/25)。せんとくんグッズのお店も出ている。あ、日本橋三越本店本館では『入江泰吉写真展~奈良・大和路巡礼の旅』(~7/20)も開催中だったのか。しまった、見逃した。

東京展公式サイト

新潟展(終了)公式サイト
新潟市美術館から新潟県立近代美術館への会場変更など、いろいろあったんでしたね。

奈良展(2010年11月20日~12月19日)公式サイト
図録を見る限り、逆に奈良会場は「会津八一」メインで、「仏像・仏教美術」関係の展示はすごく少なそうである。東京展+奈良展でひとつの展覧会ってことかなあ。

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