見もの・読みもの日記

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2021年9月@関西:『京のファンタジスタ』の江戸絵画

2021-09-23 18:10:45 | 行ったもの(美術館・見仏)

福田美術館×嵯峨嵐山文華館『京(みやこ)のファンタジスタ~若冲と同時代の画家たち』(2021年7月17日~10月10日)

 承天閣美術館から嵐山へ移動。嵐山は2012年以来、9年ぶりである。前回も嵐電嵐山駅まわりの急激な「観光地化」に驚いたが、今回はさらにその徹底した姿を見ることになった。途中、嵐電北野白梅町の駅舎の変貌ぶりにも驚いた(2021年3月リニューアル)。

 福田美術館と嵯峨嵐山文華館の2館共催によるこの展覧会、どうしても見たくて東京から来てしまった。第1会場の福田美術館は、2019年10月に開館した新しい美術館で、消費者金融「アイフル」の創業者・福田吉孝が収集した日本絵画など約1,500点を収蔵している。え、サラ金?と身構えるところだが、小島庸平『サラ金の歴史』を読んで以来、消費者金融のイメージが少し変わった(ただし同書にアイフル関係の記述は少ない)。

 本展では、若冲、蕪村、応挙、芦雪、蕭白など約60件(展示替え有)を展示。ギャラリー1では、同じ年に生まれた若冲と蕪村を特集する。ただ、10件余りある若冲作品には、ほんとに若冲の真筆か?(工房や弟子の作品ではないか?)と疑いを感じるものもあった。少なくとも名品揃いとは言い難い。『群鶏図押絵貼屏風』は若冲らしい作品で、みんな食いついていたが、直前に見た承天閣美術館『群鶏蔬菜図押絵貼屏風』の記憶と比べると差を感じる。むしろ蕪村コレクションが良質で見応えがあった。『十二神仙図屏風』よかったな~。

 ギャラリー2、『竹に狗子図』は、みんな大好き応挙の子犬。

 でも私は、芦雪の子犬が好き。白いわんこのちょっと邪悪な表情もよいし、その足元で足ふきマットみたいになっている黒白のわんこが最高。『山水鳥獣人物押絵貼屏風』から。

 ギャラリー3では、NHK正月時代劇『ライジング若冲』でドラマ内の水墨画作品の制作と俳優陣への作画指導を担当した岡原大崋氏による、若冲、蕪村、応挙らの作品の模写と、運筆の解説パネル等を展示していた。若冲の墨画のニワトリの尾羽が、一気呵成に描いているように見えて、禅僧が文字を書くときのように、紙の裏側まで墨が滲むくらいのゆっくりした速さで描いている、などの解説が面白かった。

 第2会場の嵯峨嵐山文華館は、2018年開館だが、百人一首ミュージアム「時雨殿」の後継施設だという。入ったことはないが、時雨殿の名前には記憶があった。現在も百人一首に関する常設展をおこなっている。百人の歌人を小さな人形で表現した、いわば「立体歌仙絵」が面白かった。写真は「月みればちぢにものこそ悲しけれ」の大江千里。表情までよく作り込まれている。

 企画展関連の作品は60件余り。ただし展示替えが多いので、見ることができたのは30件程度。2階の広い畳敷きギャラリーは気持ちよかった。ここで本日3件目の若冲『群鶏図押絵貼屏風』を見る。これも福田美術館の所蔵で、福田美術館で展示中のものと同じ寛政9年作らしい(リストによる)。

 若冲の弟・百歳の『南瓜雄鶏図』ほか、若冲派(?)の作品には「宝蔵寺所蔵」の注記がついていた。調べたら、若冲の両親や弟の墓があるお寺で、特別拝観のときに一度行ったことがある。ホームページを見たら、現在は「若冲ゆかりの寺」で大々的に売り出しているようだ。

 このあと、少し嵐山を歩こうと思っていたが、思いのほか混雑していたので切り上げ、もう1ヶ所寄りたいところのある市中に戻った。寺社と旧跡めぐりはまた次回。


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