見もの・読みもの日記

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2012秋@関西:明清の美術(大和文華館)

2012-09-28 21:18:16 | 行ったもの(美術館・見仏)
大和文華館 特別企画展『明清の美術-爛熟の中国文化-』(2012年8月18日~9月30日)

 朝起きると、久しぶりの雨。今日はこの展覧会に目的をしぼることにする。ゆっくり朝食を取り、10:00の開館ちょうどくらいに大和文華館着。会場に入ると、反対側の壁に、大きな『閻相師像』が掛かっているのがすぐに目に入り、嬉しくなる。今回の展覧会は「都市の華やぎ」「筆墨のたのしみ」を二大テーマとし、前者は主に彩色画、後者は淡彩・墨画を集める。

 冒頭は、古代への憧れに満ちた故事人物画、仕女風俗画。伝・仇英筆『桃李園・金谷園図』二幅(知恩院蔵)が特別出陳。同じく仇英筆『仕女図巻』は、あられもない全裸の仕女が池に入って蓮の花(実)を採む場面。岸から手を伸ばす女性も、肩出しの下着スタイルである。「採蓮」って漢詩にもよく登場するが、こんな色っぽい場面を想像すべきなのか?

 『文姫帰漢図巻』は明代だが、南宋時代に作られた原品を模写したもの。物語の舞台は漢代だが、匈奴として描かれているのは、宋と対峙した遼(契丹)の風俗だという。ややこしい。丈の長い詰襟ふうの上衣を着込んでいる。よく似たテーマ(王昭君の故事)を描く『明妃出塞図巻』(明代)は、胡兵の服装(腹巻ふうの鎧)が異なる。こっちはモンゴルっぽいかな? 勘だけど。

 『明皇幸蜀図』は、安禄山の乱で蜀に逃れる玄宗一行を描く。台湾・故宮博物院が所蔵する同図(唐代)の左半分と一致する。唐代山水画の実際は、その違例が少ないため不明な点が多いのだそうだ。確かに、いわゆる中国的(漢画的)な山水と違って、大和絵みたいにふわふわした感じだ。

 続いて、花鳥画。色彩のはっきりした明代花鳥画の中にあって、さわやかな色合いがいいなーと思った作品の作者が「山口宗李」という日本人名だったので、びっくりした。実は琉球の人(1672-1743)。福州に留学して絵画を学び、具師度という唐名も持っている。展示作品は聖徳5年(1715)作で、沈南蘋の来日(1731)に先行する。明清の花鳥画は、木彫や磁器など、装飾的な工芸品との関わりが深い。一緒に展示された『五彩飛馬文碗』が、一目で気に入る。濃緑の波濤を背景に、白い五弁花が舞い散り、黄色や水色の馬が躍る図柄だ。

 それから、西洋画法のミニ特集。写実的な『閻相師像』は三度目かな。何度も見ていると、だんだん画中の人物に親近感が湧いてくる。閻相師(字は渭陽)の墓が、甘粛省の高台県正義峡(酒泉と張掖の間)にあると知って、行ってみたくなった。『台湾征討図巻』は、清軍の圧倒的な火器に翻弄される台湾軍を見ていると、四国連合艦隊に攻められる長州みたいに思えてくる。焦秉貞筆『西洋風俗画』は、ヴェニスの街角風景を写したものらしいが、下手すぎて、大きな洋犬(?)が怪物みたいに見え、妖しすぎる。

 後半は「筆墨のたのしみ」。明清の水墨画の魅力を、私は、ここ大和文華館と京都の泉屋博古館のコレクションで知った。もはや馴染みの作品が多いが、見るたびに新鮮な発見があって、うれしい。画家・程邃(ていすい)の解説に「形象を求めるというよりも、墨と紙の素材の美しさを追求する」云々とあったが、だんだん分かる(同意できる)ようになってきた。あえて、いちばん好きな作品を挙げるなら、陸治筆『冬景山水図』かな。また次に見られるのはいつだろう、と名残りを惜しみながら帰った。

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