見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

没後220年 長沢芦雪(京博)+龍谷の至宝(龍谷ミュージアム)

2019-07-31 22:36:32 | 行ったもの(美術館・見仏)

京都国立博物館 名品ギャラリー(平常展示)

 先週末の関西出張のついでに、土曜日は半日だけ博物館もまわった。京都国立博物館には開館の少し前に入った。常設展だけなのに朝から長い行列ができていてびっくりしたが、夏期講座のお客さんだったようだ。

 いつものように3階から見ていく。「陶磁」は『日本と東洋のやきもの』(2019年7月 9日~8月12日)で、京都の寺院が伝えてきたやきものの名品を見ることができた。万福寺の大きなティーポット『紫泥罐』とか、曼殊院の『青磁尊式瓶』とか、初めて見るものが多くて面白かった。建仁寺の『四頭茶礼道具』は大きなお盆に八客の天目茶碗+天目台。それに金属製のポット(浄瓶)、注ぎ口には茶筅がかぶせてあった。

 2階へ。「絵巻」は『福富草紙』と『鶴の草紙』。「仏画」は白描の図像集。「中世絵画」は『描かれた動物たち』(2019年7月2日~8月12日)特集で、狩野松栄筆『龍虎豹図』はマンガみたいにキャラが立っていてかわいい。単庵智伝筆『龍虎図屏風』の龍は大きな耳(?)にタコの足みたいな尾、ポケモンの仲間みたいだ。

 そして私が今回、このために来たのは「近世絵画」の『没後220年 長沢芦雪』(2019年7月2日~8月12日)。わずか10作品だが、芦雪を語るポイントを押さえた展示で、さすがだと思った。『人物鳥獣画巻』に描かれていたのはイタチだろうか?コツメカワウソみたいな愛らしさ。唐美人の『楚蓮香図』。人間くさい表情の『楓鹿図屏風』。応挙風にみっしり描き込んだ『薔薇孔雀図』。どう見ても丸くなったネコの『虎図』。指頭画の『牧童吹笛図』。江ノ島みたいな『蓬莱山図』。芦雪といえば月の『朧月図』など。セレクションがいいと、この点数でも不満が残らない。

 「中国絵画」はまたも斉白石特集。『翎毛雑画冊』のスズメの絵に「曽看朱雪個有此雀、似是而未是也」という自賛があり、「朱雪(八大山人)の描いたスズメは、私のスズメに似ているが及ばない」(大意)という解説が添えてあって驚いた。いや、筋金入りの「八大山人推し」の斉白石が、いくら自分の画力に自信を得たからってそんな傲慢なことを言うかな? 気になってネットで調べたら、中国語の評論で「未是」を斉白石の自称と解釈している例を見つけた。こちらの解釈のほうが腑に落ちる。

 1階。特集展示『赤ってじつはどんな色?』(2019年7月2日~8月12日)が面白かった。考古から仏像、五節舞姫人形、狂言面、赤絵のやきもの、堆朱など。埴輪『帽子をかぶった男子』の赤い化粧は戦士の表現なのだろうか。『九州・海上牧雲記』を思い出した。特集展示『新収品展』(2019年7月2日~8月4日)は2017~2018年度に同館が新たに収蔵した美術品・文化財のなかから約70件の名品を展示。2年分だというし、毎年行われている展示ではないのだな。はじめて見たが、こんなすごい作品が寄贈されたり市場に出たりするのかと思って、しみじみ驚いた。さすが京都である。

 このへんで予定の時間になってしまい、もう1箇所寄るかどうするか迷ったが、結局、次に向かった。

龍谷ミュージアム 企画展『龍谷の至宝-時空を超えたメッセージ-』(2019年7月13日~9月11日)

 2019年に創立380周年を迎えた龍谷大学が、所蔵するさまざまな分野の学術資料を一堂に会する企画展。創立380年って間違いじゃないかと思ったら、1639年に本願寺の教育施設「学寮」として設立されてからをカウントするのである。すごい。歴代宗主が所蔵してきた「写字台文庫」(龍谷大学図書館所蔵)の貴重書も多数出ている。

 大谷探検隊がもたらした貴重な文書・文物も。久しぶりに『李柏尺牘稿』の本物を拝むことができた。西夏文字の『六祖壇経』も。アスターナ出土の『青龍(給田文書)』は、文書をつなぎあわせて青龍型の墓所の装飾の裏張りに使用したもの。表側の、鮮やかに彩色された青龍の一部は旅順博物館にあるそうだ。同じくアスターナ出土の『伏羲女媧図』(7~8世紀)は色が鮮やか過ぎて複製かと思ったら本物だった。本図と接続する下半身部分は1972年に発掘され、現在はウルムチの新疆ウイグル自治区博物館にあるそうだ。見たいなあ。いつか一緒に展示できるといいなあ。

 驚異だったのは、仏教天文学の世界観をあらわす須弥山儀。四つ足の丸火鉢のようなかたちで赤・黄・白・青(緑)に塗り分けた円盤の上に低いピラミッドのような須弥山があり、さらに天体の運行を表すからくり模型が載っている。田中久重(からくり儀右衛門か!)の製作。少し小型の『縮象儀』も並んでいた。円形の大地のうち、日本を含む「南贍部洲」(青色の扇形)だけを切り取ったもので、よく見ると中心に日本地図が描かれている。こんなものが存在するとは全く知らなかったので、いま図録の解説を読んで勉強している。


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