見もの・読みもの日記

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聖徳太子及び天台高僧像を見る/最澄と天台宗のすべて(東京国立博物館)

2021-11-11 21:49:27 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京国立博物館 伝教大師1200年大遠忌記念・特別展『最澄と天台宗のすべて』(2021年10月12日~11月21日)

 2021年が、伝教大師最澄(766or767-822)の1200年の大遠忌にあたることを記念し、延暦寺における日本天台宗の開宗から江戸時代に至るまでの天台宗の歴史を紹介する。東京会場の出品点数は80件余りだが、けっこう細かな展示替えがある。その中で、狙いを定めて11/6(土)の予約を取ったのは、兵庫・一乗寺の『聖徳太子及び天台高僧像』全10幅(平安時代)が勢ぞろいする期間だからだ。

 9:30の開館と同時に入館するために、早めに行って門前に並んだ。開門を待つ間、スタッフの方が「正面が本館、右が東洋館、奥が平成館です」みたいな丁寧な案内をしてくれるのを初めて聞いた。会場では、最初から順序よく見るのではなく、『聖徳太子及び天台高僧像』のある場所に直行しようと決めていた。ところが入場したら、最初の部屋の左側に、この作品が並んでいた。まだあまり人も集まっていなかったので、ゆっくり落ち着いて見ることができた。

・聖徳太子…太子は坐像で柄香炉を持つ。髪は角髪に結い、顔は白く、唇は赤く、眼の下が頬紅でピンク色に塗られている。半跏踏下の姿勢と思われ、袴と沓を履いた左足が見えている。10人の小さな童子たちも、同様に髪は角髪、白い顔に赤い唇。太子に手を合わせ、反り返っている童子がかわいい。

・龍樹…左手に如意、右手に香炉?を掲げて蓮華座に坐す。角ばった青年の顔立ちだが、この10幅全て唇の赤色が目立つ。赤とピンクに華丸文をあしらったような衣が華やかでおしゃれ。

・善無畏…オレンジ色の衣、頬骨の高い、深い皺の刻まれた老僧が椅子の上で、経巻?を両手に挟んで、伏し拝んでいる。横に小さなかわいい毘沙門天が立つ。椅子の下に、無造作に脱ぎ捨てたような沓が描かれている。

・慧文(えもん)…太い下がり眉、無精髭が目立つのに、少女のように赤い唇のおじさん僧の立像。白に赤をボカシで配した衣も美しいが、裾と沓の柄がかわいい。特に沓!

・慧思(えし)…五分刈り、顔が小さく、ガタイのよさそうな僧侶が、胸元の大きくはだけた衣で直立する。手には秩入りの書。10幅の中で、最も素朴な趣き。

・智顗(ちぎ)…黒い頭巾で手を合わせる白面の貴公子。頭頂に乗せている手鏡のようなものは禅鎮という。斜め横向きの顔に深い陰影がついているように見えるが、これは書き直した跡らしい。最澄に似ているのは、最澄が智顗の生まれ変わりと言われるなど、両者の特別な関係を表しているのではないか。脱ぎ捨てた沓の内側がかわいい。

・灌頂…写実的で、今でも普通にいそうな僧侶の肖像。がっちりした体形で、胸の前で組んだ両手が大きい。あと、この10幅全て、袈裟の掛け方が古風な感じがする。環はなくて紐で吊るのだな。

・湛然…下がり眉、細い垂れ目。ピンクの衣で、かなり色が剥落している様子。

・最澄…赤い衣、緑の頭巾。青やピンクの模様の入った華やかな袈裟。解説に「最澄は現代風のイケメンだったようです」とあって笑う。アーチ型の眉、整った鼻筋など、顔は非常に丁寧に描かれている。目は静かに閉じている。

・円仁…最澄同様、目を閉じ、禅定印を結んで坐すが、眉や鼻筋は太く、血色のよい壮年の僧侶像。

 図録の解説によれば、複数の図像系統を組み合わせたものであろうとのこと。確かに顔かたちの描き癖には異なるところがある。しかし、沓への執着(履いているものも、脱ぎ捨てているものも)が共通しているように思われて、興味深い。

 これまでも1、2点は東博の国宝室などで見たことがあるが、全10幅をまとめて見る機会は、おそらく二度とないのではないかと思う。一乗寺に参拝しても、この作品は見られないのだから。大満足。

 ほかの展示作品は稿をあらためて。

※1089ブログ:「聖徳太子及び天台高僧像」勢ぞろい!!


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