見もの・読みもの日記

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岡山ゆかりの画人たち/雪舟と水墨画(千葉市美術館)

2009-01-26 09:15:51 | 行ったもの(美術館・見仏)
○千葉市美術館 岡山県立美術館所蔵『雪舟と水墨画』(2008年12月20日~2009年1月25日)

http://www.ccma-net.jp/

 千葉市美術館のホームページによれば、岡山県立美術館は水墨画の展示を方針の一つとし、中国宋代、日本中世にまで遡る水墨画の名品を収集してきたという。へえ~初めて知った。岡山県立美術館について検索してみても、「郷土ゆかりの芸術家のすぐれた作品を収集・展示するとともに、内外の芸術活動を紹介する展覧会やイベントを開催し、県民の幅広い文化活動の発展に寄与することを目的として設置されました」という、あってもなくてもよさそうな設置目的しか掲載されていない。もっとも、上記の「郷土ゆかりの芸術家」の中に、雪舟(備中赤浜=現・岡山県総社市出身)、宮本武蔵、浦上玉堂ら水墨画の巨匠が含まれるらしいのだが、そんなことは岡山県人でなければ分からないと思う。

 展示室の冒頭に掲げられたのは、玉澗の『廬山図』(自讃入り)。もやもやした毛玉のようなもの(獅子舞の背中みたい)が3つ並んでいて、山の頂のつもりなのだろう。正直、水墨画って、20世紀の抽象絵画と同じくらいよく分からないなあ。そのあとも、夏珪、馬遠など南宋のビッグネームが続く。「伝」とあるので、本当に彼らの作品か分からないが…まあいいや。伝・馬遠筆『高士探梅図』は、小さいながらも端正な佳品。胡粉を点じて表された白梅が爽やか。中空に串の取れた団子のような月が漂う。

 伝・月壺筆『白衣観音図』は、おや!昨年11月、徳川美術館の『室町将軍家の至宝を探る』で見て、いたく気に入った作品。実は、本展随一の呼びもの、牧谿の『老子図』(鼻毛の老子)も、徳川美術館で出会って、なんとコメントすべきか、困ってしまった作品である。

 日本の作品では雪村周継の『瀟湘八景図屏風』が素晴らしかった。濃密な靄か霞の中に、千切れたように浮かぶ山の峰。全てが生焼きのパン生地みたいに不定形で、ぶよぶよしている。丸みを帯びた山のかたちは、中国大陸ではなくて、吉野山あたりを思わせる。雪村は特に岡山と関係なさそうだが、まあいいことにしておこう。

 宮本武蔵の水墨画も意外といいなあ。『布袋竹雀翡翠古木図』の三幅対は、左右に描かれたカワセミとスズメの剽悍な表情がいい。『遊鴨図』のカモはカモノハシみたいな顔をしている。浦上玉堂は気持ちの悪いヘンな絵を描く画家だと思っていたが、小品『春山染雨図』には惹きつけられた。西洋の表現主義、たとえばムンクのエッチングやリトグラフに通じるものを感じる。浦上春琴は玉堂の長男だが、ぜんぜん画風が違っていて、女性的で親しみやすい花鳥画を描く。父の作品よりよく売れたというのには納得。肝腎の雪舟は『山水図(倣玉澗)』が見どころだろうが、私は『渡唐天神図』が気に入った。神格化された天神のイコンではなくて、かなり生々しい(生臭い)人物画である。どことなく唐太宗・李世民を思わせる。

 水墨画という作品の性質上、展覧会の会期が短めだったのが、ちょっと残念。でも、都道府県や市町村立の美術館・博物館のコレクションの出開帳は、どんどんやってほしいと思う。

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