見もの・読みもの日記

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『おんな城主直虎』を応援する/戦国!井伊直虎から直政へ(江戸東京博物館)

2017-08-08 23:27:07 | 行ったもの(美術館・見仏)
江戸東京博物館 2017年NHK大河ドラマ「おんな城主直虎」特別展『戦国!井伊直虎から直政へ』(2017年7月4日〜8月6日)

 大河ドラマ『おんな城主直虎』を、とても楽しく見ている。ときどき胃が痛くなるような楽しさだが、それもまたよい。正直、始まる前は、ほとんど史料がなく、実像も明らかでない女性を主人公にして、大河ドラマが成立するのだろうかと不安に思っていたが、全く杞憂だった。脚本の森下佳子さん、さすがだ。

 私の場合、大河ドラマを見る習慣がついたのは2007年の『風林火山』からで、同時に大河ドラマ連携展示とでもいうべきイベントがあることを知って、毎年、楽しみにするようになった。ただ『直虎』周辺に関しては基本知識がなく、ドラマを見て初めて知る人物や事件が多いので、なるべく物語が進んでから展示を見に行こうと決めていた。そして、とうとう東京展の最終日となった8月6日(日)に見てきた。

 冒頭は今川家セクションで、今川氏親の木像、寿桂尼朱印状、今川家式目(今川仮名目録、写本)、太原雪斎の頂相および木像など。かつて『風林火山』で今川家に興味を持ち、今川家の菩提寺である臨済寺(静岡市)や太原雪斎が住職をしていた清見寺(静岡市)を訪ねて、ゆかりの寺宝を拝したいと思ったが、実現しないまま、時が過ぎていた。ようやく念願が叶ってありがたい。織田、武田関連の品もあり、『武田二十四将図』では、やっぱり山本勘助の姿を探す。武田勝頼奉納の箏(富士山本宮浅間大社)をしみじみ眺める(悲運の武将を思って、しみじみする品が多い)。四角い赤地の布にムカデを描いた『百足旗指物』は武田らしくてテンションが高まる。武田家臣山本家伝来、ただし、江戸時代の品という。「直虎時代の絵画」では『富士三保松原図屏風』『帝鑑図・咸陽宮図屏風』など、静岡県立美術館(行ったことがない)の名品を見ることができた。後者は、高橋是清の旧蔵品だそうだ。

 続いて直虎と井伊谷のセクション。ここは大河ドラマの効果を実感する。少なくとも私は、井伊直盛とか井伊直平と聞いても、『直虎』を知らなければ、何も気持ちが動かなかったと思う。それが、ドラマの効果は絶大で、演じた俳優さんの顔が浮かび、懐かしく慕わしく感じられる。亀之丞(井伊直親)が井伊谷に帰るに際して奉納したと伝える『青葉の笛』(浜松・寺野六所神社)にも感激した。伝承は歴史の一部。こういう展示もあっていいものだと思う。龍潭寺所蔵の井伊直親木像は撮影OKコーナーにあって、若い女子が「直親とツーショット撮りたい」と嬉しそうだった。私は、昊天さんと傑山さんの頂相が嬉しかった。南渓和尚の頂相は展示期間が短くて、見られなかったのが残念。

・井伊直盛木像


・井伊直親木像


・傑山宗俊印可状(部分)※全て所蔵は井伊谷・龍潭寺


 そして、特別大事に展示されていたのが『井伊直虎・関口氏経連署状』(浜松・蜂前神社/浜松市博物館保管)。これが直虎の名と花押が記された唯一の書状であることは、いちおう知っていたので、じっくり眺めた。なお、この日の夜が『直虎』第31回「虎松の首」の放送日で、ドラマの中で直虎が、現存古文書そっくりの連署状に花押を記す場面があったのは、制作陣に「分かってるね!」と拍手を送りたい。このほか、井伊谷徳政令関係の古文書も複数あり、小野但馬守政次や瀬戸方久の名前を見ることができた。小野但馬守政次は「小但」、井伊の次郎法師は「井次」とか、省略形が多用されているのが面白かった。全文翻刻と現代語訳を、ありがとう!!

 そのあとは、徳川家康と四天王(酒井忠次、本多忠勝、榊原康政、そして井伊直政)、さらに直政による彦根藩創設への道程が紹介されている。『直虎』がどこまでを描くのか分からないが、本当はドラマを見てから展示を見たかった。『長久手合戦図屏風』や『関ケ原合戦図屏風』は、類例を何度か見ているはずだが、誰に感情移入するかで、ずいぶん違った風景が見えるように思う。本多忠勝の『黒糸威胴丸具足』(数珠を巻き付けたもの)は、何を考えていたんだか呆れるほどスゴイ。彦根藩井伊家二代直孝の所用の『朱漆塗紺糸威縫延腰取二枚胴具足』は、典型的な「井伊の赤備え」で、兜の側面に金箔押しの長大な天衝を立てる。直政所用の兜と同じ様式で、その姿から「赤鬼」と呼ばれたというが…これじゃ歩けないだろ、と思った。現在は紺糸を用いているが、元来は黒糸だったとのこと。ふーむ、どっちがカッコいいかな。

 なお、図録を見たら、同型の「赤備え」の甲冑は複数伝来している。直政所用と伝える一具は、東京展には出ていなかったので、静岡展か彦根展には出るのだろう。赤地に金で井桁を描いた井伊の旗印『朱地井桁紋金箔押旗印』も、東京展には関ケ原の戦いで用いたと伝わるものが展示されていたが、ほかにも複数あるそうだ。あと、東京展には出ていないのだが『井伊家歴代画像』(歴代当主大集合の図)見たいなあ。久しぶりに彦根城に行こうかなあ。図録には、井伊家ゆかりの名所案内(浜松、彦根)もあって、旅心を誘われる。

 ドラマは視聴率が伸び悩んでいるそうだが、変な方向転換やテコ入れをせず、現在のテイストを最後まで貫いてほしいと思っている。私はここまで大満足である。『風林火山』『平清盛』『真田丸』に続く、4本目の完走大河にたぶんなると思う。

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2 コメント

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お出かけください。 (H.inagaki)
2017-08-13 21:44:24
彦根は日帰り圏内ですから折にふれ出かけます。個人的には1番の城址。春、彦根屏風展示の頃、花見がてらもいいですし、天守から望む佐和山遠望もいい。お堀の船巡りも良かった。ボランティアの説明がよく、水運に恵まれた城でもある事がわかります。料金もさほどではない記憶です。
龍潭寺は井伊谷、彦根、よく似た風情とも思いますがどうでしょう。
旅のエッセイ、楽しみにお待ちします。
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H.inagaki様 (jchz)
2017-08-15 21:53:24
コメントありがとうございます。

彦根は、京都の宿が取れなかったときや、竹生島観光に行くときに何度か泊まったのですが、最近、ぜんぜん行っていないですね。
近江(滋賀県)は全般的に好きなので、季節のいいときにゆっくり訪ねてみたいと思います。


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