見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

「松丸本舗」で初お買いもの/丸善・丸の内本店

2010-01-05 23:59:56 | 街の本屋さん
○丸善・丸の内本店「松丸本舗

 三が日は実家に戻って、つかの間の東京生活を楽しんだ。この機会に、ぜひとも行っておきたいところがあった。昨年秋、松岡正剛氏のプロデュースによって、丸の丸善・丸の内本店内にオープンした”書店内書店”松丸本舗である(→開店当初の詳細はこちら)。

 丸善は久しぶりだ。実を言うと、あまり好きな書店ではない。同じ大型書店でも、紀伊国屋書店やジュンク堂のように「本好き」の血を騒がせる匂いが希薄で、売れる本を効率よく並べたビジネス書店、という感じがするのだ。さて、フロアマップで確認すると「松丸本舗」は4階にあるので、エスカレーターで上がっていく。すると、私の好きなMCカフェの隣りに、見るからに「異様」な本棚の一角が出現していた。窓の大きい、明るいカフェと、こちゃごちゃと(一見)乱雑に本が積み上がった本棚は、ちょっとミスマッチの感がある。開店当初、丸善のサイトや新聞の報道で、店内の写真をたくさん見ていたので、それほどには驚かない。なるほど、旧知のとおり、だと思った。

 形式的な分類にとらわれない本の並べ方は面白いが、はじめ、なかなか手が出せなかった。本棚の個性が強すぎて、ちょっとでも崩したら、怒られそうな感じがしたのだ。しばらくは、美術館の展示を見るように、遠巻きに書棚を眺めていた。はじめて親近感を感じて、書棚に一歩近づけたのは、ゲストの蔵書を再現する「本家」のコーナーである。『風林火山』で武田信玄を演じた市川亀治郎さんの本棚に『甲陽軍艦』がある。山本勘助に関する新書も。さらに中国歴史好きとお見受けし、『中原の虹』上下巻のそばに『梁啓超年譜長編』なる専門書が並んでいたのにびっくりした。『蒼穹の昴』は見当たらなかったけど、たぶんお読みだろう。さらに完訳『紫禁城の黄昏』上下巻も。そうそう、この本読むと、この本読みたくなるよね、という連関性が了解できて、可笑しかった。陳舜臣の歴史小説は文庫本でずらり。古代史より近代史が多いところに感心する。私も陳舜臣は好きだったのに、最近は全然読んでいないなあ、と思い、目についた新書『巷談中国近代英傑列伝』を買っていくことにする。

 これで気持ちがほぐれて、さらに店内を探索。書架は巻貝が円を描くように配置されていて、お客は次第に内側へと取りこまれていく(※店内マップ)。「日本の句読点1945-2025」というコーナーは、それぞれの西暦に関係する「この年この本」を並べている。ただし、タイトルに「2001年」とあっても、2001年より以前に出たものかもしれず、逆に2001年より後に出たものかもしれない。その混乱が面白い。

 ふと、目の高さの書架に、寝かせて置かれた文庫本に目がとまる。表紙は、時代小説の挿絵ふうで、障子の陰から、髷を結った半裸の女性が覗いている。題名を見たら「渋江抽斎 森鴎外」。え!? こんな話なのか? 中をめくってみると、意外とひらがなが多くて読みやすそうなので、これも買っていくことに決めた(中公文庫)。書店員の仕掛けたトラップにかかったような気もするが…。だんだん慣れてくると、書棚の上のほうに積み上げられた本のタイトルも、ちゃんと目に入るようになる。隠れるように寝ていた『正座と日本人』を見つけた。松岡正剛氏のサイト『千夜千冊・遊蕩篇』が、引っ越し前の最終夜(第1329夜)に取り上げている本だ。ちょうど、この前日に書評を読んだばかりだったので、記憶に新しかった。よしよし、これも買っていくか。

 ということで、今年の初購入本は上記の3冊。松丸本舗店内の本には全て「松丸本舗」という小さなシールが貼ってあり、松丸本舗独自のブックカバーを掛けてくれる。「いせ辰」の風呂敷っぽくて、おしゃれ。このブックカバーで本を読んでいる人を見かけたら、ひそかに親近感を抱いてしまいそうだ。

※松岡正剛氏の新サイト「ISIS本座」:松丸本舗のブックショップエディターによる「松丸プレス」掲載

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