見もの・読みもの日記

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磁州窯のバラエティ/磁州窯と宋のやきもの(静嘉堂文庫美術館)

2020-03-02 22:22:15 | 行ったもの(美術館・見仏)

静嘉堂文庫美術館 「鉅鹿(きょろく)」発見100年『磁州窯と宋のやきもの』(2020年1月18日~3月15日)※3月2日より臨時休館

 1月から始まっていた展覧会だが、2月22日の守屋雅史氏の講演会「磁州窯と磁州窯系諸窯、そしてその影響の軌跡」が聴きたくてずっとガマンしていた。それが、新型コロナウイルスの影響で世間が騒がしくなってきたので、講演会も中止になるのではないかと心配したが、幸い、聴講することができた。時間ギリギリに飛び込んだら、早い番号の番号札をくれたカウンターのお姉さん、ありがとう。

 守谷先生は大阪市立美術館の学芸員として、2002年に特別展『白と黒の競演-中国・磁州窯系陶器の世界-』を企画開催された。このときの図録は、磁州窯を語るには必須の参照文献となっているそうだ。私が磁州窯にハマったのは、忘れもしない、2005年に出光美術館で開催された『中国・磁州窯-なごみと味わい-』展である。東京近県では、かなり早いほうの磁州窯特集展だったのではないかと思う。

 あらためて磁州窯の「発見」をおさらいすると、1910年代の河北省鉅鹿では、白化粧を施したやきものが大量に出土していた。この地域は北宋の大観2年(1108)に洪水で埋没しているので、12世紀初頭より古い遺物である。調べていくと、明代以降の文献に記された「磁州窯」が該当するのではないかと考えられるようになった。つまり磁州窯は「忘れられたやきもの」だったということが分かる。大変ロマンチックでよい。その後、磁県の彭城窯と観台窯の発掘調査が進んだ。磁州窯系の窯は、大規模な登り窯ではなく、作りが簡単な饅頭窯である。守屋先生が観光土産に買ってきたという饅頭窯のミニチュアを回覧してくれた。

 講義の後半は、磁州窯の名品の写真を見ながら解説。磁州窯は、緻密さといい加減さが同居しており、そこが日本人に受けるのだという。分かる! 緻密さの粋を代表する清朝工芸の美をテーマに展覧会をやったら、全然お客が来なかったというお話に笑ってしまった。

 講演を聴き終えてから展示を鑑賞。全78件のうち、50件近くが磁州窯系である。「黒と白のやきもの」が多いが、白無地もあるし、白地鉄絵とか三彩とか翡翠釉(青い!)とか、実にさまざまな磁州窯があるものだ。白地紅緑彩はベトナムのバッチャン焼きを思わせた。共通項があるとしたら、隠しても隠し切れない「ゆるさ」である。守屋先生のお話で、なるべく大量生産に対応しようとした結果、手間の少ない装飾方法が生まれる(掻き落としから鉄絵へ)というのも面白かった。そして、遼、金、元の表示が多かった。これら全て岩崎家のコレクションに由来するとしたら大したものだ。

 最後のセクションには、磁州窯以外の宋のやきもの、端正な青磁や白磁が並んでいて、その中にさりげなく国宝の曜変天目茶碗も置かれていたが、磁州窯の陰で印象が薄かった。あと磁州窯には枕の名品が多いのだが、守屋先生は実際に使ったことがあるとおっしゃっていた。いいなあ。欲しい。


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