■サントリー美術館 コレクション展『名品ときたま迷品』(2024年4月17日~6月16日)
「生活の中の美」を基本理念とするサントリー美術館コレクションの「メイヒン」を一堂に会し、さまざまな角度から多彩な魅力を紹介する。会場の冒頭に展示されているのは、本展のポスターにも写真が使われている『鞠・鞠挟』一組(江戸時代)。蹴鞠の鞠を漆塗の木枠に吊るしたものである。これは名品扱いか迷品扱いか不明だが、2019年の『遊びの流儀 遊楽図の系譜』で見た記憶がある。『泰西王侯騎馬図屛風』(前期)『かるかや』『酒伝童子絵巻』など、屏風と絵巻は文句なしの名品揃い。光悦の『赤楽茶碗(銘:熟柿)』は、同館所蔵であることを忘れていたので、たじろいでしまった。和洋のガラス工芸も楽しかったが、薩摩切子には緑色が少ないという解説が気になった。和ガラス一般にはあるのに不思議である。
■町田市立国際版画美術館 企画展『版画の青春 小野忠重と版画運動-激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち-』(2024年3月16日~5月19日)
1930-40年代に活動した「新版画集団」と「造型版画協会」による版画運動を、リーダーであった小野忠重の旧蔵品を中心に紹介する。小野忠重をはじめ、多数の作家が紹介されているが、無理に名前を覚えようとせず、ぼんやり作品を眺めた。暗い世相を思わせる、強烈で毒々しい作品もあるけれど、全般的には明るく抒情的な作品が多くて癒された。展示作品の所蔵館としてリストに登場する小野忠重版画館は、杉並区阿佐ヶ谷にある、小野の旧居を改造した美術館だが、現在は展示活動はされていないようだ。それでもコレクションが維持されていてよかった。
■東京国立博物館 特別展『法然と極楽浄土』(2024年4月16日~6月9日)
令和6年(2024)に浄土宗開宗850年を迎えることを機に、法然による浄土宗の立教開宗から、弟子たちによる諸派の創設と教義の確立、徳川将軍家の帰依によって大きく発展を遂げるまでの、浄土宗850年におよぶ歴史を、全国の浄土宗諸寺院等が所蔵する貴重な名宝によってたどる。当麻寺(當麻寺)の国宝『綴織當麻曼荼羅』が見たかったので、連休中に出かけた(~5/6展示)。照明の具合か、当麻寺の本堂はもちろん、奈良博で見たときよりも図像が判別しやすかったように思う。
楽しかったのは、鎌倉~室町時代に制作された『法然上人絵伝』等々の絵画資料。法然の伝記とはあまり関係なく、中世の人々の生活の細部が分かってとても面白い(家の中にどのくらい畳が敷かれていたか、宴会のお膳に何が載ったか、誰が履物を履いていたか、など)。
写真撮影可能で盛り上がっていたのは、香川・法然寺(四国に配流になった法然にちなむ)から出開帳の仏涅槃群像。全26躯で、這っているイタチとかコウモリとかカタツムリ(でかい)もいる。
反対側にはヘビにウサギにネコ。
しかし、法然寺のホームページを見にいったら、彩色されたキジやニワトリ、天井の隅には、雲に乗って下りてくる摩耶夫人も取り付けられており、全82躯で構成されているという。これは現地に見に行かないと! 四国霊場はほぼ未踏地なので、ゆっくり回りたいなあ。