○淡交社編集局『決定版・御朱印入門』 淡交社 2008.12
友人からのお薦め本。私が「御朱印」という習慣を知ったのは、高校の修学旅行である。思えば、あの修学旅行が私の人生に与えた影響は大きかった。それまで神社仏閣には何の興味もない高校生だったが、二年生の秋冬から修学旅行の準備学習が始まり、和辻哲郎の『古寺巡礼』を読んだり、土門拳の写真集を眺めたりしているうちに仏像の魅力に開眼し、三年生の春に修学旅行に出かけるときは、すっかり仏像通のつもりだった。
けれども、その修学旅行でただひとり、仲のよかった友人が「御朱印帖」なるものを携えてきたのにはびっくりした。彼女自身は仏像にも神社仏閣にもさほど関心はなくて、「お姉ちゃんに頼まれたから」という理由だったけれど。全ての参拝先で、律儀に友人が御朱印をいただくのをそばで見ていた私は、よし!私も始めよう、と心に思ったのである。
その最初の機会は、大学生になって、初めてひとりで京都・奈良を旅行したときだったと思う。以来ほぼ30年、御朱印帖は、私の神社仏閣めぐりの必携アイテムである。整理が苦手なもので、拝観券やパンフレット類はすぐ散逸させてしまう。写真も撮ったり撮らなかったり。でも御朱印帖だけは絶対に捨てない。日付が入っているし、参拝の順序がはっきり分かるのがありがたい。
むかしは、奈良・京都のような観光地はともかく、ちょっと鄙びた土地の神社仏閣では、20代の若者が御朱印を求めるのは珍しがられた。「いや、ちょっと祖母に頼まれて」なんて、言わなくてもいいウソをついたこともある。最近は若者や外国人の姿も多くなって、本書が示すように「密かなブーム」と言えるかもしれない。だが、ブームに乗って御朱印集めを始めたと思しい参拝客の態度(年齢を問わない)には、眉をひそめたくなるときがある。本書によって、御朱印をいただくときの最低限の作法が普及すればいいなあ、と思う。
一方で、御朱印を授受する側にも問題が…。「世界遺産の寺」みたいなスタンプを押すのはどうなの?とか、いろいろ言いたいことはあるのだが、私がいちばん残念に思うのは、美しい墨筆を書ける人が減ったことだ。小さなお寺で、若いお坊さんが緊張しながら書いてくれる初々しい楷書は、味があっていいのだが、それなりのお年の方が、くちゃくちゃした悪筆だとガッカリする。まあ、日本人全体が墨筆離れして久しいものなあ。そんなわけで、書き手の年齢や姿かたちを想像しながら、本書に掲載された百数十ヶ所の御朱印の写真(例外はあるが、平成14、15年以降の印が多い)を鑑賞するのも、一興である。
関東・関西圏の有名寺社の御朱印は、貰っているものが多かったが、富士山山頂の浅間大社奥宮とか吉野の大峯山寺とか、山頂の霊場の御朱印は初めて見た。体力のある年齢のうちに貰いに行きたいなあ…。
友人からのお薦め本。私が「御朱印」という習慣を知ったのは、高校の修学旅行である。思えば、あの修学旅行が私の人生に与えた影響は大きかった。それまで神社仏閣には何の興味もない高校生だったが、二年生の秋冬から修学旅行の準備学習が始まり、和辻哲郎の『古寺巡礼』を読んだり、土門拳の写真集を眺めたりしているうちに仏像の魅力に開眼し、三年生の春に修学旅行に出かけるときは、すっかり仏像通のつもりだった。
けれども、その修学旅行でただひとり、仲のよかった友人が「御朱印帖」なるものを携えてきたのにはびっくりした。彼女自身は仏像にも神社仏閣にもさほど関心はなくて、「お姉ちゃんに頼まれたから」という理由だったけれど。全ての参拝先で、律儀に友人が御朱印をいただくのをそばで見ていた私は、よし!私も始めよう、と心に思ったのである。
その最初の機会は、大学生になって、初めてひとりで京都・奈良を旅行したときだったと思う。以来ほぼ30年、御朱印帖は、私の神社仏閣めぐりの必携アイテムである。整理が苦手なもので、拝観券やパンフレット類はすぐ散逸させてしまう。写真も撮ったり撮らなかったり。でも御朱印帖だけは絶対に捨てない。日付が入っているし、参拝の順序がはっきり分かるのがありがたい。
むかしは、奈良・京都のような観光地はともかく、ちょっと鄙びた土地の神社仏閣では、20代の若者が御朱印を求めるのは珍しがられた。「いや、ちょっと祖母に頼まれて」なんて、言わなくてもいいウソをついたこともある。最近は若者や外国人の姿も多くなって、本書が示すように「密かなブーム」と言えるかもしれない。だが、ブームに乗って御朱印集めを始めたと思しい参拝客の態度(年齢を問わない)には、眉をひそめたくなるときがある。本書によって、御朱印をいただくときの最低限の作法が普及すればいいなあ、と思う。
一方で、御朱印を授受する側にも問題が…。「世界遺産の寺」みたいなスタンプを押すのはどうなの?とか、いろいろ言いたいことはあるのだが、私がいちばん残念に思うのは、美しい墨筆を書ける人が減ったことだ。小さなお寺で、若いお坊さんが緊張しながら書いてくれる初々しい楷書は、味があっていいのだが、それなりのお年の方が、くちゃくちゃした悪筆だとガッカリする。まあ、日本人全体が墨筆離れして久しいものなあ。そんなわけで、書き手の年齢や姿かたちを想像しながら、本書に掲載された百数十ヶ所の御朱印の写真(例外はあるが、平成14、15年以降の印が多い)を鑑賞するのも、一興である。
関東・関西圏の有名寺社の御朱印は、貰っているものが多かったが、富士山山頂の浅間大社奥宮とか吉野の大峯山寺とか、山頂の霊場の御朱印は初めて見た。体力のある年齢のうちに貰いに行きたいなあ…。
御朱印帳、私も持っています。
好きなのですね、でも、このような入門書があるのは知りませんでした。興味があります。
最近、御朱印帳当てに「巡排の旅」という本を定期購読したりして!
勉強させて頂ける内容がたくさんあります。毎日の様にこれほどの文章をお書きになるのは、大変でしょう。
情報を本当にありがとうございます。