見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

慶応大+立教大の貴重書/和本シンポジウム(東京古書会館)

2011-10-03 23:02:23 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京古典会 創立100周年記念『和本シンポジウム:貴重書展-和本の世界-』(2011年10月2~3日、東京古書会館)

 古書の日(10月4日)にあわせたイベント。トークイベントや展示解説のあった2日(日)は、残念ながら仕事で行かれなかったので、展示だけ見てきた。以下の三部構成から成る。

1.斯道文庫蔵和漢古典籍集覧(協力:慶應義塾大学附属研究所斯道文庫)

 斯道文庫の貴重書は、2010年12月の開設50年記念『書誌学展』をはじめ、何度か見せていただいてるが、やっぱりスゴイ。今回は、和書20点、漢籍18点。和書は、巻子本、粘葉装、袋とじなど、装丁別に展示されているのが面白かった。冒頭の巻子は薬師寺の朱丸印が押された「魚養経」で、この夏、奈良博で大量に見たので、よく印象に残っていた。「センチュリー財団寄託品」という小さな字の注記が目にとまる(他にも数点あった)。

 異例に小さい枡形本の「古今和歌集」(鎌倉写)と、特大の枡形本の「平家物語」(室町末写)も面白かった。後者は「百二十句本」と呼ばれるテキストで、毎日4句ずつ語ると30日で語り終わる。120句って120章(回)なのか。水滸伝や西遊記みたいだ。「平戸藩蔵書」「楽歳堂図書記」の印は読めた。後者は、松浦静山が創設した文庫らしい。

 漢籍は、いずれもコンパクトながら行き届いた解説つき。明の前期刊本は元の遺風を引き継ぎ、後期は大衆化してしまうが、中期のものは、威風堂々、宋時代への回顧を思わせ、この時代の刊本になじむと美意識が養われるとか、日本の五山版と宋刊本は瓜二つで見分けがつかないが、紙質を見ると違いが分かるとか、いろいろ勉強になる。

 「華亭百詠」は清代の蔵書家・知不足斎鮑士恭の蔵書(鈔本)で、四庫全書編纂時、宮廷に貸し出されたが、翰林院の役人は、借りた本にメモを書き入れ、翰林院の大印を押して返しているという。図々しさに苦笑してしまったが、別に悪いことではなかったのかな。

 それにしても『書誌学展』の図録が、自分の部屋で見つからない情けなさ。整理悪過ぎ。2007年の『義塾図書館を読む』の図録は出てきたのに…。

2.江戸川乱歩と東京古典会-購入記録にみる和本蒐集の軌跡(協力:立教大学)

 立教大学が有する乱歩の旧蔵書も、神奈川近代文学館の『大乱歩展』で見たことがある。ただし、今回は、乱歩の「和本愛」に焦点をあて、25点を展示。面白いのは、それぞれに「和本カード」(自分の名刺を利用したものと、専用カードと有り)が作成されていること。なんと、きちんと整理された和本カード1,190枚が見つかっているそうだ。専用カードの場合は、表面に一般的な書誌事項と備忘メモ、裏面に価格と購入した書店名を記す。

 メモは「元表紙、元題箋、但し刊記の一丁書写」みたいな形態的記述もあれば、「市井奇談を集め彩色絵にて現わす、血腥きもの多し」みたいな内容にかかわるものもある。「男色十寸鏡・下巻」には「帝大図書館に完本あり」と記載されていたが、乱歩は実際に帝大図書館に見に行ったんだろうか。

3.東京古典会創立100周年記念 古典籍展観大入札会 出品物プレビュー

 来月、行われる入札会のプレビューだそうだ。写経関係が眼福。え、ほんとにこんな文化財級の古典籍が取り引きされるの? 展観日(11月11~12日)には、一般の来場者でも出品物を間近で見ることができるらしい。行ってみようかしら…。

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1 コメント

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古典籍展観大入札会 (鴨脚)
2011-10-04 21:17:22
いつも楽しく拝読しております。

とっくにお出かけかと思いましたが、これは面白いですよ。よほど貴重なものでなければ、実際に手に取って見ることができますから。最近は中国人の方が目立ちますね。関西の有名な古書店さんもたくさん下見にお出でになります。

最低でも10万円からの取引なので、この10数年間で4回しか入札できませんでしたが、3回落札できました。会員書店さんに落札価格に消費税と1割程の手数料を乗せるので、どうしても割高になります。でも御縁と言いましょうか、二度と出会えないような本が目白押しなので、できる限り出かけるようにしています。
ただし中には出自の怪しい本もあるわけで、値踏みは自分の経験と眼だけが頼りです。入札に参加する書店さんと値段や価値を相談しますが、参考にとどめたほうが無難なようです(自分が欲しいものはそこの書店が出品してるかもしれないので…(笑)。
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