見もの・読みもの日記

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茶道具だけではありません/知られざる畠山コレクション(畠山記念館)

2009-08-12 00:05:30 | 行ったもの(美術館・見仏)
畠山記念館 夏季展 開館45周年記念『知られざる畠山コレクション―唐三彩から秀吉像まで―』(2009年8月1日~9月23日)

 これまで紹介される機会の少なかった中国の仏像や唐三彩など、畠山記念館の知られざるコレクションの一端を公開する展覧会、だそうだ。もっとも、私が同館に足繁く通いだしたのは、近年のことなので(やっと迷わず行き着けるようになった)、私にとっては、何を見ても「知られざるコレクション」なのだが。

 で、最近の慣例により、到着すると展示室でお抹茶を一服。茶碗ごしに豊臣秀吉像(伝・狩野山楽筆)を眺めるのは、ちょっと戦国人(せんごくびと)気分。隣りには「豊国大明神」という神号の小ぶりな一行書があって、脇に「秀頼八才」と記されている。大人びた、しっかりした筆跡だ。秀頼八才といえば、慶長5年(1600)関ヶ原の戦い勃発の年。慶長3年(1598)に没した秀吉は、翌4年、後陽成天皇から「豊国大明神」の神号を授けられる。八才の少年にとって、亡き父を神号で呼ぶのって、どんな気持ちだったんだろう、としみじみ。

 土佐光起の『鶉図』は、胸にくちばしを埋めて毛づくろいする1羽の鶉を描いたもの。ふくらんだ背中、ぴんと張った足の爪の緊張感などに、繊細な観察眼がいきわたる。土佐派のイメージ(ベタ塗りの物語絵)とは、ずいぶん異なると思ったが、光起は、ライバルの狩野派や宋元画を積極的に学んだ画家。鶉図が得意で「描いたウズラに猫も飛びついた」ともいう(出典)。

 『明恵上人夢之記切』も珍しいなあ。縦長の料紙の上半分に文、下半分に絵(つる草の巻きついた立木)を描く。力強く飾り気のない筆跡は、確かに見覚えのある明恵上人のものだ。健保六年六月十一日(1218年、明恵45歳か)の夢で、たてものの傍らに神主がいて、宝樹を持ち、明恵に告げて、これを明神の御前に移し植えよと命じた、とある。明恵上人の「夢記(高弁夢記)」は、京博が7紙からなる1巻を所蔵しているほか、Wiki高山寺によれば、同寺が17点所蔵(断簡か?)、さらにMIHOミュージアムにも軸装された断簡があるようだ。畠山記念館のものは、田安徳川家旧蔵で「田安府芸堂印」の大きな朱印あり。もうひとつ、その場で読めなかった小さな朱印は「献英楼図書記」だと思われる。

 そのほか、いろいろある中で、最も私の目を引いたのは、柴田是真作の印籠箪笥。赤・黒・金・銀という派手な色彩の取り合わせを、上品にまとめている。ええと、4個入×3段だったかしら(肝腎なところを…)。引き出しのオモテには、「○○作△△図」という具合に、収まるべき印籠のタイトルが彫り込んである。注文品なのだ。箪笥から出して並べられた印籠の、多彩なデザインも美しい。根付にも注目。

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